昨日の昼食代をQRコード決済で支払ったあなた。もしかしたら店側は泣いているかもしれません。※写真はイメージです 昨日の昼食代をQRコード決済で支払ったあなた。もしかしたら店側は泣いているかもしれません。※写真はイメージです

PayPay、LINE Pay、楽天ペイ、d払い、au PAY、メルペイ、ファミペイなどなど。数年前には存在していなかった電子決済は、今やほとんどの店で使えるほど一般的になった。しかし、利用者は便利でラクだったとしても、店側には思わぬ負担となっていることも......。

■決済手数料は店側の負担!

ここ数年で急速に拡大しているQRコード決済。今や現金やクレジットカードに並んで、主要な支払い方法のひとつになっている。

利用者の立場からすれば、財布の中に現金が足りなくても、スマホひとつで簡単に支払うことができ、また、使うたびにポイントが還元されるキャンペーンなどが積極的に行なわれているため、便利でおトクな決済方法として認知されているだろう。

しかし、QRコード決済を導入した店側からはこんな声も噴出している。

「QRコード決済で代金が支払われた際は、その決済サービスを運営する会社に手数料を支払います。また、QRコード決済で消費者に付与されるポイント原資なども加盟店が負担しています。

QRコード決済の導入を検討していた当初は、営業担当者から『決済手数料の負担を超える来店者の増加と売り上げ増加が期待できる』とセールストークをされましたが、実際に増えている印象はなく、単純に見れば手数料分はマイナスって感じです」(ドラッグストア店長、千葉県)

この手数料の負担が厳しいため、電子決済を導入していない店も多く存在する。

「各種QRコード決済を取り扱う会社から毎日のように導入しないかと電話が来たり、飛び込み営業を受けたりしていますが、薄利な書店としては仕入れなどを考えると、売り上げが振り込まれるまで期間が空く決済方法よりも、現金決済が助かるんです。毎回そう伝えて諦めてもらっています」(書店員、神奈川県)

利用者にとっては便利だが、店にとっては必ずしもメリットを感じない部分も多くありそうだ。

■電子決済があるから「最後にもう一杯!」

そもそも、日本で最も広く浸透しているPayPayは2018年12月以降、「100億円あげちゃうキャンペーン」(利用額の20%還元、当選の場合は全額還元)で急拡大した。

その際、PayPayが利用可能な店舗を増やすために、店側に対し決済機器の導入費や決済手数料をしばらく無料にしたが、2021年10月1日からは決済手数料が有料となった。

そのタイミングでPayPayの取り扱いを解約した店舗も少なくなかったが、これを好機とみた楽天、KDDI、NTTドコモなどのライバル事業者が〝逆張り〟の方針で攻勢。無料期間の延長やキャッシュバックキャンペーンなどを行なったため、QRコード決済が可能な加盟店自体は大きく減少せず、決済方法のひとつとして定着するに至ったのだ。

では、その決済手数料とは実際どのくらいなのか?

PayPayは、決済手数料が1.6~1.98%。楽天ペイの決済手数料は一律3.24%で、au PAYの決済手数料は2.6%、d払いも同じく2.6%。店側が負担するQRコード決済の手数料はほとんどが2~3%前後のようだ。

店側はこれらの手数料がかかるものの、その分を支払ってでもQRコード決済を導入するメリットはもちろんある。

「イタリアンレストランを経営しています。レジ締めの際に精算が合わず、計算し直すこともしばしばありましたが、電子決済はそういった数え間違いは起きないため、会計処理がかなりラクになりました。また、従業員にレジ金をちょろまかされるリスクが減ったのも地味に大きいです」(レストランオーナー、東京都)

また、とある無人の野菜販売所ではPayPayを導入したことで、お金を盗まれる心配が減少したという。さらに、実際に売り上げアップにつながったケースもある。

「うちの居酒屋は長い間、支払いは現金のみでした。当時は、お客さんはみんな手持ちの現金の額を超えそうになるとセーブしていたんです。

そこで、お試しでPayPayを導入してみたところ、現金が足りなくても大丈夫という安心感からか、特に若い人たちを中心に『最後にもう一杯!』と注文してくれるお客さんが増えました。少なからず売り上げ増につながったと思います」(居酒屋オーナー、東京都)

ほかにも、イベントを中心に出展している飲食店や小売店からは、手数料よりも電子決済による売り上げ増加のメリットが大きいとの声は共通していた。

■可能な限り現金で買うべき?

現金不足による買い控えが減ることは、電子決済を含むキャッシュレス決済の大きなメリットだ。キャッシュレス決済にはクレジットカードも含まれるが、QRコード決済とは手数料が異なる。

最近よく見かけるSquareやAirペイなどのキャッシュレス決済端末で支払われた際の手数料は、VISA、マスターカード、アメリカン・エキスプレスは3.25%、そしてJCBのみ3.95%(Squareの場合。Airペイはどのカードも3.24%)。

端末やカード会社によって手数料が異なる場合があるものの、QRコード決済と比べてクレジットカードのほうが決済手数料は高い。

しかし、日用品から高額商品まで幅広い決済に使われるクレジットカードと違って、QRコードの難点は、比較的安価な買い物ばかりに使われている点だ。

クレジットカードもQRコード決済と同様、店側が決済手数料を支払っており、QRコード決済よりも高い場合が多い。※写真はイメージです クレジットカードもQRコード決済と同様、店側が決済手数料を支払っており、QRコード決済よりも高い場合が多い。※写真はイメージです

「1万~3万円くらいのビンテージ物の古着を取り扱っていますが、うちで可能な支払い方法は現金かカードのみ。周りの古着屋もほとんどそう。客単価が高いからか特に決済手数料が気になったこともないので、QRコード決済の導入は検討もしていないです」(古着屋店長、東京都)

どうやら結局のところ割を食っているのは、それまで現金で買われていたのにQRコード決済で買われるようになった食品や日用品を取り扱う店なのかもしれない。

「スーパーの店長をしています。よほどの買い物じゃなければ値段もそこまで高くならないので、今でも現金で支払う人が多くいるんですが、そんな現金派の人たちが、続々QRコード決済に移っている印象です。

ひとつひとつの買い物が高ければ手数料なんてあまり気にならないですが、薄利多売だとやっぱり現金のほうが助かるっていうのが正直なところです......」(スーパー店長、愛知県)

経済産業省はキャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度に増加させることを目指している。そして、各社も競うようにキャンペーンを実施している。

今後も広がる電子決済。便利の裏側には、見えない負担があることを忘れないようにしたい。