あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「ChatGPT」について。
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「他国に侵攻している国をハッキングする」と長男(11歳)が宣言。どの国のことやら。依頼されるがまま、多くの書籍を買った。現在、長男は仮想サーバーを作り、PCの遠隔操作を試行錯誤している。
私は早い段階からChatGPTの有料版に加入し、月20ドルで最高のおもちゃを手にした。ChatGPTはGPT-3.5というモデルを使っているが、有料ユーザーは3月から最新のGPT-4を使用できるようになった。長男は私のiPadを使ってChatGPTにプログラミングの相談を繰り返している。未来の教育現場だ。
ChatGPTを使用した報告記事はあふれている。週プレでも検索の代用や、原稿の執筆などを取り上げた記事は面白く読んだ。実際に簡単なスピーチ、さらに書籍の原稿などはそれっぽく書ける。
しかし検索したいのならGoogleに訊(き)いたほうが正確だし、誰もがライターなわけではない。一般的な会社員にとってもっと汎用的な使い方はないか。ずっと試行錯誤していると、いくつかの使用方法に行き当たった。
(1)エクセルの関数やVBA(アプリ拡張機能)の作成。もちろん検索エンジンで調べてもいいのだが、ChatGPTは実際のエクセル貼り付けの実例をもとに教えてくれる。この利点は大きい。
エクセルの数値を表にして、具体的に何をしたいか質問できる。事務処理には重宝する。
(2)リーガルチェック。契約書などの内容を入力して法的な問題点を訊くと、見事に答えてくれる。
これだけで問題点の洗い出しが完結するわけではないが、弁護士など専門家に訊く際の事前調査としてはじゅうぶんだ。
とくに英文契約を貼り付けてみた結果、日本企業が外資系相手に気を付けるべき不可抗力条項などの内容を見事に指摘してくれた。
(3)リスクチェック。面白いことに、「会社でこのような発表をしようと思うがリスクはあるか?」と訊くと、なかなか示唆的な回答を返してくれる。
これを応用して「このような内容を社内で報告しようとしているが、経理部門から見た懸念点を述べてほしい」といった使い方もできた。資料などの想定問答作成に最適だ。
(4)Q&A。「DocsBot」などの外部アプリケーションを使えば、デフォルトの状態ではChatGPTが有していない知識や情報を習得させることができる。
例えば、この方法である会社の情報をふんだんに吸収させると、その会社特有のQ&Aやサービスの解説文を見事に書けた。
なお冒頭で書いた長男は、新学期に仲のいい知人が転校していなくなった。遊ぶ相手もなく寂しさを埋め合わせるためにChatGPTを使っていたように思えた。
音声をテキストに変換して入力し、返答をまた音声に変換して出力するアプリも出てきているので、ChatGPTがいずれ(5)孤独な高齢者の会話相手になる可能性は高い。最期までの伴侶になるかも。
とにかくChatGPTの活用方法は考え方しだいだ。
先日、某企業の方に「ChatGPTを使えばおおむね何でも実現できます」と伝えると、しばらくして「昭和と平成と令和を西暦に変換するプログラミングって作れますか」と真顔で言われた。
それならエクセルでじゅうぶんだ。変換表を貼っておけ。そう、私たちはそもそも、高度なAIでやりたいことはあるかと問われている。