スマホを数年間利用していると、フル充電しても即電池切れ......。ユーザー的に強ストレスな事案ともいえるスマホのバッテリー劣化。そんなバッテリー界隈の最新事情はどうなっているのか? メーカー各社の新技術、ユーザーが簡単にできる節電や劣化防止テクなどを、まとめて紹介ですっ!

■思いのほか優秀! 日本のバッテリー技術

スマホの中古販売を手がける「携帯市場」が実施した「スマホの疲労度調査アンケート」によれば、「2年前にスマホを購入したユーザー」の49%が【スマホの電池の減りが早い】と回答しています。このバッテリー劣化問題、ユーザー的にストレス大きすぎッ!

これを解消するためのバッテリー劣化防止テクニック、さらにメーカー各社が熾し烈れつな争いをしているというスマホバッテリー開発にまつわる最新の話題を、ITジャーナリストの法林岳之(ほうりん・たかゆき)さんに解説してもらいます。

――バッテリーの劣化を感じているユーザーが増えているようなんですが、どのような要因が考えられますか?

法林 新型コロナの影響で在宅ワークが増えたことが一番の要因でしょう。バッテリーを劣化させる最大の原因は過充電です。在宅時間が長くなり、スマホを充電器に常時接続しながら動画視聴やゲームもする。この使い方は最もバッテリーに負担をかけ、早く劣化させます。

――過充電を防ぐ方法は?

法林 充電が終了したら、充電器を取り外しましょう(笑)。

――まんますぎ!

法林 でも現状、多くの端末においては、これが最も確実な過充電防止方法なんですよ。もちろん、どのスマホも過充電防止機能は搭載されており、例えばiOSにはバッテリーの設定項目に「最適化されたバッテリー充電」という機能があります。【80%まで充電したら、その後の充電を遅らせる】という機能ですが、それでも過充電を完全に防げるわけではありません。

iPhoneでは【設定→バッテリー】からバッテリーの使用状況を確認することが可能
【設定→バッテリー→バッテリーの状態】に「バッテリー充電の最適化」の機能があり、ここにチェックを入れればバッテリーの劣化を防止する充電を行なってくれる

――Android端末に、そのような機能は?

法林 メーカーがそれぞれ独自の過充電防止機能を実装しています。なかでも充実しているのはソニーですね。Xperiaシリーズは「いたわり充電」というユーザーの利用状況を学習する過充電防止機能を搭載しています。

――「学習」とは具体的にどのようなことを行なうの?

法林 例えば、ユーザーが日常的に23時に就寝して、朝8時に出社するとします。23時の就寝時に充電を開始した場合、8時の出社時間に合わせて端末をフル充電するんです。このようにユーザーの生活パターンを学習して過充電を防止する機能です。

ソニーのXperiaシリーズは過充電対策となる「いたわり充電」機能や、電源節約「STAMINAモード」など、バッテリーに関する独自機能が大充実。また、ゲームプレイ中に充電器を差した場合は、給電のみを行なうなど、日常的な利用での心強い過充電対策が魅力となっている

――ソニー、すごいじゃん!

法林 ソニーは充電機能に力を入れてきたメーカーで、ゲームプレイ中に充電器を接続した場合は給電のみを行なって充電はせず、それによって過充電させない機能もあります。そして現在、充電機能やバッテリー性能の開発はソニーだけでなく各メーカーがこぞって技術競争を行なっているジャンルとなっています。

――なぜ今、バッテリー性能が重要視されてるの?

法林 最近のスマホは3万円台でも3Dゲームを快適に遊べたり、カメラも広角や夜景モードも搭載されたりと、性能においては一定レベルまで達しました。そこでユーザーに最も身近なバッテリー性能をアピールすることで差異化しようという製品が多くなってきたのです。

――納得の理由! ではどんな新技術があるんですか?

法林 ソニーと並びバッテリー性能が充実しているのがシャープです。最新の「AQUOS sense6」は通話やメッセージのやりとりで一日約1時間使用した場合、最大待ち受け時間は約1週間。シャープは電力消費の大きいディスプレイの省電力技術が優れているんですね。

――驚異のスタミナっぷり!

法林 この端末では新たに「インテリジェントチャージ」という機能も実装されました。充電時の発熱を抑えつつ充電時間を最適化し、スマホを3年使用してもバッテリー容量を元の90%以上に維持します。つまりバッテリーをほぼ劣化させないわけです。

――シャープ、優秀すぎ! 一方の海外メーカーではどんな新技術があるんですか?

