世界で4位、アジアではトップのシェアを誇る中国のスマホメーカー「オッポ」が日本に上陸し、その第1弾となる「R11s」が2月9日に発売された。
SIMフリー端末で、価格は約6万円(+税)。当初は、ヨドバシカメラとビックカメラのみでの取り扱いとなる。
海外ではかなりメジャーな存在であるらしいオッポ。いったいどんなメーカーなのか、携帯電話ライターの佐野正弘氏が解説してくれた。
「2008年参入と、中国のスマホメーカーでは新興の部類に入ります。iPhoneのようなハイエンド機ではなく、ミドルクラスのスマホを中心にラインナップしていて、iPhoneに比べると安価で、デザインとカメラ性能がいいということで人気を博しました。アジアでは、ちょっと背伸びして買う位置づけのブランドです。広告展開にも力を入れていて、中国や東南アジアでは街中でオッポの看板をかなり目にします」
そのオッポが満を持して日本市場に投入してきた端末が、R11sだというわけだ。ITジャーナリストの石川温(つつむ)氏が言う。
「同社のフラッグシップ機で、縦長の有機ELディスプレイなど最新の流行を取り入れ、カメラとバッテリーの充電機能に特徴があります」
では、まずカメラ関係の特筆すべき点とは?
「画素数の違うふたつのカメラを搭載し、明るさによって使用するカメラを切り替えるというユニークなシステムを採用していて、暗い場所でもキレイに撮影できるという触れ込みです。また、自撮り用のインカメラも2000万画素と高性能。中国メーカーはどこも自撮り機能に力を入れていますが、男性を撮るとなぜか目にマスカラが入ったようになったり、唇が赤くなったりという変な補正がかけられてしまう端末があったりするなか、R11sはAI技術を活用し、老若男女を問わず自然な感じに美肌補正してくれます」(佐野氏)
そしてもうひとつのウリだという、バッテリーの充電機能とは?
「オッポが独自開発した急速充電技術を駆使し、5分の充電で2時間通話できます。このスマホは自撮りがキレイで、バッテリーが切れても少しの間充電すればまたすぐ使えるということで、スマホを積極的に使うアジア圏の若い女性の間で人気になったんです」(佐野氏)
なるほど。で、実際に使用してみた印象はどうですか。
「うーん……。有機ELの割には、特に高精細なディスプレイではないし、他社にない方式のデュアルカメラが搭載されてはいますが、だからといって暗い場所でも驚くほど鮮明な写真が撮れるわけでもない、というのが正直なところです。今、スマホはカメラぐらいしか差別化できるところがないので、そこを強調しているに過ぎない感じですね」(石川氏)
年収3000万円で営業の人材を募集
「日本ではほかのアジアの国ほど美肌機能が重視されているわけではないし、日本の女性がその手の効果を求める場合、カメラ本体ではなく、アプリで補正する傾向が強いですからねえ……」(佐野氏)
と、なんかビミョーな感じ。
このR11s、果たして日本で売れるのだろうか。
「質感はいいし、インターフェースなどの操作感に若干のクセがあるものの、使い勝手も及第点。選んでも損はないスマホですが、この端末がターゲットにしているSNS好き、自撮り好きな日本の若いユーザー層、特に女性は、iPhoneにしか関心がない。そこが一番のネックですよね。
しかも海外だと、R11sはiPhoneより少し安いということが訴求材料になるのですが、日本ではキャリアの施策でiPhoneを安く買えてしまいますから。その意味で、R11sの約6万円という価格は、いかにも中途半端です」(佐野氏)
「SIMフリー機で、しかも購入できる場所が限られているなか、日本のユーザーが聞いたことのないブランドの、決して安くはないスマホをあえて選ぶかといったら、かなり厳しいのではないでしょうか」(石川氏)
■年収3千万円で営業の人材を募集
オッポも日本における販売チャンネルの少なさは自覚していて、SIMフリー機として売るだけではなく、キャリアでの取り扱いを目指していると、発表会見でも同社日本法人の社長が語っている。
「それについては面白い話があります。R11sを発表する前に、オッポの日本法人はネット上でキャリア営業職の募集をしていました。キャリア営業というのは、キャリアで端末を扱ってもらえるよう交渉する営業職のことで、求人で提示していた条件は年収3千万円。
それなりにお金を積んで優秀な人材を確保しようとしているのですが、オッポの求人の対象になりそうな業界関係者に何人かあたってみたところ、誰もが『今年3千万円もらえても、来年、再来年に会社が存続しているかどうかわからないから…』と口をそろえていました」(石川氏)
業界内では、オッポの将来性を不安視する向きも少なくないわけだ。日本市場への参入早々からずいぶん逆風が吹いているようだが、打開策はあるのか。
「何はさておき、機種を増やすことです。日本のマーケットでまだ実績がないので、キャリアでの採用は一朝一夕にはいかないでしょうが、格安スマホ事業者に扱ってもらえば、SIMとのセット販売が期待できます」(佐野氏)
しかし格安スマホでの売れ筋端末は、R11sの6万円前後とかではなく、販売価格が2万~3万円ぐらいのもの。
「その価格帯のコスパが優秀な下位モデルを一刻も早くいくつか導入して、まずは格安スマホ事業者との関係を築いていくことですね。オッポも長期的に日本市場を開拓する意向のようなので、地道にブランド力を上げていけば、ユーザーに受け入れられてくると思います」(佐野氏)
今回のR11sはあくまで参入第1弾として、オッポの特徴を前面に出した名刺代わりの端末のはず。だとすれば、第2弾、第3弾の、日本市場に攻勢をかける戦略モデルの登場を待つのが吉かも。
(写真/時事通信社)