米Apple社は6月23日、開発者向けのイベント「WWDC 2020」で、今秋リリース予定のiPhone用の新OS「iOS14」を発表した。
ここで注目されたのが、等間隔でアイコンが並ぶおなじみのホーム画面のデザインからの変更だ。同一カテゴリーのアプリをまとめて表示する「App Library」、ニュースや撮影した画像や動画を表示できる「Widget」などが"新機能"として紹介された。
だが、こんな意見もある。
「この新機能、実はAndroid端末では10年前からやっていることなんですよ」
そう語るのは、スマホをはじめとする最新ガジェット専門誌『デジモノステーション』の滝田勝紀編集長だ。Androidの定番機能をいまさら"新機能"としてiOSに採用する理由はあるのだろうか。
「世界的なiPhoneのシェアは3割程度です。ホーム画面のデザインや使い勝手をAndroidに寄せることでiPhoneへの機種変を促す、というのは商売的に当然の流れなんですよ」
そんなことをせずとも、iPhoneには簡単に美しい写真を撮影できるカメラがあるし、機種変更時にもスマホに保存した各種データをスムーズに移行できるというメリットもあったはずでは?
「正直、今やカメラ性能ではサムスンやファーウェイの2周遅れです。それでいて価格は高い。そしてデータの移行はGoogleやマイクロソフトのクラウドサービスを利用していれば、【iOS→Android】間でも簡単に行なえます。
ですからわれわれのようなガジェット専門誌としてもiPhoneの"推し要素"がなくなってしまい、弊誌の最新号はスマホ特集号なのに、iPhoneが一台も掲載されていないほどです(笑)」
OSどころかハード面でもAndroidを後追いするようになったiPhone。Appleの経営的には大丈夫なのだろうか。
「その点は安泰です。昨年、iPhoneのアプリを配信するApp Storeは過去最高となる55兆円以上の売り上げを記録しました。もはや製造業というよりエンタメ業。性能よりブランドイメージ優先で、高価なiPhoneでスマホ世界シェアの3割前後を維持し、あとはアプリや動画・音楽配信で稼ぐ方向にシフトします。いわばApple自体が"iPhone離れ"を始めているんですよ」
そんな状況でも、日本では【iPhone→iPhone】の機種変を繰り返すユーザーが多い。
「さすがにキャリア側もわかっていますから、これまでのようなiPhone推しはありません。ユーザーがショップで『カメラ性能のいいのが欲しい』『安くて大画面なのどれ?』と言えば、iPhone以外の端末を薦めてくれます。それでもiPhoneにしてしまうのは完全に"思考停止機種変"なんですよね。
スマホはもはやインフラですから、家や車選びのように実用性や装備面と、価格のバランスをしっかりチェックして選ぶべきでしょう」
今秋発売予定の新型iPhoneは5G対応で、上位機種は20万円台とも噂される。ユーザーの目利きが試されそうだ。