アップルが新機能「Apple Pay」が日本でもスタートしたが評判は微妙…。
『週刊プレイボーイ』の対談コラム「帰ってきた! なんかヘンだよね」の中で、“ホリエモン”こと堀江貴文氏と元「2ちゃんねる」管理人のひろゆき氏は、アップルのCEOがティム・クックである限り進化ができないという。果たして、その理由とは?
* * *
ひろ イノベーションを起こし続けてきたアップルですけど、ここ最近は陰りが見えてきた感は否めないですよね。
ホリ 10月25日から「Apple Pay」が日本でもスタートしたけど、このサービスも評判は微妙だし。
ひろ 僕はティム・クックがCEOである限り、アップルは進化できない気がします。
ホリ うん。彼はジョブズみたいにゴリゴリ行くタイプではないからね。
ひろ ティム・クックって、もともと製品の素材集めが仕事だったんですよ。簡単に言うと、安くなった部品を多く買いつけて、経費を減らす。でも、新しい機能を製品に実装するには、安くない部品が必要になるわけで。つまり、ユーザーがアップルに求めていることと、CEOの得意分野が正反対ということです。
ホリ ちなみに「iPhoneは成長が止まった」なんていわれてるけど、売り上げはめちゃめちゃあるんだよ。今年の夏には累計販売台数が10億台を突破したし、2016年の第4四半期には4551万台も売ってる。
ひろ だからこそ、新しい機能を搭載できない理由もわからなくはないんですよ。新型iPhoneを出すとなると、世界中の人に部品が行き渡る量を確保しなきゃいけないわけですよね。例えば、画質がべらぼうに良いカメラの部品を作っているメーカーがあっても、毎月1万個生産するのが限界だったら、アップルが「今月100万個ほしい!」と言ってきても対応できないわけですから。
ホリ アップルのためだけに、製造ラインを100倍にするとかは難しいからね。
アップルがiPhoneを起点に業績を上げることは難しい
ひろ ですです。となると100万個の在庫を確保するには、単純計算で100ヵ月(8年以上)かかることになる。その頃には最新の製品も陳腐なものになってる可能性が高いんですよ。iPhoneが今ほど売れてない頃だったら、新しい部品を入れて実験をするみたいなことが可能でしたけど、今は売れすぎたせいでそれができない。
ホリ 皮肉なもんだけど、アップルはそういったジレンマを抱えているよね。
ひろ なのでアップル的には、メッチャ尖(とが)った機能が入ってるけど超高級で少数生産のモデルを作るのがひとつの手段。ファッションショーでいう「オートクチュール」と「プレタポルテ」ですね。オートクチュールは、「これ、誰が着るんだ?」みたいな過激なデザインの服を金持ちが喜んで買ってますよね。んで、プレタポルテは一般向けのデザイン。
ホリ 確かにそういうのはありかも。でも、スマホって機能的に一周しちゃった感はあるんだよね。搭載できる機能もそんなに残ってないだろうし。だから、アップルがiPhoneを起点にしてこれから大きく業績を上げることは難しいと思う。
ひろ まあ、世界的には安いアンドロイド端末の需要が高いですからね。iPhoneって10万円近くしますけど、こんな高い端末が売れまくってる日本が特殊なんですよ。
ホリ おサイフケータイにしたのも、日本市場を重視しているからって意見もあるし。
ひろ iPhone以外だと、MacBookをもっと高級路線にするとかもありですかね。新型Macは「高すぎ!」って文句を言う人は多いですけど、文句を言うのは欲しいと思ってるから。例えば、4Kテレビとかかなり高額ですけど、欲しい人が少ないから文句も言われない。
ホリ いや、それだったらパーソナルモビリティ(ひとり乗り用の移動デバイス)のほうがいいと思うな。将来的には、スマホみたいにひとり1台持つこともありえるし、アップルのポテンシャルがあればチャンスがあると思うよ。
ひろ でも、アップルは自動運転車プロジェクトのメンバーを解雇してますよね。
ホリ そうなん? もったいない。アップルが今後成長するには、新しいデバイスを作ることが必要だと思うのに……。
社長が変われば会社が変わる
ひろ あとは、常識にとらわれない経営者が突拍子もない判断をすること。そうすれば、この状況を打破できると思います。
ホリ それこそ、前の社長だったジョブズみたいな経営者ね。
ひろ 日本でいえば、ソフトバンクの孫正義(そん・まさよし)社長とかですね。孫さんって、失敗すれば会社が傾くほどの金額を投資に使っちゃうじゃないですか。
ホリ 自社の時価総額を優に超えるボーダフォン・ジャパンを2兆円で買収したし、最近だとスマホのチップなんかを製造しているイギリスの「ARM」という会社を3兆円で買収したね。
ひろ ジョブズや孫さんみたいな、「方向性は理解できるけど、一般的な判断基準としては間違ってる」という経営者ならアップルも突き抜けることができると思います。
ホリ 「社長が変われば会社が変わる」ってのは本当だからね。
ひろ 一般的に、大型の新規事業って、狂気と権力がないとなかなかできないんですよね。絶対に成功するプロジェクトなら、すでに他社がやっているので、他人が理解できないものじゃないと大儲けはできない。でもそれって、自社の役員からもおかしな判断に見えちゃうので、取締役会で賛成多数になりづらい。結果的に取締役会を通るのは、ベタでつまらないものばかりになりがち。なので、絶対的な権力がないと化けるようなプロジェクトは進められないことが多いんです。
ホリ 昔のアップルはそれができていたよね。ノスタルジーに浸るつもりはないけど、今のアップルは、どこにでもあるようなつまんない大企業になってしまったのかもしれない。そう考えると、アップルはイノベーションな製品を作るよりも、自社をイノベーションするほうが先決かもね。
■この連載が単行本になりました! これまでのトークのなかから厳選された50のテーマを収録。 『ホリエモン×ひろゆき やっぱりヘンだよね~常識を疑えば未来が開ける~』好評発売中! 集英社/1200円+税
●堀江貴文(ほりえ・たかふみ) 1972年10月29日生まれ、福岡県出身。旧ライブドア社長。SNS株式会社オーナー兼従業員。『本音で生きる』(SB新書)が好評発売中
●西村博之(にしむら・ひろゆき) 1976年11月16日生まれ、神奈川県出身。元『2ちゃんねる』管理人。近著は『ソーシャルメディア絶対安全マニュアル』(インプレスジャパン)
(構成/杉原光徳 加藤純平 イラスト/西アズナブル)