頼む、死なないでくれ! 心配性のユーザーからはそんな声も聞こえてくるーー。
日本での好調をよそに、ツイッターが世界的に苦戦している。なぜウケなくなったのか!? そして、深刻な業績不振が今後、日本でのサービスにもなんらかの影響を及ぼす可能性はあるのか!?
■ツイッターが海外でウケなくなった理由
月間アクティブユーザーが4千万人を突破! 9ヵ月間で500万人増!! 米ツイッター社の日本法人がそう発表したのは11月2日のこと。サービス開始から10年が経過するが、日本での人気はいまだ衰え知らずということがわかるデータだ。
だが、絶好調の日本市場とは対照的に、ツイッターは世界で大苦戦している。WEBサイト『ネットメディア攻略研究所』を運営する落合正和氏が語る。
「ツイッターには現在、世界で約3億2千万人のアクティブユーザーがいます。しかし、SNSのユーザー数1位のフェイスブックは約17億人、さらにフェイスブック傘下のインスタグラムでも約5億人と、大きく水をあけられてしまいました。また、10代に人気の動画共有型SNS『スナップチャット』にも、1日のユーザー数で抜かれることがあるそうです」
そうした最近の業績不振により、今年9月末には身売り騒動も勃発。結果としては買収先が見つからないまま収束したが、10月末には6秒動画『Vine』のモバイルアプリ提供終了と従業員の1割リストラを発表している。一体なぜ、ツイッターは身売りを考えるほどの危機的状況に追い込まれているのか? その理由を順に説明しよう。
●英語で140字は意外と足りない!
「ツイッターの基本ルールである140字の文字数制限がネックになっている」と語るのは、ITジャーナリストの三上洋(よう)氏だ。
「英語と日本語を比較すると、140字に盛り込める情報量が、一説によると倍ほども違うそうです。ツイッターと親和性の高い日本語では情緒なども含めて詳しく書き込めるのに、英語ではできない。海外ではコミュニケーションツールとして物足りないという認識をされてしまったのです」
まだまだある他の理由…
●時代遅れ感
インスタグラム(画像)やスナップチャット(動画)といったリッチメディアを使ったSNSが出てきたとき、ツイッターも似たようなサービスや機能をすぐに提供すればよかったのに、対応が後手に回ったことも影響した。前出の落合氏が指摘する。
「結局、ツイッターにある機能はほかのSNSの大半で利用可能ですからね。これではユーザーが離れるのも仕方ない。ツイッターを利用していたセレブなどのインフルエンサーもどんどん後発のSNSに乗り換えています」
また、こうした背景もある。
「海外では新たな人気SNSが登場すると、すぐにユーザーが移動するんです。日本のようにLINE、ツイッター、フェイスブックなどを、ひとりのユーザーが目的によってそれぞれ使い分けるというのは、世界的に見ても珍しいですね」(三上氏)
●ヘイトコンテンツが多い
「ツイッターは、海外ではその匿名性から悪口やネットいじめといったヘイトコンテンツが多いと見られるようになり、今や日本での『2ちゃんねる』的な扱い。イメージが悪いんです」
前出の落合氏はそう話す。
「身売りを検討していたときに名前が挙がっていたディズニーが買収を断念したのもそれが大きな理由だと言われています。もちろん、ツイッター社も対策をしていますが、対応しきれていないのが実情です」(落合氏)
●広告が入らない
ツイッターは収益の約9割を広告収入に頼っているのだが、これまで紹介した理由以外にも、「広告が入らない」理由がある。
「ツイッターの広告はタイムライン上に広告ツイートを表示させるのがメインで、登録された個人情報などを使ってターゲティング広告を行なっているフェイスブックとは、広告効果で大きな差があるのが現状。そのため多くの広告を獲得できていません。フェイスブックが増収増益を四半期ごとに繰り返すなか、ツイッターが赤字なのはこの差があるのが大きい」(落合氏)
画期的なサービスがなければ、先行きは暗い
■巻き返しのカギは“日本化”にアリ!?
気になるのは、こうした状況が続くことで今後、日本でのサービスにもなんらかの影響が出ないかということ。ひょっとして、突然のサービス終了…なんて事態も!?
「確かに赤字続きですが、フェイスブック、インスタグラムに続き、ユーザー数が世界3位。そう簡単にサービス終了ということはないはず。立て直し策も考えているはずです」(落合氏)
ツイッター大好きな日本のユーザーにとってはひと安心だが、では、どんな巻き返しの策が考えられるのか。三上氏は「利益を増やす手段が現実的」と話す。
「まず考えられるのが広告の増加や仕様の変更。個人情報を収集し、ターゲティング広告を導入する可能性は大きいです。そのほか文字数制限の緩和や、ツイートの優先表示、データ分析機能などコアなユーザーが喜ぶ有料サービスの導入も考えられます。最近、注力しているライブ動画配信機能『ペリスコープ』も面白い存在です」(三上氏)
また、次のような動きも。
「ツイッター社はユーザー数が着実に増えている日本市場をヒントにすべく、日本法人にも開発拠点を新設しました。そして、例えば“テレビをツイッターで実況しながら見る”といった日本独自の新しい使われ方を世界に発信するような取り組みも行なっています」(落合氏)
ただし、それでも海外のユーザー数が増加するかは不透明。よほど画期的なサービスが登場しないかぎり、先行きは暗いという見方もある。果たして、ツイッターの未来はどうなる!?
(取材・文/牛嶋 健[A4studio] 写真/アフロ)