法林 急速充電です。シャオミの最新モデル「Xiaomi 11T Pro」は、搭載されている5000mAhの大容量バッテリーを、独自の急速充電技術「Xiaomi ハイパーチャージ」により約17分でフル充電できます。

中国メーカーのシャオミは、約17分でフル充電できる爆速充電機能を発表。ライバルメーカーとの充電比較を行ない、その速度差は圧倒的

――iPhone 12シリーズ以降のモデルを一般的な充電器を使用した場合、フル充電まで1時間ちょい。この速度差は圧倒的ですね!

法林 OPPOも、4000mAhクラスのバッテリーを約20分で充電する技術を発表しました。さらにOPPOは「バッテリーガード」という夜間充電を最適化する機能を搭載し、過充電も防止します。

OPPOは急速充電、そして大容量バッテリーを搭載し、性能をアピール。ただし、大容量バッテリーには、あるスペックがトレードオフされる問題もあり!?

――バッテリーに関して、日中メーカーの開発アプローチの違いがありそうですね。

法林 中国メーカーは【大容量バッテリー+高速充電】という技術が主流ですが、大容量バッテリーには本体重量が重くなるデメリットがあります。一方、日本メーカーは【節電+充電管理】の技術を優先する開発になっており、シャープが薄型の世界最軽量端末を開発できる背景になっています。

――ところで、充電回数を減らせばバッテリー劣化は防げるってことは、そもそもスマホ使用中に節電を心がけるのも劣化防止に有効なのでは?

法林 有効です。実際、ほとんどのスマホに「節電モード」が搭載されていますが、これはGPSでの地図表示などが制限されることもあります。なので機能を維持しつつ節電するなら、設定で【画面を暗くする】のほうがストレスなくスマホを利用できますね。

――続いては充電速度についてもお聞きしたいです。現在使っている端末で充電速度をアップするには?

法林 新しい充電器を購入することです。昨年から爆発的に普及しているのが「GaN(窒化ガリウム)」の半導体技術を導入した、小型で大出力の充電器です。価格も安く、性能的に誰もが満足できます。

――確かに! 2000円前後の超小型充電器でも、iPhoneなら同梱充電器より2~3倍の高速充電が可能。では、バッテリーが劣化して【要交換】になった場合の最適解とは?

法林 iPhoneは古い端末でもバッテリー交換が安価で行なえます。それこそ大手家量販電店でもアップル公式のサービスが行なわれています。最近は駅前などにバッテリー交換も行なうスマホ修理ショップがありますが、これらは総務省の認可済みの技術を持った【総務省登録修理業者】であることがマストです。

昨年発売されたiPhone 12シリーズから充電器の同梱をやめたことで、世界中の充電器市場で大ブレイクしたアンカー社。新技術の窒化ガリウムを採用した超小型充電器シリーズは、国内の主要ECでもベストセラーとなっている

――キャリアの補償サービスはどうでしょうか?

法林 iPhoneなら「AppleCare」という補償がありますが、キャリアで購入したAndroid端末の場合はキャリアの補償サービスを利用するのが基本です。

どのキャリアでも毎月600円台~1000円強の追加料金が発生しますが、修理速度、代替端末の提供、さらに修理が完了した端末を自宅まで届けてくれるなど、サービスが手厚い。端末購入時に同時加入するのが安心ですね。

――SIMフリー端末はどうするのが正解ですか?

法林 ソニー、シャープ、OPPOなど日本で人気のメーカーは、年5000円前後の料金で、自社提供の補償サービスを行なっています。

また、クレジットカード会社は新型コロナの影響で国内・海外旅行保険の利用がなくなり、モバイル製品を対象とした付帯サービスを拡充させています。ただ、こちらは【バッテリー交換は対象外】の場合があるので、事前にしっかりと確認しておきましょう。

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――今後、飛躍的にバッテリー性能がアップする新技術などの登場は?

法林 例えば稼働時間が劇的に延びる新バッテリー技術があっても、それをスマホに採用するには時間がかかります。アップルやサムスンといったメーカーは、1億セット規模の発注をし、新技術の生産体制が完全に整わないと採用できないからです。なので、当面は日中メーカー共に現状の技術を高めていくでしょう。

――現状、理想のバッテリー性能は中国式の【大容量バッテリー+高速充電】と日本式の【節電+充電管理】の超融合な雰囲気。こんなバッテリーを即実現してほしいです!