対話型AI「ChatGPT」の進化が止まらない。では実際のところ、本気で使い倒したら、生活はどこまでラクになるのか? ChatGPTド素人の40歳ライターが識者のアドバイスを受けながら体当たりで検証してみた!
■AIが得意なタスクは謝罪文の作成
質問すればすぐに自然な言葉で回答が返ってくる、対話型の人工知能「ChatGPT」。今やさまざまな使い方が提案され、活用術を紹介する雑誌や書籍も多くあるほどだ。そこで40歳独身ライターの私はこう思った。遅ればせながら、ChatGPTを使いこなしてQOL(生活の質)を爆上げしたい!と。
......といったものの、使い方がよくわからない。そこで、「AI占い」などの、ChatGPTを活用したシステム開発を行なっているアーガイル社代表取締役の岡安モフモフさんに助言を求めた。
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岡安 ChatGPTを使うには、まず開発元のOpenAI社のサイトにメールアドレスと電話番号を入力して登録する必要があります。
――「ChatGPT」と検索しても、どのサイトなのかわかりにくかったんですよね。では、ChatGPTに頼れる業務って?
岡安 テキスト生成に長(た)けているので、原稿執筆や企画アイデア系の職種、営業などメール作成が多いポジションにいる方は活用する機会が多いと思います。
――なるほど! プライベートでは?
岡安 生活の中でも役に立つことはいろいろあります。トレーニングメニューを組んだり、レシピを教えてくれたり。あとは、雑談の相手なんかもしてくれますよ。
――ChatGPTを活用する際のコツは?
岡安 質問のポイントは簡潔に、段階的に、具体的に、の3点。そして出てきた反応を見ながら追加の質問や軌道修正をすることです。また、無料バージョンのGPT-3.5ではなく、月額20ドル(=約2700円)を払ってGPT-4にすればAIがかなり賢くなるので、最大限活用したいのであればこちらをオススメします。
――せっかくの機会なので、課金して使い倒してみます!
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まずは仕事で使ってみることにした。原稿を書く前にすべき作業のうち、特に時間がかかるのが構成作りだ。今抱えているバンドマンインタビューの記事構成案を、岡安氏のアドバイスに従って、詳細を添えて送ってみた。
Q.以下の企画を考えています。いくつか構成を考えてもらってもいいですか?
■企画概要 昨年の某大型ロックフェスでヘッドライナーを務めたバンド○○の単独来日が決定。それを記念し、カバー動画を上げるほどのファンでもある××さんに、○○に対する熱い思いを聞いた。
すると、ものの数秒で
A.企画の構成案を以下にご提案いたします。①イントロダクション、②××さんが洋楽を好きになったきっかけ、③洋楽のカバー動画を公開した経緯、④○○のニューアルバムに対する感想......(以下略)
このように、全部で7つのパラグラフに分けて構成を考えてくれた。それどころか、「それぞれの小見出しを考えて」という追加質問にもあっさり対応。クオリティも悪くはないし、これまでウンウン悩んでいた時間はなんだったんだとむなしさも少し覚える。
もしかして、原稿も書いてもらえるのでは? そう思ってインタビューの書き起こしを送ってみたところ、エラーの表示が。岡安さん、これはどういうこと?
「ChatGPTで入力できる文字数は、GPT-3.5だと2500文字程度、GPT-4だと10倍の2万5000文字程度が限界です。また、応答にも文字数の上限があるので、途切れた際は『続きを書いて』と命令する必要があるんです。
このほか、指示内容をAIが勘違いしてしまう場合は、文面を変えて依頼し直すことも必要になります」
面倒なので、原稿は自分が責任を持つことにして(当たり前)、続いてはメールの文章作成をお願いすることに。
Q.以下のメールに返信したいので文章を考えてほしい。比較的カジュアルな関係性の取引先です。
「先週末、下記のとおりインタビュー音源などお送りさせていただきました。届いておりますでしょうか? ご確認いただけていればまったく問題ないのですが、お返事がなかったので、もしかすると?と思い......(略)
これは返信を失念していた相手から送られてきた確認メールだが、やはり数秒で文章が生成された。
A.お世話になっております。先週末にいただいたインタビュー音源の件ですが、無事に受け取りました。お心遣いありがとうございます。返信が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。原稿の執筆にはすでに取りかかっており、問題なく進められています......(略)
悪くはないのだが、必要以上に丁寧な文面だったので少しアレンジして返信。先方には違和感を持たれることなくやりとりすることができた。
「謝罪文など、決まったフォーマットがあるメールの文を作る際には役立ちます。というのも、ChatGPTはネット上の多種多様なテキストデータを学習しているため、テンプレート文の引き出しが多いのです」(岡安氏)
■マッチングアプリの文面作成を頼んだら......
