『キン肉マン「完璧超人始祖編」を8bitで再現してみた!』を制作していただいた小林聖明さん(左)と田中將之さん

9月4日にコミックス64巻が発売される『キン肉マン』。それを記念して現在YouTubeで公開中なのが『キン肉マン「完璧超人始祖編」を8bitで再現してみた!』だ。8bitテイストな動画は、ベテランの肉マニアたちを大熱狂させた名作を彷彿(ほうふつ)させ、肉愛が強めとなっている。

これを制作したのは、イラストを担当した田中將之(まさゆき)氏(合同会社スクエアマンピクセルワークス)と、動画担当の小林聖明(まさあき)氏(有限会社サウンドビジョン)のおふたり。

この肉愛が溢れ過ぎる動画はどのように制作されたのだろうか? おふたりに聞いてみた。

――まず、工程をざっくり教えてください。

小林 僕が絵コンテを作って、登場するキャラ、その必殺技、やられているシーンなどのイメージを田中さんへ伝えます。それを田中さんが8bit風のイラストにしていくのです。

田中 ドット絵といっても昔のように四角を打ち込んで作るわけではありません。画像加工アプリ上に、ペンで描く感じになります。

――キャラの雰囲気だけでなく、色合いも当時っぽいですね。

田中 はい、当時使用されてカラーを調べて再現しました。できる限り当時と同じカラーを使用することで、より8bitっぽい仕上がりを目指しました。

小林 確か、当時って2色しか使ってなかったんじゃないですか?

田中 そうなんですよ。僕の場合はそれだと技術的に難しくて、4~5色使って色分けしました。当時は2色だけで、あのようにキャラを識別させてましたから、本当にすごい職人ワザだったと思いますよ。

タブレットPCでペンタブを使用して描かれるキン肉マン。下描きは行なわずに瞬速でキャラを仕上げていく

――制作するのが難しいキャラは?

田中 キン肉マンゼブラです。模様の再現が難しかったですね。黒と白だけたとのっぺりしてしますので、グレーを入れてメリハリをつけました。

小林 スプリングマンとか難しくないですか?

田中 大変でした! 基本的に色や模様が多いキャラの再現に悩むのですが、スプリングマンは体が捻(ねじ)れている。どうやっても、うまいスプリングにならないんですよ。原作を見ながら、濃淡のグレーを組み合わせてなんとか再現できました。

田中さんがモースト再現難しいコンビというゼブラ&スプリングマン

――逆に制作しやすいキャラはありましたか?

田中 圧倒的にキン肉マンです。色が少なく、キャラとしての造形もはっきりしている。これはドット絵としても描いやすいですよ。

世界的に人気のキャラってどれもドット絵にしやすく、そして子供にも描きやすい。キン肉マンも、その条件を満たしているんだなと、キャラを作って実感しましたね。

――こうやって完成したキャラを小林さんが動画にしていくと?

小林 はい。ジャンプしてロープに跳んだり、必殺技をかけて受ける。このような動作を動画に落とし込みました。

――どのような部分が難しいのでしょうか?

小林 影ですね。昔の感じだと動きが制限されるので、ジャンプシーンなどではキャラの下に影を入れることで動きの大きさを再現していました。そのテクニックを今回も使用しています。

キャラの下に影を入れることで、キャラがジャンプしてる状態の動きを認識しやすくしている

田中 僕、完成した動画を見て思ったのが、キャラや観客の動きどころか、文字まで当時みたいな感じになってますね。

小林 はい。ドット文字にしています。ただし、当時は漢字を使用してなかったんですが、さすがにそれだと読みづらいので漢字も混ぜてあります。このほうがスマホでも読みやすいんです。あと、サウンドも超人のイメージに合わせて作ってます。

キャラだけでなく、文字やサウンドまで肉ファンのこだわりが大凝縮された動画。ぜひ、再生→停止を繰り返しながら、そのこだわりをチェックしてください!

田中 これって、キン肉マン世代のおっさんならではのこだわりですよね。

小林 もうね、キン肉マン世代のおっさんにしか作れないですよ(笑)。それこそ僕と田中さんは同級生の43歳で、小学生時代は家に帰ると即キン肉マンという生活を送ってましたから。

田中 僕もキャラを描いていて、キン肉マン世代がニヤニヤしながら楽しんで欲しいというイメージで作ってましたね。

――ところで、この動画をそのままゲームにするってことも可能?

小林 できます。今回も本当は『ファミリーベーシック』というファミコンの周辺機器を使って制作したかったんです。これだと実際にゲームもできるし、雰囲気も当時そのものにできます。ただ、時間的にちょっと厳しかったですね。

――ゲームにするなら、どんな構想が?

小林 ティーパックマンやカナディアンマンが活躍するところをゲームにしたいですね。

田中 僕は剣道少年だったので、ネプチューンマンとビッグ・ザ・武道のヘル・ミッショネルズが活躍するゲームを遊びたい。いつでもキャラ描きます!

小林 バトルがないミニゲームなら、テリーマンが新幹線を止めて子犬を救うゲームを作りたい。

田中 それ、遊びたいなー。キン肉マンの牛丼早食いゲームとかどうですか?

小林 いいですねー! やっぱり、おっさんが集まると肉トークが止まらなくなりますね。これこそキン肉マンの楽しみなのかなって、今回の仕事で実感できました。

――そんな特濃のキン肉マン世代おじさんが制作した神肉動画をぜひ!

キン肉マン64巻特設ページ(http://wpb.cloudpublisher.jp/kinniku_comic_64/)

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運命の四王子が地球の運命を握る! 定価:本体440円+税 著者:ゆでたまご ©ゆでたまご/集英社

小林聖明こばやし・まさあき) 有限会社サウンドビジョン代表取締役。IT先端技術を使った、直感型デジタルイリュージョンの制作。360°VR、プロジェクションマッピング、人工知能アプリなど。15年に渡り、ファッション、芸能、アート系の企業広告として制作に携わる
https://soundvision-tokyo.com/

田中將之たなか・まさゆき) 合同会社スクエアマンピクセルワークス代表社員。ドット絵を使ったWEB制作に定評があり、槇原敬之『軒下のモンスター』のミュージックビデオはYouTubeで100万回を越える視聴数を記録
http://squareman.net/