11月26日、高級家電メーカーのバルミューダから初めてのスマホ端末「バルミューダフォン」が発売された。キャリアでの取り扱いはソフトバンクのみで、特徴はモニターが4.9インチというコンパクトさ。丸みを帯びたデザインは創業者である寺尾玄(げん)社長が自ら設計した。
ところが評判はいまひとつ。その一番の要因は価格で、CPUは2年前に発表されたSnapdragon765、バッテリーはiPhone 5と同等の2500mAhと、数年前のミドルレンジスマホのスペックであるにもかかわらず10万4800円と強気の設定なのだ。
つい先日、スマホ事業参入に絡んで社外役員のインサイダー取引疑惑が発覚したばかりの同社としては、踏んだり蹴ったりの様相である。
ではどんな勝算があるのか? 1級FP技能士の古田拓也氏が解説する。
「同社は11月17日の予約開始から年内までの1ヵ月半で、携帯端末事業だけで27億円ほどの売上高を見込んでいます。ここから、約2万6000台の出荷を想定していることがわかります。
MM総研が発表した今年度上期のスマホ出荷台数は1472万台。単純計算すれば1ヵ月半で約368万台ですから、バルミューダはその0.7%しか狙っていないことになる。つまり1000人中7人が欲しいと思えば勝ちなのです」
実機の使い心地はどうか? 「思いのほか悪くない」と言うのはITジャーナリストの三上洋(よう)氏だ。
「正直、発表を見たときにいい印象は持ちませんでしたが、樹脂製ならではの手触りの良さは抜群。ガラリと印象が変わりました。サイズ感はiPhoneのminiシリーズと同程度と手のひらサイズなのも扱いやすく、小ささが気にならないユーザーは受け入れやすいのではと思います」
また、スマホ依存対策の工夫が随所に見られるのもこの端末の特徴だという。
「例えばカメラやカレンダーなど使用頻度の高いアプリはショートカットで即座に起動でき、必要なことだけを手早く済ませられる仕様になっています。バッテリー容量には不安が残りますが、それも依存対策の設計なのかもしれませんね」(三上氏)
安くていい物を求めるなら今や中国製や韓国製にはかなわないのが実情だから、「こうして個性やデザインで戦うのは正解」と三上氏は語る。これについては先の古田氏も、
「もともと同社は2万5000円超のトースターなど、コスパ度外視の高級路線で勝負してきました。私も含めてスペックやデザインを見て不満を感じた人は、最初からターゲットと見なされていないということなのでしょう」と同意する。
また、スマホはあくまで今後への布石だという見方も。
「今回の端末は、新ブランド『バルミューダ テクノロジーズ』の第1弾としてリリースされたもの。つまりこのスマホは、同社がIoT家電に本格参入することを示す狼煙(のろし)ともいえます。例えば今後スマホと連動するスマートスピーカーをリリースし、生活家電に本格参入していくのかもしれません」(三上氏)
不評の裏にはしたたかな計算があった?