マツダは、次世代エンジンのスカイアクティブXを同じく次世代用の骨格に搭載。「魁コンセプト」として東モに出展。その技術とデザインを受け継いだ市販車が、再来年に次期アクセラとして発売されるのは間違いない

EVにはどこか興味なさげで、“エンジンバカ”を貫き通してきたマツダが今、世界をあっと驚かせている。実現不可能とまで言われた革新技術をモノにして、なんと再来年の実用化のメドまでつけていると胸を張るのだ!

究極のエンジン、スカイアクティブXとは何か?

* * *

今、マツダが世界を震撼させている。それは「夢の究極エンジン」とされるHCCIエンジンの実用化に世界で初めて成功して、再来年の2019年に発売する…と、ブチ上げたからだ。

世界のどのメーカーも実現していないHCCIにマツダがメドをつけた…とのウワサは以前からあった。ただ、その技術的困難さから、多くが半信半疑だったのも事実。

しかし、今年8月8日に発表した技術開発の長期ビジョン『サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030』で、HCCIの実用化を公表。その次世代エンジンを「スカイアクティブX」と命名し、試作車を世界中のメディアに試乗させている(筆者は10月上旬の技術説明試乗会で試乗)。

また現在、東京モーターショーで公開中の「魁(カイ)コンセプト」からもわかるように、再来年発売予定のスカイアクティブX第1号車は、どうやら次期アクセラになりそうだ。

さて、このスカイアクティブXは、一般的にHCCIと呼ばれる技術をモノにした次世代のエンジンであり、その点が世界初である。

HCCIとは「Homogeneous Charge Compression Ignition」の略で「予混合圧縮着火」と訳される。

現在の自動車のエンジンには大きく分けてガソリンとディーゼルがあるが、ピストンで吸い込んだ空気を圧縮→燃焼(というより爆発)させてパワーを得る…という点ではどちらも同じだ。

通常のガソリンエンジンは、空気と燃料をあらかじめ混合(=予混合)してから圧縮して、最後は点火プラグの火花で燃焼させる。この瞬間の空気はもとの体積より1/8から1/13くらいまで圧縮される(圧縮比という)。これ以上圧縮すると燃料が勝手に燃焼してしまうので、その手前で点火するのだ。つまり、ガソリンエンジンは「予混合」するが、火花着火なので「圧縮着火」ではない

対して、ディーゼルはまず空気だけを吸い込んで圧縮する。このとき約1/18に圧縮するが、そうしてより高く圧縮した空気に燃料を噴射するとプラグなしで自己着火(=圧縮着火)する。ディーゼルは「圧縮着火」するが、空気だけを吸い込むので「予混合」ではない

そしてディーゼルは空気に対して少ない燃料で爆発(希薄燃焼)させられるので燃費がいい。ただその分、空気中の窒素(N)がエンジン内で過剰になって、酸素(O)と結合してしまう。それがディーゼルで問題視される窒素酸やPMは出にくい。しかし、ディーゼルほど圧縮比を上げられず、ディーゼルほど熱効率が高くない(=燃費を改善しにくい)。また、点火プラグ式で希薄燃焼させても、やはりディーゼルと同じくNOxやPMが出る。

要するにHCCIは、ガソリンエンジンの特徴である「予混合」と、ディーゼルの「圧縮着火」の両方を組み合わせたイイトコ取りのエンジンというわけだ。

◆『週刊プレイボーイ』46号(10月30日発売)「マツダ『スカイアクティブX』は“夢のエンジン”か?」では、スカイアクティブXの全貌に迫っているので、そちらもお読みください!

(取材・文/佐野弘宗 撮影/村上庄吾)