全長14.2m、全幅9.1m、全高4.5m、重量約9.7t。航空自衛隊の主力機F-15の全長19.43mと比べると小型の機体だ

名作と名高い戦闘機「零戦」が開発された名古屋にある三菱重工業で、再び日本の英知が結集した戦闘機が姿を現した。

1月28日、初の国産ステルス戦闘機X-2」(通称「心神」)の実証機が小牧南工場でついに公開されたのだ。

現在、ステルス戦闘機を保有しているのはアメリカだけだが、ロシアと中国が開発を進めるなど時代の潮流はステルスに移ろうとしている。そんな中で、日本もようやく実証機公開にたどりついたといえるだろうか。

でも、なぜ日本は国産機を開発したのか? そもそも、戦闘機の開発には30兆円近くかかるとされる。日本が他国と共同開発するにしても、高度な技術を持っていなければ情報公開されず、相手国の言いなりになり、思うように運用ができなくなる。

現に日本は、アメリカからステルス戦闘機を輸入すべく働きかけてきたが、F-22戦闘機は機体の機密情報漏洩(ろうえい)のリスクから導入は叶(かな)わず。2011年に採用が決まったF-35戦闘機も開発の遅れから、いまだ配備のメドが立っていない。

そんな中、ロシアではステルス戦闘機の実戦配備が目前となり、中国も試験飛行を成功させた。世界に後れを取らないためにも、日本も実際に開発することが急務だったのだ。

当日の工場は厳戒態勢。報道陣には「撮影は指定されたエリアから20分のみ」「スマホやタブレットでの撮影は厳禁」「工場の作業員には質問禁止」と告げられるなどピリピリしたムードの中、ハンガー(格納庫)内のX-2を目の当たりにした時、記者の興奮はピークに達した。

今回、初公開されたステルス形状

エンジンの排気ダクト。ギザギザの形状になっているのは、レーダー波を真っすぐ反射させないためのステルス形状だ。今回、初公開された中でも機密性の高い部分になる

カモノハシの身体に似た機体前部。膨らみが大きいキャノピー部分。美しい流線型の機体には真っ直ぐ斜めに伸びた垂直尾翼とコンピュータ制御で動く大振りな尾翼。ライトアップされた機体に神々しささえ覚えたのだった。

全長14.2m、全幅9.1m、全高 4.5m、重量約9.7t。通常、ステルス機はレーダー波がコックピット内に入って乱反射しないよう、キャノピーに色のついたコーティング剤を塗りつけているが、X-2はコーティング剤で透明な視界を実現。インジウムと錫の化合物を蒸着させたものだと思われる。

コックピット後方にあるエンジンの排気ダクトはギザギザの形状で、レーダーを真っ直ぐ反射させないためのステルス形状となっている。以前、三菱重工が開発段階でリリースした写真ではこの部分にボカシが入っていたが今回、初公開された。

またジェットエンジンのノズルには、エンジンの推力の方向を曲げる3次元の「推力偏向パドル」を採用。他にこのパドルをつけているのは、アメリカ空軍のF-22ラプターのみだ(ロシアの新型機はノズル自体を動かす推力偏向ノズルを採用)。

実際の飛行は今月中旬以降を予定。今後、防衛省は2018年度末までに次期戦闘機を国内生産するかどうかを判断するという。興味深く見守っていきたい。

●発売中の週刊プレイボーイ8号では、さらに特集で中国のステルス「殲(じぇん)31」と性能を比較検証、他の写真とともにそちらもご覧いただきたい。

(取材・文/世良光弘 撮影/村上庄吾)