怪しい動きをAIカメラが検知。万引犯の行動パターンに近づくにつれ枠の色が変化し、赤になると店員に通知される経済産業省の「商業統計」(2009年)によると、万引の被害総額は全国で年間約4500億円超。約10年前の統計だが、今も昔も小売店にとっては悩みの種だ。

だが、この犯罪をAI(人工知能)が劇的に減らすかもしれない。万引犯の不審な行動をAIが検知する防犯システム「AIガードマン」が、6月下旬より小売店に提供されるからだ。

このシステムはAIベンチャーの「アースアイズ」が開発。NTT東日本と提携して全国導入を狙う。

昨年、都内の家電量販店内にあるドラッグストアにて実証実験を行なったところ、万引による損失額が年間約350万円から4割減の約200万円にまで激減したという。確かに万引撃退効果は抜群のようだ。

では、どんな仕組みなのか? 「AIガードマン」が万引行動検知のデモンストレーションを行なっている東京・東銀座のショールームを訪れ、さっそく「万引犯体験」をやってみた。

ショールームに設置された食料品コーナーで、店員の位置を逐一確認。ひとりしかいないし、レジ対応で忙しいのか、こちらを見ていない。これならいけそうだ、と袋詰めのチョコをサッとポケットに入れようとしたところ...。

「何かお探しですか?」

突然、店員(役)の女性が声をかけてきた。ついさっきまでまったくこちらに顔を向けていなかった彼女が、犯行に及ぶドンピシャのタイミングで目の前に現れたのだから、デモンストレーションとはいえかなり驚いた。

「キョロキョロ、ウロウロ、座り込みが万引犯の基本的な行動パターンです」

そう話すのは、アースアイズ広報担当の澤登(さわのぼり)舞美氏だ。

「万引犯の行動パターンを記録しているAIを搭載したカメラが、目や耳の位置までわかる高い精度で、不審な行動を自動検知。その情報が店員のスマホに通知され、店員は"容疑者"に声をかけることで万引を防ぐ、という仕組みです」

モ ニター画面で検知の様子を確認してみると、まず本誌記者が入店した際に白色の枠がかかる。その後、不審な動きを見せると徐々に黄色に変化。さらに、AIが 「コイツは怪しい!」と判断すると赤色になり、店員のスマホにプッシュ通知が行った。ただ、実際には通知に店員が気づかないこともありそう。

「複数のスマホで音やバイブを同時発生させるなど、通知に確実に気づいてもらえる仕組みを作っています。また、スマホだけではなく、モニターからアラート音を出すことも検討中です」(澤登氏)

価格はAIカメラ1台23万8000円で、AIクラウドサービスの利用料は1台月額4000円(いずれも税別)とのこと。前述の実証実験で年間100万円単位の被害減が実現したことを考えると、費用対効果は相当高い。AIが"万引Gメン"になる時代がやって来たようだ。