直井裕太なおい・ゆうた
ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。
昨年から続く生成AIブームの中、Googleやサムスンといったスマホの大手メーカーは続々と"AI"を前面に押し出す新製品やツールを発表。スマホに実装される各種AIはどのようなことができるのか? そして、噂されるiPhoneのAI機能などを解説します!
アメリカの生成AIの最大手であるOpenAIがアジア初の開発拠点を東京に設立。また、各種SNSには生成AIを悪用したと思われる偽広告が連投されるなど、良くも悪くもトレンド入りすることが多いAI関連。
そんな中、スマホ業界にもAIを活用したツールや端末が続々と登場しているという。そして、国内に多くのユーザーを抱えるiPhoneのAIに関連する動向とは? ITジャーナリストの法林岳之(ほうりん・たかゆき)さんに、スマホの最新AI事情を解説してもらいます!
――現在までスマホのAI機能はどのように進化してきたのでしょうか?
法林 スマホのカメラには一般的に「夜景モード」と呼ばれる暗闇で撮影した画像を明るく補正する機能があり、これはAIが【昼夜】の判別を行ないます。
2015年以降、各社はこのような機能を強化して【食べ物と人物】、さらには食べ物の種類や性別までも判別できるようになりました。さらに判別した被写体に、AIが自動で最適な画像補正を行ない、"映え"や"エモい"写真を誰でも簡単に撮影することが可能になったのです。
――最近は「消しゴムマジック」というテレビCMでおなじみの機能がありますが、これはAIがどのように活用されているのですか?
法林 消しゴムマジックは2021年に発売されたGoogleの「Pixel 6」シリーズから実装されました。人物写真の背景に写り込んだ"よけいなもの"を検出し、それを消したときの"空白部分"に背景を入れるためにAIが使われています。
つまり、画像生成AIの技術を活用しているのがGoogleの消しゴムマジックなのです。Googleは自社の検索ワードや画像のビッグデータを大量に持っており、それらをAIに活用することでこのようなことが可能となっています。
当初はPixelシリーズ限定の機能でしたが、5月からはiPhoneやPixel以外のAndroid端末も利用できるようになります。ただし、編集できるのは月10枚までと限定されており、それ以上は有料プランへの加入が必要です。
――これまで以上にスマホでAI機能を利用できるようになった理由とは?
法林 スマホ用のチップセットの進化です。特にAI機能を動作させるNPU(Neural network Processing Unit)が進化し、より高速なAIの処理がスマホ本体で可能になりました。また、各社のカメラ性能やゲームの処理速度の向上が頭打ちとなり、注目度の高いAI機能をウリにしているという側面もあります。
――そんな中、4月11日に国内発売されたのが、独自AIの「Galaxy AI」を搭載したサムスンの「Galaxy S24」シリーズ。これは、どんなAI機能を持つ端末なのでしょうか?
法林 画像や動画の生成AI機能がありつつ、さらに通話やメッセージアプリのテキストなどをリアルタイムで通訳できる機能を搭載したのが特徴です。
これまでのAI通訳は日本語に不自然な部分がありましたが、自然な日本語かつタイムラグもありません。翻訳専用端末のような利用ができ、海外のレストランを日本語で電話予約するといった使い方もできます。
このような機能はサムスンが自社で日本語のキーボードアプリをリリースするほど、長年にわたり日本語を積極的に研究してきた成果だといえるでしょう。また、LINEなどでカジュアルに入力した文章を敬語に変換することもできます。
例えば、【よろー→よろしくお願いします】といった変換なので、社会人が日常で活用できる機能です。
――そのほか、日常で活用できるAI機能は?
法林 やはり「かこって検索」です。ブラウザやSNSなどに表示された画像を指で囲み、そのまま検索できます。商品検索、グラビアで気になったアイドルを検索するといった用途に最適でしょう。
――ところで、iPhoneのAI事情はどうでしょう? Googleの生成AI「Gemini」を搭載するという海外の報道もあります。
法林 Appleの問題点としては、まずAIを運用するための自社クラウドを持っていないこと。そして、Appleは会社として「ユーザーの検索や画像などのビッグデータを利用しない」というポリシーがあり、AIの開発・運用共に出遅れていました。
それもあって、他社と協業をしてiPhoneにAI機能を実装するのが、最も現実的なのです。ただ、Apple製品は全体的に日本語環境に弱く、サムスンやGoogleのような快適な通訳や文字起こしをローンチ直後から提供するのは難しいでしょう。
今年は、5月にGoogleの新端末と新ツールの発表があり、6月にはAppleの開発者イベントも控えています。ここから、またスマホのAI機能競争がより過熱すると思います。
――ユーザーにとって最も身近なスマホのAI機能。GeminiのAIチャットなどは端末問わず利用できるので、ぜひお試しを!
ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。