直井裕太なおい・ゆうた
ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。
昨年のモデルからUSB-C端子が搭載され、ここ数年で最大となるハード面の改革を行なったiPhoneシリーズ。そして今年3月からはEU限定で「App Store」以外のアプリストアからダウンロードが可能になるというiOS面での大きな仕様変更もスタート。実は日本でも実現間近(?)な、その仕様変更を徹底解説です!
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昨年、発売された「iPhone 15」シリーズから待望のUSB-C端子を採用。この採用に影響したのが、iPhoneに搭載されてきたLightning端子を事実上禁止するEU(欧州連合)の新法律。そしてEUでは今年3月から、iPhoneに関する新たなる大改革が!
これまでiPhoneやiPadに対応するアプリの配信はAppleが運営する「App Store」のみで行なわれてきたが、今後はゲームメーカーや各種サブスクなどを提供する企業によるストアからのアプリのダウンロードも可能になるという。
これによるユーザーのメリットやデメリット、そして日本への影響などをITジャーナリストの法林岳之(ほうりん・たかゆき)さんに解説してもらいます!
――なぜEUのiPhoneは、App Store以外の外部ストアが開放されることになったのですか?
法林 EUのデジタル市場法(DMA)の存在です。この法律では、スマホや各種デジタル端末において、ひとつのアプリストアから独占的にアプリ配信することが禁止されており、現状のiPhoneはこれに抵触します。
なので、DMAが全面適用される今年3月から【外部アプリストアを開放してダウンロードを可能】にするサイドローディングの対応に仕様変更を行なうことになったのです。
――日常でiPhoneを使っていると、App Storeだけで何も問題ないし、むしろ快適ですよね。
法林 ユーザーが利用するインターフェース的に問題はありません。EUで問題視されているのはApp Storeに関するApple独自のルールです。
例えば、App Storeからダウンロードされたアプリやゲーム内のユーザー課金に対して、Appleはアプリを配信する企業から最大で30%の手数料を徴収しています。これはAppleが独自に定めたルールで、これまでは他社がアプリストアを開設することもAppleは認めていませんでした。
EUとしては、このような部分が独占的かつ優位な立場でビジネスを展開しているという判断なのです。
――では、iPhoneがサイドローディングを行なえるようになると、ユーザー的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
法林 メーカーが独自のアプリストアを開設することで、Appleに支払う最大30%の手数料がなくなり、当然ユーザーがコンテンツに支払う金額も少なくなります。
例えば『A』というゲームが人気なら、それをアマゾンやNetflixのストアからも配信することが可能となり、ストアごとに課金アイテムを差別化し、それをユーザー自身が選んで購入することもできます。動画や音楽、書籍などのコンテンツは値下げして提供することも可能でしょう。
アプリベンダーである企業としては、〝Appleを通さずにユーザーと直接やりとりしたい!〟というのが強くあり、EUが先行してそれを実現することになります。
――ユーザーと企業、どちらもメリットしかないし! デメリットとしてはどのような懸念点があるのでしょうか?
法林 Appleが主張するのはセキュリティ問題です。サイドローディングを認めることで個人情報を危険にさらすようなアプリが増え、セキュリティ面でユーザーにとってリスクが大きいと長年主張してきました。
EUの件では「サイドローディングで提供されるアプリもAppleが審査を行なう」という内容に落ち着き、この審査で数%の手数料を徴収することになります。
そして、Apple視点での最大のデメリットとなるのが〝Appleの収益減〟です。これまでの最大で30%という手数料ビジネスが成り立たなくなる可能性があり、これもサイドローディングを認めてこなかった要因のひとつでしょう。
――これはユーザー目線だと、Appleが端末代金に減収分を上乗せさえしなければ、サイドローディングは容認ですね。ではiPhoneのライバルである、GoogleのAndroid陣営のアプリストア事情はどうなっているのですか?
法林 Androidに関してはスマホメーカー各社やアマゾンのアプリストア、近年ではNetflixもゲームの配信をスタートしています。つまりGoogleの独占的なストアビジネスとはなっていません。ただ、日本国内ではiPhoneユーザーが多く、そのような事情はあまり知られていないのが現状です。
――ところで、App StoreのサイドローディングはEU以外でも行なわれる可能性はあるのでしょうか?
法林 大いにあります。特に日本ではここ数年、公正取引委員会とデジタル庁がApp Storeの手数料、アプリストアの独占について問題視しており、今年中にもサイドローディングを義務づける法案が提出される予定です。
日本の場合は、AppleやGoogleのアプリストアにアプリベンダーである企業が依存することで、ストアに〝仕様変更〟があった場合、企業側の開発コストの負担が大きく増えることなども問題視されています。
このような法整備に関してはApple、Googleの本国であるアメリカよりも、EUや日本のほうが先行しているのが現状です。
――ユーザーにとってお得要素が増えるならサイドローディングは大歓迎ですけど、今年登場予定の新型iPhoneの値上げだけは勘弁してください!
ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。