先進個人装備システムACIESIIIに身を包んだ姿 先進個人装備システムACIESIIIに身を包んだ姿

安保法制の成立により国際的な任務も増える自衛隊の兵器は今後、「軽量化」「機動力アップ」「ネットワーク化」が重要なキーワードとなる。

今回、その方針にマッチした7つの新兵器を紹介!

■兵器のハイテク化に隊員たちも追いつけ!

現代の戦争は、時間との戦いでもある。火力を満載した鈍重な兵器よりも、紛争初期段階で現場にいち早く駆けつけられる機動力を持ったコンパクトな兵器のほうが、その後の主導権を握る上で必要とされる――つまり、極端にいえば「巧遅よりも拙速」なのだ。そこで足りない火力、兵力差を補うのが戦場ネットワークなのである。

ここで紹介する7つのハイテク兵器は、いずれもそうした“戦争の新トレンド”を反映している。ただ問題は、これらを生かすには隊員たちにもかなり高いスキル、経験が要求されるということだ。

自衛隊は1990年代から海外での平和維持活動に参加し、対テロ・ゲリラ戦を想定したスキルを蓄積してきた。しかし、中国の拡大戦略に対応する水陸両用作戦や、最新のステルス兵器に対するカウンタースキルなどの習得はまだまだこれからだという。

「例えば、3年後に編成される予定の水陸機動団にしても、装備をそろえたり、成功事例の訓練をするだけでは足りません。ミスや不測の事態が発生した場合の救出作戦、さらにそれが失敗した時のバックアップなど、現場での戦闘技術だけでなく、作戦立案をする上で必要な考え方を習得することこそが今後の最大の課題でしょう」(フォトジャーナリスト・柿谷哲也氏)

情報処理&全周防御で市街戦にも活躍! #1 10式戦車 2011年に配備が始まり、今年度までに76両が北海道、九州に配備された「第3.5世代」の新型戦車。従来の90式戦車と同等以上の火力・装甲を備えながら、重量を40t台に抑えてコンパクト化し、全国への展開が可能となった。砲塔と車体側面にも装甲を追加した“全周防御型”なら市街戦にも十分に対応可能。そして最大の特徴は、戦場ネットワークにリンクする通信機能で陸自各部隊のみならず海・空とも連携できる

ネットワーク搭載の空中給油機 #2 ボーイングKC-46A B-767旅客機をベースにした空中給油機。一見すると自衛隊がすでに運用しているKC-767と変わらないが、自機のセンサーによる情報と、データリンクで送られてくる情報を統合して表示する機能を有する。空中給油機の損耗は戦況を一変させてしまうため、地味ながら非常に重要な能力といえる。防衛省は4機の導入を予定している

どこへでも駆けつける心強い援軍! #3 機動戦闘車 2016年より配備される予定の新型装甲車。アクティブサスペンションで車体の揺れを抑え、装輪式でありながら戦車に迫る射撃精度と走破性を実現している。普通科(歩兵)部隊への火力支援を主な任務とし、戦車と正面からぶつかるような戦闘は想定していないが、上陸してくる水陸両用戦車程度なら十分に対抗できるとみられる。今後、本州の各地には戦車に代わってこの機動戦闘車が配備される予定だ

“ジャパニーズ・ニンジャUFO”って!?

 新型護衛艦DE-Xの完成イメージ 新型護衛艦DE-Xの完成イメージ

米海兵隊も興味津々! #4 新型水陸両用車 現在、三菱重工業が開発している水陸両用車。陸自が昨年導入したAAV7水陸両用装甲車は、あくまでもこれが完成するまでの“つなぎ”とされ、正式配備が待たれている。小型・大出力のエンジンで、水上航行速度は時速37キロから46キロとかなりのスピード(ちなみにAAV7は時速13キロ程度)。AAV7の後継車の開発に失敗した米海兵隊も興味を示しているという

スマート&スピード!なステルス多目的艦 #5 DE-X(多機能護衛艦) 2021年に就役し、22隻が建造される予定。据えつけの武装を127mm砲1門に絞って軽量化を目指し、排水量3000tと、護衛艦としては小型の部類に入る。特徴は高速漁船にも対抗できる40ノット(時速74キロ)の航行性能で、後部甲板に搭載する装備を変えることで幅広い任務に対応できる。遠隔地での低強度紛争に活躍しそうだ

 まるでUFOのような防衛省球型飛行体 まるでUFOのような防衛省球型飛行体

ついにUFOを戦場投入!? #6 防衛省球型飛行体 2010年に防衛省技術研究本部が発表した世界初の軍事用小型球形飛行体。球形ゆえ障害物や風に強く、飛行や離着陸、ホバリング、地上を転がっての移動、壁への張りつき…など、その能力はまさに“ジャパニーズ・ニンジャUFO”だ。カメラを搭載し、無人監視・偵察機として使われる予定で実戦投入が待たれる

全隊員の情報をリンクで共有せよ! #7 ACIESIII 2011年に25セットが納入され、運用実証試験が行なわれている先進個人装備システム。ライフルにつけたセンサーと位置標定(GPS)機能付きの暗視双眼鏡から、仲間や作戦本部へデータを送り、ヘルメットに装備されたディスプレイで情報を受信する。10時間近い連続稼働が可能。近未来のネットワーク戦には欠かせない装備になるかも?

週刊プレイボーイ』46号では、危険度を増す世界の軍事情勢にこうしたネットワーク化で対抗する“ハイテク自衛隊”の実状を、さらにシミュレーション化し総力検証! ぜひお読みいただきたい。

(取材・文/世良光弘&本誌軍事班 写真/陸上自衛隊第2師団 陸上自衛隊中央即応連隊 海上自衛隊 航空自衛隊 防衛装備庁 米海軍 ボーイング ロッキード・マーチン 三菱重工 道明寺章 Ken Fielding SIERRA OFFICE)

■週刊プレイボーイ46号(11月2日発売)「進化する『ハイテク自衛隊』【VS中国】超リアルシミュレーション」より