「2年ごとに端末を買い替える人にとっては間違いなく損」(三上氏)だというドコモの新プラン。新モデルをいち早く買い求めようとする客は春以降、激減が予想される

「いつの間にかオプションをつけられてた......」

そんなキャリア契約時の悔しい"あるある"が、ドコモが通信料金を値下げした新プランを導入することで増殖の可能性があるらしい。

キャリアの狙いとその解決方法を、ひと足先にオプション詐欺の被害に遭った週プレライターの奮闘劇とともにご紹介する。

■値下げ競争とオプション加入合戦

各通信キャリアとの契約で無駄なオプションに無理に加入させられるというトラブルは、よく聞く話だ。11月13日には消費者庁が「"端末価格実質0円"などの広告について、実際の支払い金額を正確に説明しなかったり、説明なく有料オプションに加入させるケースがある」として、消費者に注意を呼びかけた。

そんななか、10月末、NTTドコモの吉澤和弘社長は決算会見で2019年4~6月までに、スマホ端末を値引きしない代わりに通信料を安くする"分離プラン"を軸に、通信料金が現状よりも2~4割ほど安い新プランの導入を発表。業界に衝撃を与えた。

これまで、あの手この手でユーザーからお金を搾取しようとしてきたキャリアが心を入れ替えたのか? だが、一見朗報に思えるこのニュースも「油断はできない」と警鐘を鳴らすのは、ITジャーナリストの三上洋氏だ。

「分離プランとは、機種を買い替えずに同じ端末を持ち続けるほどおトクになるプランです。これでは、端末を頻繁に買い替えるユーザーは少なくなり、顧客に端末を売ったり、オプションをつけることで利益を上げていたドコモショップなどの販売代理店は大いに困ってしまう。

そこで、販売代理店は少なくなった顧客に対して、今まで以上に熱心に多くのオプションに加入させようとしてくるはず」

auやソフトバンクはすでに分離プランを導入しているが、ドコモの新プランが業界の料金体系にインパクトを与えるようなものになれば、この2社も追従して値下げ競争になることも考えられる。そこで、今後横行しそうなのが、各キャリアの販売代理店によるオプション加入合戦というわけだ。三上氏が続ける。

「もちろん、それはスマホ契約に限らず、ドコモ光、auひかり、ソフトバンク光など光回線の契約でも同じ。そして、法律上は禁止されていますが、あいまいな説明で無理やり加入させる、なんて強硬手段を使う業者も増えるかもしれません」

■減収分はオプションに加入させて補填?

これを聞いて、記者は思い出す。ある日、クレジットカードの利用明細を確認していたところ、「ヤフージャパン」から覚えのない約1万円という料金が毎月引き落とされていた。不審に思いヤフーに問い合わせたところ、どうやら自宅のネット回線であるソフトバンク光からの請求ということだった。

記憶では月額4000円くらいで契約していたはずなのにどうして......? 

今度はソフトバンクに確認してみると、なんと契約時にオプションが大量につけられており、想定よりも毎月5000円近く高い料金を支払っていたらしい。気がつかないことおよそ3年、被害額は計15万円以上にも上っていた。ありえない!

さらに、笑える......というか、悲しくなるのはそのオプションの内容。記者が加入させられていたオプションはこんな感じだ。

「BBマルシェ」......安心食材をウェブで注文できる通販サービス。月額458円。

「BBお掃除&レスキュー」......専門スタッフが自宅に訪問し、ハウスクリーニングや家事を手伝ってくれる。または水のトラブルなどにスタッフが駆けつける。月額458円。

「BBライフホームドクター」......電話やウェブで専門医がユーザーの健康相談に乗ってくれる。月額500円。(以上、税抜き価格)

などなど、思わず「誰がこんなもん使うねん!」とツッコミを入れたくなるようなトンデモオプションの数々。

前出の三上氏によると、

「こういうワケのわからないオプションは以前からありますが、今後はもっと増える可能性があります。というのも、ドコモは、来年の新プラン導入による最大4000億円規模の減収を『スマートライフ事業』などを強化して補うとしています。

