2017年7月に一部改良したトヨタのミニバン3兄弟が売れに売れまくっている。3台の販売台数を合計すると、並みいるエコカーをブチ抜きトップに立ってしまうほど。な~ぜミニバンがこんなに売れているのか?
日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の小沢コージが開発責任者とクルマを徹底取材したぜぇ~!
■2017年7月の一部改良で3兄弟の人気爆発!
うすうす感じてはいたけど、衝撃の真実を聞いてしまったぜ! それは2017年7月にマイナーチェンジした国産車の裏番長ことトヨタのノア&ヴォクシー&エスクァイアのことだ!
実は最近の国産車新車販売台数のトップには当たり前のようにエコカーがズラリと並ぶ。具体的にはトヨタのプリウスやアクア、そして日産のノートe-POWERなどだ。ところがそれはまやかし。トヨタの新ミニバン3兄弟の販売台数を合計するとトップを軽く上回る。10月は1万6000台超を記録。ぶっちぎりのトップである。
ちなみにこのミニバン3兄弟は顔と名前が違うだけ。要は今、日本で一番売れているのは広くて便利な5ナンバーサイズの箱形ミニバンなのである。もちろん新3兄弟も魅力的なハイブリッドモデルを備えているが売れても4割程度。だとすると人気のキモは何か。3兄弟のチーフエンジニアを務める水澗(みずま)英紀氏を直撃した!
■ミニバンは性能よりも顔で選ばれている!?
―しっかし、今回のマイナーチェンジでまた見事に要所要所を変えてきましたねぇ。
水澗 はい。
―まず一番の欠点ともいえたノアの地味なマスクに手を入れたのがスゴい! エアロのメッキグリルがアイアンマンみたいじゃないですか。このインパクトは強烈ですよ。
水澗 ミニバンも顔の時代ですから(笑)
―えっ、ミニバンでもやっぱりカッコなんですか。
水澗 カッコは確実に響きます。実際、2014年に登場した現行3代目のヴォクシーは社内でも「やりすぎじゃない?」って声があったんです。
―やっぱし!
水澗 ところが発売したら結果的にですけど、断トツでヴォクシーが売れて、ノアが沈み、エスクァイアはそこそこって状況になりました。台数比でいうと5対3対2ぐらいでしょうか。
―かなり差が出ましたね!
水澗 はい。そこで今回のマイナーチェンジではノアをもう一度しっかり作り込もうと。それもノア本来の良さを消さずにやってやろうと考えて、標準デザインは品良くできたと思っています。
エアロモデルは?
―エアロモデルはどうです?
水澗 一方、エアロモデルは個性を残しつつも、よりアグレッシブに攻めたいと考えまして、ある程度はできたのかなと思っています。
―十分でしょ! 王道の雰囲気を残しながら、程よくギラギラしてると思います。
水澗 もはやミニバンも顔が8割ですから。これはもう間違いない話で、トヨタはもちろん他社も含めてミニバンは7から8割がエアロ仕様です。
―顔が8割! いったいユーザーはミニバンに何を求めてるんでしょうか。
水澗 ミニバンだからこそカッコいいのに乗りたいんですよ。実用的なだけのクルマに乗りたくないんです。
―どういうことですか。
水澗 今、全メーカーで進化が進み、どれも使いやすくなり、どのミニバンも不満が残らないレベルです。
―確かに。
水澗 ミニバンの購入動機の一番は広さですが、2番目に来るのは外観の良さ。全体の性能が底上げされた結果として、2番目の条件がよりクローズアップされているのかもしれません。
―性能が似通ってしまっているからこそ、デザインに走っている部分があると。
水澗 このジャンルはお母さんがクルマ選択のイニシアチブを握る部分があるので、その影響が出ているかもしれません。
―それにしても、クルマの性能よりも、顔のゴツさで売れるってスゴいことですよ。世界中で日本だけでしょ、こんな現象が起きているのは。
水澗 僕としては今の状況が続いてほしくないとは思っていて、クルマ全体のカタチの良さとかグラフィックをより使っていきたいと思っています。けれど、こればっかりはお客さまのご要望なので(笑)。
(取材・文/小沢コージ 撮影/本田雄士 取材協力/トヨタ自動車)