緊急事態宣言以降、自宅でお仕事をこなしつつ、動画視聴すると......お、遅っ。つーか、仕事用のPCから会社のデータを取り出すだけでも速度的に強ストレスがアリ!
テレワークや各種エンタメを快適に行なうには、家庭の固定インターネット回線、そこからつながるWi-Fi電波の速度が重要になる!
そこで家庭におけるインターネット環境の最適解を、自宅に光回線を2本も引いている"最速最強"のITジャーナリスト、法林岳之(ほうりん・たかゆき)さんと共にチェックしていきましょう。
■テレワークの普及でネット回線が大混雑中!
――まず、今回の緊急事態宣言は家庭のインターネット環境に影響アリなのでしょうか?
法林 通常時なら平日の昼間が最も家庭のインターネット回線を快適に使える時間帯です。しかし、最近はこの時間帯に速度の低下を感じますね。
――確かに! 週プレ編集部界隈(かいわい)のテレワーク勢からも「FANZAのVRが遅い」という大人の事情から「バトロワでエイムの遅延がー!」という仕事中とは思えない声まで多く聞かれます。これは、どのような原因が考えられますか?
法林 緊急事態宣言によって増加したリモートワークです。特に会社のPCを自宅の端末から操作するリモートデスクトップ接続はネット回線への負担がかなり大きく、動画やゲームの比ではありません。これから全国的にリモートワークでの仕事が増えるのは間違いないので、自宅のネット回線、Wi-Fi環境の最適化はより重要になってくるでしょう。
――自宅のネット、遅っ!と感じたらまずはどこをチェックすべきでしょうか?
法林 速度テストを行なってみましょう。スマホ用のアプリですぐに計測することができます。これで数十Mbpsほどの速度が出ていれば問題ありません。しかし、数Mbpsほどの速度ですと、リモートデスクトップだけでなく動画視聴も苦しくなってきますね。
――ネット回線を見直すにしても、どこからやっていいかも......。
法林 まずは、契約しているネット回線の種類ですね。意外と過去のADSL回線のままになっている人がいます。けど、速度が数Mbpsしか出ないこともあります。より高速な光回線へ変更すべきでしょう。
――どのような会社と契約するのが幸せですか?
法林 やはりスマホのキャリアと紐づけてしまうのが一番楽です。例えば家族でドコモのスマホを使っているなら、家庭のネット回線も「ドコモ光」という感じです。auも「auひかり」、ソフトバンクも「SoftBank光」が用意されて、いずれも月々の割引が適用されます。
――割引もありつつ、支払いも一括請求。契約も各キャリアのオンラインから行なえるのでこれは楽チンですね。
法林 ただ現在、緊急事態宣言が発令されている地域は新規契約をしても、すぐに回線工事を行なうのは難しい状況でしょう。それでなくても4月は新入学・新生活シーズンで工事渋滞なんです。
――ですよねー。住んでいる地域によっては回線工事のハードルがかなり上昇しそう。これ以外に、ネット回線を高速化する手段は?
法林 Wi-Fiルーターの見直しです。現在、Wi-Fiルーターの主要な電波の規格は3種類。ひとつはWi-Fi6こと「11ax」。最新のiPhone 11シリーズなどのフラッグシップモデルが採用している最も高速な規格で、Wi-Fiルーターとスマホ間の通信を最大9.8Gbpsで行なえます。次が「11ac」で、こちらは最大6.9Gbps。そして2009年登場の「11n」が600Mbpsです。
――つーか11nの通信速度って、11axや11acの10分の1以下じゃん!! こんなん使ってる人いないでしょー。
法林 何年も前にネット回線を契約した際にレンタルした11n対応のWi-Fiルーターを、そのまま使っているケースが少なからずあるんです。
――それだと最新のiPhoneを使っていても最大600Mbpsとかいう誰得の通信環境じゃないですか! でも自分の使用している規格はどうチェックすればいいの?
法林 使用しているWi-Fiルーターの製品情報のページや、本体の背面に、対応する規格が書かれています。そこに11acや11axの表記のない場合は回線契約する会社へ連絡して最新機種へ交換してもらいましょう。
――でも、それって工事が必要なんじゃ?