スマートライフとは、要するにキャリアが提携する生活お役立ちアプリやIoT機器との連携サービスなどの追加オプションです。ドコモに限らず、今後キャリアは通信料金で利益を上げづらくなるでしょうから、こういったオプションビジネスに力を入れざるをえません。そうすれば、今以上に『こんなもの誰が使うんだ!?』というオプションが増えるでしょう」

今でもパンフレットやショップの店内には数々のオプションが案内されているが、今後はもっと必死にオプションの存在をアピールする可能性も

■消費生活センターに相談で返金額アップ

今後も不安だが、現状も十分ヒドイ。スマホや光回線の契約時に、たくさんのトンデモオプションに知らぬ間に強制加入させられる人は多いらしく、ツイッターでは被害者の激怒の声があふれている。

法律ポータルサイトである『弁護士ドットコム』にも、関連の相談は後を絶たないようだ。インターネット問題に詳しい田上嘉一弁護士が語る。

「携帯端末を購入したところ、勝手にSDカードをつけられていて、しかもそのオプション料金が市販価格の倍だったという相談者がいました。ほかにも、オプションの解約連絡をしたにもかかわらず、担当者が手続きを忘れていたため、その後もオプション料金が発生。返金を求めるも『半分だけしか返さない。この条件をのめなければ1円も返さない』なんて脅しを受けた相談者もいたそうです」

なんとも卑劣! さらに、記者の知人Aさんが体験したこんなヒドイ話もある。

「ソフトバンクで新たな端末を購入したら、液晶保護ガラスやモバイルバッテリーなど勝手に付属品をつけられて端末代が5万円も値上がりしてました。抗議しても『お客さまに適切なプランをご用意したので取り消しはできない』と突っぱねられて......」

これらは詐欺行為ともいえる手法なだけに、相手が大手キャリアなら法的に糾弾できそうなものだが......。

「オプション契約については契約時にちゃんと説明していなければ、事業者側の落ち度と判断されることはあります。しかし、オプション詐欺によるユーザー側の被害は数千円から数万円程度。そのために多大な時間と費用を使って裁判を起こすというのは現実的ではありません」(田上氏)

キャリアなどの事業者やその代理店は、顧客の泣き寝入りを見越しているということなのだろうか?

さて、記者のケースに話を戻すと、やはり15万円は痛すぎる。なんとか取り戻そうとソフトバンクに抗議の電話をするも、3分の1の返金で水に流せとの回答。無断で勝手にワケのわからないオプションをつけたのだから全額返してほしいと半ば懇願しても、

「契約当時の記録は破棄しているのでオプションの説明をしなかったという証拠はない。意味のないオプションかどうかもお客さまによって違うので言い分は聞きかねる。そもそも今まで気がつかなかったそちらも問題なのでは」

記者の契約書には加入した覚えのないオプションが。それぞれの料金は書かれていないクレジット明細は「ソフトバンク光」ではなく「ヤフージャパン」名義だ

さすがに頭にきた......が、確かに裁判を起こすのは現実的ではない。そこで消費生活センターに相談し、そこからソフトバンクに交渉をしてもらうことに。すると、半額を返金するという。

なんだ、やればできるじゃないか。もう少し粘れば全額返ってくるかも......!と思ったのも束の間、「これに応じなければ、返金の話はなかったことに」という、聞いたことのある恐ろしいカードを切ってきたところでゲームセット。

1円も返ってこない結末にビビった記者はこれを受諾。残りの被害額約7万円は、ソフトバンクホークスの来年の補強費にでも使われるのだろうかと、皮肉のひとつも言いたくなる。

ちなみに前出のAさんは、

「知り合いにソフトバンクの上役がいるのでその人にチクる、と脅したらオプションをキャンセルできましたよ」

脅しには脅しのほうが効果的だったかも。

これを読んで、「自分は大丈夫」と思っている人も、今後増加するトンデモオプションの魔の手に引っかかる可能性は大いにある。そんなときは、泣き寝入りせずに文句を言えば、ちょっとは返ってくるということを覚えておいてほしい! いや、そもそも超基本だが、契約内容のチェックは忘れずに!