直井裕太なおい・ゆうた
ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。
各種SNSやGoogleの検索結果に表示される有名人たちの偽アカウントや偽サイト。プロフの写真やテキストは本人そのものでも、なぜか投資関係の投稿が中心という内容......。ご本人たちは注意喚起を行なっても、増殖し続けている有名人偽アカの手口や危険性を徹底解説します!
昨年末あたりから、急激に増殖しているという有名人をかたるSNSの偽アカウント。さらにGoogleで検索すると、その検索結果にも有名人をかたった怪しい投資系のサイトが続々と出現。
これらの危険性、そして一般的なユーザーはどのような対応をすべきなのか? ITジャーナリストの三上洋さんに解説してもらいます。
――どのような有名人の偽者が増えているのでしょうか?
三上 政治家、文化人、タレント、実業家など有名人は手当たり次第に偽アカウントを作られています。どれも【株式投資】に関する話題を投稿するのが特徴で、株に関する話など一回もしたことのない作家さんのものまで登場しています。
――偽アカウントの目的は?
三上 投資詐欺への誘導です。SNSの偽アカウント、Googleの検索広告で表示される"有名人監修"をかたった投資詐欺グループが暗躍し、その運用方法がすでに確立されている状況です。
――実際に有名人の偽アカウントをチェックすると、プロフの画像やテキストは本物と同じものを使用。でも、投稿の日本語には外国人が書いたと思われる独特の誤字脱字が多くあり。かなり雑な印象を感じますが?
三上 詐欺グループとしては、雑な投稿で十分なのです。むしろ、雑な部分をユーザーが面白がって拡散することで、プラットフォームのアルゴリズム的には表示件数が増えます。これまでの振り込め詐欺やロマンス詐欺は【大量の電話をかける】【DMを多く送信する】という発信作業が起点となっています。
多くの人に罠を張り、そこに引っかかった数%の人から徹底的に搾取するのが目的。9割の人が"偽アカウントである"と見抜いても詐欺グループとしては問題がないのです。今回の偽アカウントはプラットフォームの特性を悪用することで発信作業を効率化し、大規模に罠を張れるのが特徴です。
――Googleの検索結果として表示される投資系のサイトはどうでしょう?
三上 これは広告になります。詐欺グループがGoogleに出稿して表示させています。これらは【株式】や【投資】など検索されることの多い「ビッグキーワード」で表示され、その出稿費用は1クリック100円を超えることも珍しくありません。それほど投資詐欺は儲かる案件となっており、昨年の被害総額はロマンス詐欺との合計で455億円を超えるほどです。
――では、これらの投資詐欺の具体的な手口とは?
三上 例えば、SNSの偽アカウントをフォローした場合は、即フォロー返しが来て、LINEグループへ誘導されます。そこに有名人の偽者が登場。LINEグループ内は全員が詐欺グループの人間で、有名人の偽者に対して「儲かりました!」「予想的中ですね!」と感謝コメントを連発する劇場型で進行します。この話に興味を持ったターゲットを「偽サイト」や「偽アプリ」に誘導します。
――偽のアプリやサイトはどのような役割を?
三上 内容的には、証券アプリやサイトになっています。詐欺グループの指示に従い証券口座に入金すると【収益が発生】したことがアプリ内で偽装表示されます。特徴的なのは、1、2回はアプリ内の収益を出金できること。しかし、それ以降は理由をつけられ出金ができなくなり、最終的には連絡が途絶えます。
――どのような世代がターゲットにされているのですか?
三上 40代から50代の中高年です。私が取材した被害者には、中高年で日常的にスマホを使い、オンライン口座を持ち、すでにNISAなどを運用している人たちもいました。これまで振り込め詐欺は、スマホやオンライン口座を使わない高齢者をターゲットにしてきましたが、それとはまったく違う層をターゲットにしているのも特徴です。
――ここまでお話を聞きますとXやフェイスブックのMetaなど、SNSの運営側の対応も足りていない感じもするのですが?
三上 そのとおりだと思います。私はSNS上で偽アカウントを発見した場合、それが偽アカウントであることをアプリ内からプラットフォーム側へ【報告】をします。しかし、それに対し「問題のないアカウントでした」と返ってきました。正直、ずさんなチェックしか行なっていないのは明白です。
一方、偽アカウント被害に遭った有名人たちは、公式HPやメディアに出演して常に注意喚起を行なっています。そもそも本物の有名人はリアルな知り合い以外にフォロー返しを行ないません。フォロー返しされた時点で偽アカウントであり、そこからLINEに誘導されたら"投資詐欺確定"です!
――Google検索で表示される"有名人監修"をかたったサイト。これに対するGoogleの対応は?
三上 何もありません。詐欺被害が増えているにもかかわらず、現在でもこのようなサイトが検索結果として表示されています。Googleはお金をもらって詐欺グループの広告を載せているわけですから、このまま対応をしないのは"実質詐欺幇助(ほうじょ)"ともいえるでしょう。これに関しては、日本政府がプラットフォームの広告に関する法整備を急ぐしかありません。
そして、われわれユーザーは偽アカウントなどを発見したら、【報告】を行なうこと。多くのユーザーが【報告】を行なうことで、プラットフォームの対応も変わるでしょう。そして、面白がって拡散するのは絶対にやめてください!
――偽アカウントやフェイクニュースに関する最新情報は、「日本ファクトチェックセンター」のHPからも配信されているので、そちらの確認も忘れずに!
ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。