アップルは「動画配信」「雑誌などの記事配信」「ゲーム遊び放題サービス」を今秋から始めると発表(写真はティム・クックCEO)

「アップルが任天堂を買収する!?」

そんなニュースがネットに流れたのは4月6日。発端は、『ウォール・ストリート・ジャーナル日本版』が、アメリカの投資情報専門誌『バロンズ』の記事を転載したことだ。

バロンズの記事には「アップルのティム・クックCEOが『大型の企業買収を検討している』とテレビインタビューで答えたこと」や「任天堂の時価総額が340億ドル(約3.8兆円)で、1年前の550億ドル(約6.1兆円)と比べて格安だということ」などが、その理由として書かれていた。

さらに、この噂に真実味を与えたのが、3月になり任天堂の大株主である京都銀行など5つの銀行が、約242万株を売り出したことだ。これに対し任天堂は100万株を自社株買いしたが、安定株主がいなくなったことで、買収が容易になるとの観測もある。

アップルは3月25日に行なったスペシャルイベントで、定額制でゲーム遊び放題の「アップルアーケード」を今秋からスタートすると発表した。このサービスは、100タイトル以上の新作ゲームを150以上の国と地域で提供するもの。

そのための任天堂買収なのではないかとの見方もあるが、実際のところはどうなのか? ITジャーナリストの三上洋氏に聞いた。

「アップルは今回のイベントで、ステージ上では新製品の発表をせず、すべてコンテンツの発表で終わらせました。それだけ今後はコンテンツに力を入れていくということです。

しかし、アップルはパソコンやiPhoneなどのハードウエアやOSなどのソフトウエアは持っていますが、コンテンツは持っていない。ですから、任天堂を買収するというのは、すごくストレートな方法です。アメリカでも人気の高い『スーパーマリオ』や『ドンキーコング』シリーズなどのコンテンツは、何がなんでも手に入れたいでしょう。

一部では、M&A(合併・買収)担当者が昇格してティム・クックCEOの直属になったと報道されています。また、現在保有している1300億ドル(約14兆円)のキャッシュを企業買収に使うのではという観測もあり、そういう意味では任天堂を買えるし、買う意欲もあるでしょう」

では、一方の任天堂は?

「『ニンテンドースイッチ』は一応成功していますが、『ポケモンGO』など他社のサービスにコンテンツを提供したり、自社アプリを開発したりと、スマホへの切り替えに力を入れています。しかし、そちらは大成功しているわけではない。もしiPhoneにコンテンツを提供できるのであれば、任天堂にとって悪い話ではないと思います」

となると、やはり任天堂はアップルに買収される!?

「いや、任天堂は積極的に買収を受けることはないと思います。今はコンテンツの時代。アップルに独占されるより、グーグルやアンドロイドにも提供したほうがメリットがあります。『アップルは買いたいけれど、任天堂は売りたくない』というのが、正直なところだと思います」

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