最近は輸入車のSUV、しかも欧州のDセグメントに属すモデルが続々と新型になって日本上陸を果たしている。今回はそんな中からBMWのX3を取り上げたい。X3は2004年に初代が発売され、日本では2011年から2代目へとフルモデルチェンジ。そして、2017年10月に3代目となる新型を発表。13年間で世界累計150万台を売った人気モデルだ。
そんなX3の新型にはBMWの最新プラットフォームが採用された。BMWはこれまで新世代モデルとして7シリーズ、5シリーズを送り出している。実はX3を含めたこの3つのモデルはプラットフォームを共用している。今後登場が予定されている新型3シリーズもこのプラットフォームを採用するはずだ。
それにしてもX3や3シリーズが、5シリーズや7シリーズとプラットフォームを共有するのは、BMWが上級化へシフトしている証拠だ。実際、この上級シフトを受けてかサイズもアップ。全長4720mm×全幅1890mm×全高1675mmと先代よりも全長が55mm、全幅が10mm広がり、先代から確実に大きくなったと感じられる。
デザインは、これまでのBMWテイストを引き継ぎつつも大きく変化はしていない。このあたりは7シリーズや5シリーズと同じ手法で、少しずつ変化していくデザインという感覚か。その意味では相変わらずのBMWテイストといえる。
一方、インテリアはさらに上級モデルに近い雰囲気を手に入れた。ただしエクステリアと同様で、インテリアもこれまでのBMWデザインを踏襲した上で少しずつ変化する仕上げのため、新しさという点では若干物足りなさが残る。
とはいえ、品質の高さと機能性の高さは、さすがBMW。さらに7シリーズから採用が始まったジェスチャーコントロールを与え、12.3インチのマルチディスプレイメーターパネルはタッチ操作も可能に。またセンターコンソールにはスマホを置くだけで充電できる機能も!
気になるX3のラインナップは、xDrive20dとxDrive20iという、ディーゼルとガソリンの2リットル搭載モデルが用意された。それぞれにスタンダード/xライン/Mスポーツという3グレードがあり、選べる。今回試乗したX3はxDrive20dのMスポーツだ。
まず走りだして印象的だったのはエンジン。トルクフルで扱いやすい上に、低回転から力強いという点において、やはりX3のディーゼルは魅力的。BMWのディーゼルは、ディーゼルなのにフィーリングに優れているのが特徴で、回転の滑らかさに加え、吹け上がりの気持ち良さまで味わえる。
このあたりはまさに“エンジン屋”ならではのお家芸。また8速ATとの組み合わせも熟成され、実に気持ちいい味わいとなっている。静粛性も高く、アクセルもほんのわずかに踏む程度で事足りる。
スポーティさと乗り心地を見事にバランスさせた仕立て
【SPEC】
一方、ワインディングでは、ほんの少しだけ踏み込むことで力強い加速を存分に味わえ、ディーゼルらしからぬ気持ち良さを存分に感じられる。X3は走らせた瞬間から、BMWらしいスポーティさを、こうしたSUVでもしっかり実現しているのだ。
特に今回試乗したグレードはMスポーツだったため、足回りは引き締められた仕様。しかし硬すぎるということは決してなく、あくまでもスポーティさと乗り心地を見事にバランスさせた仕立てとなっている。
もっともX3の場合は新しいアーキテクチャを手に入れたことで、7シリーズや5シリーズがそうであるように、BMWとしては以前よりもソフトな乗り味を示す部分も感じられるようになっている。ソリッドな感じから滑らかな印象が強くなっている。
今回はBMWとして初めて横浜ゴムのタイヤを採用。このタイヤはランフラットタイプ(パンクしないタイヤ)ながら低転がり抵抗タイヤでグリップ性能も高いという、相反する性能を両立。それが乗り味にも反映されており、カーブを安心して駆け抜ける一方、滑らかな感覚も与えてくれる。
先進安全も抜かりなく、「前車接近警告機能」「衝突回避・被害軽減ブレーキ」「レーン・ディパーチャー・ウォーニング」など3つの機能を含んだ、「ドライビング・アシスト」を新たに標準装備した上で、ハンドル制御までアシストするステアリング&レーンコントロールアシストなどの機能を含んだ「ドライビング・アシスト・プラス」もオプション設定されている。
今回試乗したモデルの価格は710万円と安くはないが、納得できる走りと装備の進化だった。
●河口まなぶ 1970年生まれ、茨城県出身。日本大学藝術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌(モーターマガジン社)でのアルバイトを経て自動車ジャーナリスト。毎週金曜22時からYouTube LIVEにて司会を務める『LOVECARS!TV!』がオンエア中。02年から日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。