スマートフォンで動画を楽しむのが当たり前となった今、9月に入り世界最大級の定額動画配信サービス「NETFLIX(ネットフリックス)」など、動画配信事業が続々と新たに参戦。
9月に日本でサービスを開始する映像配信は、ネットフリックスだけではない。Amazonは会員向けサービスの「Amazonプライム」に9月下旬から定額動画配信サービスの『Amazonプライム・ビデオ』を加える予定だ。
「Amazonには元々プライム会員向けのサービスがありました。年間3900円を払うと“お急ぎ便”や“お届け日時指定便”が使い放題になったり、セールに30分早く参加できる会員限定先行の“タイムセール”などです。
この会員サービスに話題の映画や人気番組、オリジナルコンテンツなどが見放題になるサービスが追加されます。ただ、ネットフリックスに比べると、少しオリジナルコンテンツが弱い気はします」(ITに詳しいジャーナリストの西田宗千佳[むねちか]氏)
でも、なぜ同じ時期にふたつの大きな会社が日本で動画配信サービスを開始するようになったのか。
「『hulu』や『dTV』など、日本ではすでに2011年頃から定額制の動画サービスを行なっている会社がありました。動画配信サービスの成功のポイントのひとつは人気映画や話題のドラマなどのコンテンツをどれだけ多く提供できるかです。そのため日本の動画配信サービス会社は、コンテンツホルダーらと地道に交渉を進め、少しずつ良い作品をそろえてきました。
すると、13年頃から動画配信サービスの利用者が増え、現在huluの加入者は約100万人、dTVは約450万人となり、ビジネスとして成立するようになったんです。
もうひとつの理由は、無料の地上波TVの視聴率が落ちていることです。そのためTV局や制作会社は減った分の収入を有料動画サービスを使って儲(もう)けようと考える。動画配信サービスに作品を提供したり、共同でコンテンツを制作しようとするんです」(前出・西田氏)
制作再度からは歓迎の声
実際、日本テレビはhuluとコンテンツを作り、フジテレビはネットフリックスと共同でオリジナルコンテンツを制作することになった。元フジテレビ解説委員で現在、ウェブメディア『Japan In-depth』編集長の安倍宏行(あべひろゆき)氏が語る。
「実は、制作サイドはこうした動きを歓迎する声があります。日本テレビがhuluと共同で『THE LAST COP/ラストコップ』を作った時に制作者は『放送倫理コードもないし、CMでストーリーがぶつ切りにもならない。TVで作るのと違って、自由度が高いドラマを作れるのはメリットだ』と言っていました。
ネットのドラマにはそうした魅力がある。だから、この流れはこれからも加速していくでしょうし、フジテレビや日本テレビ以外の局もやってみたいと思っているはずです。僕は15年はTV局の“ネット戦略元年”だと思っているんです。これまでのようにTV局だけがオリジナルコンテンツを作るという時代ではなくなるでしょう」
【国内の主な定額動画配信サービス】 ●NETFLIX(ネットフリックス) 2015年9月サービス開始。月額650円から(税別) 世界最大級の動画配信サービス。フジテレビと提携し、ドラマなどオリジナルコンテンツを充実させる
●Amazonプライム・ビデオ(アマゾンプライム・ビデオ) 2015年9月下旬サービス開始予定。年会費3900円(税込) 動画見放題だけでなく、会員にはアマゾンで購入した商品のお急ぎ便や日時指定便などが使い放題
●hulu(フールー) 2011年サービス開始。月額933円(税抜) 日本テレビの子会社。1万3000本以上の映画、ドラマ、アニメなどが見放題。国内のTV番組が充実
●dTV(ディーティービー) 2011年サービス開始。2015年4月に「dビデオ」から「dTV」に名称変更。月額500(税抜) 映画やドラマ、アニメ、音楽など約12万本の動画が楽しめる。月額500円という安さが魅力
●TSUTAYA TV(ツタヤティービー) 2008年サービス開始。2015年8月にリニューアル。月額933円(税抜) 新作が毎月2本まで視聴できる定額配信見放題プランを提供
(取材・文/村上隆保 撮影/村上庄吾)
●『週刊プレイボーイ』38号「黒船上陸!動画配信サービスはテレビを滅ぼす!?」より