では、仕事以外の面ではどうだろう。私は在宅ワークが基本で、夜遅くまで作業することもありおなか回りが少し気になっている。「1週間で2㎏痩せるトレーニングメニュー」って出せるのかな?
A.1日目 ウオーミングアップ:軽いストレッチやジョギングで筋肉を温める。有酸素運動:ジョギング、サイクリング、スイミングなどを30~60分
2日 プッシュアップ:3セット×10回、プルアップ:3セット×5回......(略)
回数、時間まで指示は明確で、まるでパーソナルトレーナーのようだ。間食をしないなどの食事制限をしつつ、このトレーニングをしたところ、2㎏減をたやすく達成できた(ただし怠惰によりその後リバウンドした)! ほかにも「1ヵ月後にハーフマラソンを走りたい。メニューを組んで」などと応用もできそうだ。
次はレシピ。ChatGPTの力を借りて、おいしく栄養のある献立を作ってみよう。パスタが食べたいときに、以下の質問を投げかけた。
Q.トマトをベースにしたパスタを作りたい。①調理工程が少ない、②トマト+食材ふたつぐらいは加えたい、③調味料はなんでもOK、何ができそう?
返ってきた回答がこちら。
A.トマトとツナとオリーブのパスタがオススメです。調理工程が少なく、トマト以外にも食材をふたつ加えます。以下にレシピを紹介します。
【材料】
・パスタ 200g
・トマト缶(刻んだもの) 1缶(400g)
・ツナ缶(オイル漬け) 1缶
・黒オリーブ 10個......(略)」
実際に作ってみたのが上の写真。お手軽でいてヘルシー、そしておいしかった!
一方で、苦手なことも判明。例えば、旅行プランの作成だ。
Q.あなたは旅行プランナーです。私に奈良県1泊2日の旅をプレゼンしてください。条件は以下です。
・泊まる場所は2万円以内(ホテル、旅館どちらでも可)
・奈良駅は通りたい
・観光名所も行きたい
・B級グルメをいっぱい食べたい
これに対しては、
A.東大寺近くの「みかさ」で奈良名物の「鹿せんべい」を食べましょう。
と、検索しても見つからない店と、鹿のおやつを薦めてきた。
マッチングアプリの返信文も同様で、「ある程度やりとりを重ねた女性に対して、関係を発展させる文章を送りたいんだけど」と返信文を作ってもらったところ、
A.お疲れさまです! 取材のお仕事はいろいろな場所に行く機会があって、新しい出会いがたくさんありますよ! もしよかったら、今度お話しするときに面白いエピソードをいくつかシェアしましょうか?
早々に誘って展開を図ろうとはしているが、なんだか文がぎこちない! 少しだけ手直しして送ってみたが、その後すぐに返信が途絶えた。ただ、いくつか文案を出してもらって思ったのは、自分より見事に絵文字を使いこなしていること。
どんな関係性でどんなやりとりをしてきたかを事前に伝える手間さえ惜しまなければ、活用してみてもいいかもしれない。
このほか、雑談の相手やホームページの作成など、アレコレお願いしてみた結果をまとめた。傾向としては、ひとまずたたき台を作ってもらって、最後に自分で微調整するタイプの作業にはピッタリだといえる。
ただ、1週間の生活を終えて感じたのは、任せられる作業についても、質問を考える手間を考えると割に合わないものが多い点。ChatGPTで劇的に生活が変わる、とまではまだ言えなさそうだ。
とはいえ、生成AIは日進月歩で進化している。賢い活用法は日々キャッチアップして、ほどほどに触っておくのがいいだろう。