ソフトバンクグループの孫 正義(そん・まさよし)会長がほえた! 「知らないとヤバい!」と語ったAGIとはなんなのか? そして、熱弁の背景には何があるのか? 人工知能研究者が孫氏の真意を解説する!
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■AGIは道具。うまく使いこなせるかが鍵!
「AGIを知らないとヤバいと思います」「今後10年でAGIが実現します」
ソフトバンクグループの孫 正義会長兼社長は10月4日に行なわれた「ソフトバンクワールド2023」の特別講演でそう熱く語った。
では、そのAGIとはなんなのか? 何がすごいのか? 人工知能研究者で『AI兵器と未来社会』(朝日新書)などの著書がある慶應義塾大学理工学部教授の栗原 聡(くりはら・さとし)氏に聞いた。
――AGIとはなんですか?
栗原 AGIとは「Artificial General Intelligence」の略で、日本語では「汎用人工知能」と訳します。汎用というのは「いろいろなものに使える」「一般性がある」という意味です。
では、AI(人工知能)とAGIは何が違うか。簡単に言うとチャットGPTが出る前の人工知能がAIです。例えば、空港での顔認証システム、銀行のオンラインシステムでの自動音声、ロボット掃除機ルンバなど。AIは必ず用途が限定されています。
それに対して、チャットGPTは、会話もできるし、難しい文章も要約してくれる。プログラムも書けるし、料理のレシピも教えてくれる。いろいろなことをやってくれるので「チャットGPT=AGI」といえます。
ただし、チャットGPTは世の中に最初に登場したAGIで、文字でしか質問や命令を受けつけてくれません。それが今後は音声や画像など、いろいろなもので入力できるようになります。また、アウトプットも文字だけでなく、ロボットなどに搭載されて行動として反応できるようになります。
例えば、今は料理のレシピしか教えてくれませんが、今後は「じゃあ、作りましょう」と料理を作ってくれるようになります。
そのときに、指で箸を持つなど人間と同じような動きができるAGIロボットが出てくるのが10年後くらいだと思います。ですから、10年で実現するというのはAGIというよりも、AGIロボットではないでしょうか。
――じゃあ、イメージでいうと『スター・ウォーズ』に出てくるR2-D2のような感じですか?
栗原 そうですね。C-3POと比べるとR2-D2のほうが実用化は早いでしょう。でも、C-3POも人間のような複雑な動きはできていないので、それほど難しくないかもしれません。難しいのは鉄腕アトムみたいに器用に動けるロボットです。
――10年後にはそんなAGIロボットが活躍している社会になる?
栗原 はい。ただ、AGIといっても、それはあくまでも〝道具〟なんです。チャットGPTも私たちが問いかければ答えてくれるけれども、普段から私たちを見ていて、チャットGPTのほうから語りかけてくることはありません。
ですから、10年後に人間みたいに器用なことができるAGIロボットが実現したとしても、普段はただ立っているだけで、私たちが「料理を作って」と言ったら「はいよー」と自分で冷蔵庫を開けて、レシピを考えて料理を作ってくれるという感じです。私たちが命令しないと動きません。
――なんか偉くなった感じがしますね。
栗原 でも、毎回私たちが命令するのはウザくないですか? そうなると、「毎回言わなくても空気を読んで行動しろよ」と思ってしまう。私たちが何も言わなくても、ロボットがいま、自分が置かれている状況を認識して、何をすればいいかを自分で考えて、勝手に動いてくれればもっと楽ですよね。そういう人工知能のことを「自律型人工知能」といいます。
これが究極の人工知能で、鉄腕アトムやドラえもん、ターミネーターのようなロボットです。しかしいま、自律型人工知能は世の中にはありません。それが実現されるのも、やはり10年後くらいだと思います。
――自律型人工知能でなくても、AGIが進化すれば、人間の生活は大きく変わりますよね?
栗原 そうです。ですから、孫 正義さんが「AGIを知らないとヤバい」と言ったのはどういうことかというと、AGIはなんでもできる人工知能なので、お願いするとなんでもやってくれます。すると、AGIを知らないで自分でコツコツやっている人と、AGIを使いこなせている人とでは、大きな差が出てきます。
AGIを使いこなせる人は、ものすごい効率化ができて生産性が高まり、どんどんクリエイティブになっていきます。一方で使いこなせない人は今と変わらない。ですから、「AGIを知らないとヤバい」ということなんです。
またいま、EU(欧州)では人工知能を規制する動きがありますが、孫さんはその動きを意識していると思います。EUのように人工知能を厳しく規制していたらヤバい。アメリカや中国のAGIの技術はどんどん進んでしまいます。「日本はすでに遅れている状況なのに、ここで踏みとどまっている場合じゃない。ガンガン進むしかないんだ」ということを強調したくて、少し大げさな言い方をしたのかもしれません。
――では、この10年は激動の10年になる?
栗原 そうですね。今後、AGIの進化が加速することは明らかです。しかし現在、チャットGPTを使っている日本人は少ない(野村総合研究所の調査では、チャットGPTを利用したことがある日本人は約12%)。
これは、今の状況を理解していないビジネスマンが多いということです。そこで孫さんは今回の講演で、「日本人はもっと危機感を持て!」と言いたかったのだと思います。
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今からでも遅くない。とにかくチャットGPTを使ってAGIに触れてみよう!