法林 Wi-Fiルーターの場合は先方の会社から発送されてくるものを自分でセットするだけなので工事不要です。最新機種は、設定も電源を入れて有線ケーブルを接続するだけで完了します。
また、Wi-Fiルーターを交換しなくても、11nの周波数を2.4GHzから5GHzへ変更するだけでも混線が解消されます。最近はどのスマホやゲーム機、PCも5GHzには対応していますので設定を変更しても大丈夫です。
――とりあえず交換しちゃうか、周波数の変更でしのげそうですね。
法林 ただ、これらのWi-Fiルーターはレンタルという扱いなので月々のレンタル料金が発生します。Wi-Fi規格は5年周期で新規格が登場しますので、それに合わせて自分でWi-Fiルーターを買ってしまうのもアリでしょう。
――確かにアマゾンや家電量販店のサイトをチェックするといろいろなメーカーからWi-Fiルーターが販売されていますね。特に海外メーカーには、高速をウリにしつつアンテナが四方に広がったズワイガニみたいなデザインのモノがあったりして、厨二心を刺激しまくりですっ!
法林 海外メーカーは速度をウリにしていますが、基本アメリカ市場を意識して開発されているので、日本向きとは言えない部分もあります。
――例えばどんなところ?
法林 アンテナの設計です。海外メーカーは広範囲に平たく電波が届く設計になっています。一方、国内メーカーの製品はマンションのような密集した場所でも電波が混線せず、また、戸建ての2階3階といった上方向へも電波が届きやすい設計で開発されています。
――なるほど。日本の住宅事情にマッチしていると。
法林 そうです。それと海外メーカーは速度的に有利ですが、やはりそれを使いこなすとなると回線の知識も求められます。ズワイガニのようなビジュアルは、男子の物欲をそそりますけど(笑)。
――ほかにも、国内メーカー製品を選ぶメリットはありますか。
法林 バッファローやNECといった国内大手メーカーの製品だと、各種設定メニューが豊富で、それらの変更を簡単に行なえます。
例えば、回線が混雑している時間帯に、家庭内でお父さんと子供ふたりが同時にネット接続しているシチュエーションがあります。この場合、通常だと3名の通信速度が同時に低下しますが、お父さんの端末だけ速度を維持し、子供ふたりの端末はあえて速度を落としてバランスを取る設定が可能です。
――それだと、お父さんのリモートデスクトップお仕事も安全安心。緊急事態宣言下で最も活用したい機能ですね。
法林 また、子供に深夜はネットを使わせたくない場合は、指定した端末を時間設定で接続不可にすることもできます。
このように各種機能が充実しており、それを簡単に設定できるのが国内メーカーならではの特徴ですね。
――確かに、パスワードの再設定とか、新端末の接続設定とか国内メーカーだとQR読み込み一発で楽チン!
■CMヘビロテWi-Fiに要注意!?
――ところで、そもそも家に固定のネット回線がなく、モバイルWi-Fiルーターのみ!という人も最近では多くなっていますが、この場合はどうすれば?
法林 モバイルWi-Fiルーターは一般的なポケットサイズの端末と、自宅に固定して使う端末の2種類がありますが、固定端末のほうが電波状況は安定していますね。ただ、3日で10GBの容量制限があるので、リモートデスクトップではあくまでサブ回線的に考えて利用しましょう。
――そんななか、最近はギガ容量無制限というモバイルWi-FiのCMがヘビロテ中ですが。
法林 先行していた「どんなときもWiFi」が先月、接続トラブルでサービスを停止する事態になりました。どの会社も同じようなシステムを採用しており、安定性に関しては疑問視する声が多く、しばらくは要注意ですね。
――では、モバイル回線で裏技的なものは?
法林 ドコモの5G回線です。
――いやいやいやー。それ、対応エリア極小のやつじゃないですか!
法林 確かに5Gのエリアは極小です。しかし「5Gギガホ」(月額7650円+税)の料金プランだと、実は4GLTEでも容量無制限で利用できるのです。テザリングも無制限ですので、安定したドコモ電波でPCのリモートデスクトップにも活用できます。
――それ、最強の裏ワザ!
法林 キャンペーン中の特典になりますが、現在のようにネットインフラに負荷の大きい状況だと、いつキャンペーンが終了となってもおかしくありませんね。
あと、裏ワザではありませんが、ソフトバンクは「ソフトバンクAir」(月額4880円+税)という工事不要の固定ネットサービスがあります。機能的にはモバイルWi-Fiと同じですが、こちらは通信容量制限がありません。モバイルWi-Fiからの乗り換え対象としてはアリですね。
――不要不急からのリモートワーク普及で国内のネットインフラが苦しくなるなか、回線選びと新型Wi-Fiルーターの導入は大至急事項かと!