「決してSNSユーザー批判ではなく、むしろ自分自身もよくやってしまっていたことばかりなんです。その意味では自虐ネタに近いです」と語るかっぴー氏

SNS全盛の昨今、フェイスブックやツイッターは今や欠かせないツールとなっている。しかし、なかには妙にひとりよがりな投稿が目につくこともある。そんなSNS上の“あるある”を、コミック形式で鋭く指摘したのが『SNSポリスのSNS入門』である。

昨年ウェブ上で公開されるやいなやセンセーションを巻き起こし、待望の書籍化を実現した著者・かっぴー氏に、今この時代だからこそのSNSの正しい使い方を聞いてみよう。

* * *

―かっぴーさんは最近まで会社員をされていたそうですね。

かっぴー そうなんです。何しろマンガを描くようになって、まだ1年ほどしかたっていないんですよ。もともとは美大を出た後、広告代理店のクリエイティブ職に就き、その後、ウェブ制作の会社に転職して、独立したのが今年の2月です。本当に急展開でした。

―マンガを描くようになったきっかけは?

かっぴー 前職では毎日メールで日報を提出しなければならなかったのですが、そこで自分のキャラづけをするような企画を添える習慣があって。ほかの人が趣味のことなどをコラムっぽく書いているのを見て、「じゃあ、自分はマンガを載せてみよう」と思い立って描いたのが、今回の本の冒頭に収録されている『フェイスブックポリス』でした。広告代理店時代によく絵コンテを描いていたので、そのノリで描き殴った感じですね。

―SNS上の“あるある”を取り締まる「SNSポリス」というアイデアはどこから?

かっぴー ウェブ制作会社の同僚たちが喜びそうなネタはなんだろうと考えたときに、自然に思いついたネタでした。コピー用紙に「消せるボールペン」で描き始め、確か第1話の16ページは2時間ほどで描き上げたように記憶しています。これが思いのほか社内で好評で、更新するたびに感想メールを送ってくれる人や、「この作品は世に出したほうがいいよ」とアドバイスしてくれる先輩もいました。

―昨年9月、この作品がネット上で公開されると、大きな話題を集めました。

かっぴー 身近な友人たちが読んでくれればいいなと、公開してツイッターやフェイスブックで宣伝したのがその日の午前中だったんです。すると、早くも昼過ぎには某メディアから「この作品を取り上げさせてほしい」と取材依頼が舞い込みました。さらに、堀江貴文さんや江川達也さん、はあちゅうさんといった、多くのフォロワーを持つ方々にシェアされ、爆発的に広まったんです。驚きました。

―それがこうしてマンガ家として独立するきっかけとなるわけですから、ちょっとしたシンデレラストーリーですね。

かっぴー 確かに翌日、社内で「めちゃくちゃバズってたな!」と知れ渡っていて、鼻の高い思いをしたものです。おかげで、個人的にマンガの依頼をいただく機会が増え、そのうち休日だけでは手が回らなくなり、マンガに本腰を入れてみようと、退社を決意しました。どちらかというと、これは僕の手柄ではなく、ネットのスピード感であり力ですよね。

笑われるSNSユーザーにならないためには?

―それにしても、作品内でSNSポリスが鋭く指摘する“あるある”は、誰しもついやりがちなものばかり。一読し、ギクリとしている読者も多いのではないでしょうか。

かっぴー ここで指摘しているのは決してSNSユーザー批判ではなく、むしろ自分自身もよくやってしまっていたことばかりなんです。その意味では自虐ネタに近いですね。もともと、自分が周りからどう見られているかをすごく気にして考えてしまう性格なので、それをそのままネタにしたら共感してもらえた、と。例えば、このマンガでも描きましたが、実際に僕もフランス料理のテリーヌの写真をフェイスブックでアップしたりしていましたからね(笑)。

―では、知らないうちに周囲に笑われているようなSNSユーザーにならないためには、どんな点に気をつければいいでしょうか。

かっぴー まず、SNSにあまり期待しすぎないことでしょう。声を大にして言いたいのは、SNSの使い方によってプライベートで称賛されることは、まずありませんから(笑)。

個人的には、SNSでなんらか“ミス”っている人の大半は、どこか無理してSNSをやっているように見えます。でも、SNSって本来そういうものじゃないですよね。

例えば30代の僕が、頑張って10代のコのまねをして文章を書いたら、すごく寒い投稿になってしまいます。だったら、自分なりの使い方をしたほうがいいし、それで「おっさんくさい」と言われたとしても、実際におっさんなのですから何も問題はないはず。変に若者に媚(こ)びてみたり、わかったふりをしてみたりすることのほうがよほど恥ずかしいですよ。

―SNSでは、時に思いがけない批判、非難にさらされることもあります。

かっぴー 例えばツイッターというのは、SNSのなかでも「路上ライブ」のようなものですから、いろんな人の目に触れ、いろんなことを言われるのが当たり前。僕もよく、「絵がへた」「字が汚い」などと言われますが、なかには参考になる意見があるのもある。リアルの生活も大切にしながら、疲れない程度に付き合い、改善できるところは改善するのがいいでしょう。

―今後の活動について教えてください。

かっぴー 画力をもっと上達させる……といったことは、自分に対してあまり期待していないんです。本当は脚本や原作のほうに関心があって、できたらいいなと思っています。

●かっぴー1985年生まれ、神奈川県出身。マンガ家。株式会社なつやすみ代表取締役社長。武蔵野美術大学卒業後、東急エージェンシーのクリエイティブ職に就く。その後、面白法人カヤック勤務を経て、2015年からマンガの執筆を開始。大反響を呼んだ『フェイスブックポリス』を皮切りに、『おしゃ家ソムリエおしゃ子!』『左ききのエレン』など話題作を次々に発表

■『SNSポリスのSNS入門』(ダイヤモンド社 1200円+税)昨年、公開されるやいなや、堀江貴文や佐々木俊尚らSNSで多くのフォロワーを持つ著名人が絶賛した『フェイスブックポリス』が、待望の書籍化。誰しもついやってしまいがちな、実は周囲から笑われているSNSの使い方を、「SNSポリス」が鋭く指摘し、取り締まる。今この時代だからこそ生まれた話題のSNS入門書

(インタビュー・文/友清 哲 撮影/樋口 涼)