直井裕太なおい・ゆうた
ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。
スマホやタブレット、ウエアラブル端末や各種サービスなどを競い合うようにリリース中のAppleとGoogle。日本では圧倒的なシェアを誇るiPhoneシリーズだが、そのシェアを本気で狙っているGoogleのスマホ販売戦略、そして両社製品&サービスのオトクな使い方も徹底解説します!
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スマホをはじめとする端末やアプリなどでライバル関係が続くAppleとGoogle。今月、Appleは新iPad、Googleは新スマホを発売。そんな両社の円安による価格変動の影響からオススメサービスまで、ITジャーナリストの法林岳之さんに解説してもらいます!
――まず、5月15日に発売された「iPad Pro」(11インチモデル・16万8800円から)はどうでしょうか?
法林 ゲーミングパソコン並みの処理速度を誇るスペックです。ただし、13インチモデルのiPad Pro(21万8800円から)をゲーミングパソコンのように運用しようとした場合、キーボードなどのオプションとストレージを増量すると価格は46万円以上。それなら、初めからゲーミングパソコンを買ったほうがコスパで優れています。
新モデルは動画のエンコードを出先で行ない、即配信するといった限られた用途で使用すべきモデルなんですね。iPad Proシリーズは、動画視聴やビジネス系のアプリの利用といった日常的に活用するモデルではありません。
――動画視聴やイラストを描く用途でもiPadシリーズは人気ですよね。
法林 そういった用途なら「iPad Air」(11インチモデル・9万8800円から)シリーズも新発売されました。しかし、実はこれでもオーバースペックなんです。私としては1万円値下げされた無印こと、「iPad」(5万8800円から)をオススメします。動画やゲーム用途はもちろん、イラストを描くにも十分な性能。私も使っていますが、ビジネス系のアプリも問題なく動作しますし、5万8800円ならノートパソコンと比較してもオトクです。
――新発表のiPadシリーズから、今年発売が予想される「iPhone 16」シリーズに反映されそうな部分はありますか?
法林 本体の価格に円安が大きく反映されるでしょう。16万8800円で販売されるiPad Proは、アメリカでの価格は999ドル。これは1ドル169円弱換算の為替レートになります。ここ数年、新型iPhoneのアメリカでの最安モデルは799ドルで固定されています。
今年もこの価格で販売されることになると、iPad Proの為替レートが反映された場合には、最安で13万5000円前後が予想されます。現在の最新モデルであるiPhone 15が最安で12万4800円ですから、iPhone 16は1万円のアップが濃厚でしょうね。
――そんな円安悲報が続く昨今、Googleは普及価格の新スマホを発売しました。
法林 「Google Pixel 8a」です。定価は7万2600円ですが、なんとGoogleの直販では実質1万9800円。これは現在利用中のiPhone SE(第3世代)をGoogleに下取りに出し、次回の買い物から利用できる2万円分のストアクレジットを含めたキャンペーンの実質価格になります。期間は5月21日までですが、Googleは頻繁にキャンペーンを行なうので、まだチャンスはあるでしょう。
さらにソフトバンクは発売と同時に"24円販売"をスタートしています。こちらは指定された端末購入プログラムへの加入などの条件がありますが、最新モデルがこの価格なのは素直にオトクです。
そして為替レート的にもGoogleは頑張っています。Google Pixel 8aのアメリカでの販売価格が499ドル。日本での7万2600円の価格は1ドル145円強の為替レートなので、むしろ安いぐらいです。
――この価格を見ると、Googleは日本国内のiPhoneのシェアを本気で狙っていると感じますけど?
法林 そうなりますね。現在、Pixelシリーズは北米と日本で人気の端末です。この地域を足がかりにEUと東南アジアのシェアを拡大していく販売戦略です。なので、日本では端末をできる限りサービス価格で提供しつつ、そのプロモーションにも気合いが入っています。
――確かに、テレビCMやYouTube広告にも頻繁にPixelシリーズが登場していますね。
法林 CMではPixelシリーズならではの写真加工や翻訳機能など、日常的に利用されることの多い機能が前面に紹介されています。これはGoogleが日本メーカーのプロモーションチームの主力だった人材を積極的に採用していることが大きい。本来、先進機能をわかりやすくユーザーに伝えるプロモーションはAppleが最も得意としていた手法。しかし、近年のAppleは"昨年モデルより処理速度が◯%アップ!""映画が撮れます!"というような数値や一般的な活用方法ではないプロモーションが多くなっている印象ですね。
――両社ともスマホやタブレットに採用されるチップセットは自社開発のものを使っています。両社の違いとは?
法林 AppleがiPhoneに採用するチップセットであるAシリーズは、3Dゲームや動画編集の用途で性能を発揮する処理速度を重視したモデル。なので、"昨年モデルより処理速度が◯%アップ!"といった表現が多くなります。
一方、Pixelシリーズが採用するTensor GシリーズはAI機能を制御する領域を強化したチップセット。両社共にチップセットを自社開発していますが、その用途や方向性はまったく違います。それはプロモーション活動にも表れていますね。
――AppleはiPad Proのプロモーション映像で楽器や絵画道具、カメラなどを破壊するクラッシュ動画で世界的な大炎上となりました。これは業界的にはどう見られたのでしょうか?
法林 ありえない!のひと言です。Appleはこういった炎上とは最もかけ離れた企業でしたから。
――その一方、Googleにも問題点があるとか?
法林 端末の価格です。これまでは「Android陣営でiPhoneのシェアを奪う!」と、メーカー各社が一丸となっていました。しかし、キャンペーンなどを含めたGoogleの販売価格が安すぎるため、他メーカーは価格面で太刀打ちできなくなってきたのです。これに関して、最近ではコスパ重視の中国メーカーからもグチがこぼれるほどです。
――その内紛はユーザー的には大歓迎です!
――近年はスマホ以上の稼ぎ頭となっているスマートウオッチやワイヤレスイヤホンの動向はどうでしょうか?
法林 iPhoneやiPad、そしてMacBookシリーズなどApple製品を利用しているなら、Apple WatchやAirPodsシリーズを選べば間違いありません。良くも悪くもAppleはユーザーを自社製品で囲い込みがちですが、その代わりどのデバイス間もストレスなく連携できます。唯一の欠点となるのは、やはり価格ですね(笑)。
逆にGoogleは自社のFitbitブランドから3万円以下の最新スマートバンドを販売しています。現在、スマートウオッチ市場は"入門用"の低価格モデルが販売戦略的に重要視されています。そういったモデルがApple製品にも求められています。また、Googleは直販でスマホを購入した場合、ストアクレジットが進呈されるので、それを活用すれば新モデルでも大幅な割引価格で購入できるのも魅力です。
――では、両社のエンタメサービスなどはどうですか?
法林 一般的にはYouTubeやYouTube Musicを有するGoogleが有利と思われますが、私がオススメしたいのは「Apple One」です。こちらは音楽・動画・ゲームのサブスク、さらに50GBのクラウドストレージも付帯するサブスクサービスとなります。それぞれ単体で加入した場合は計3010円となるサービスを、まとめて月1200円で提供しています。動画は映画やドラマ、オリジナル作品も豊富にラインナップされ、実はAndroidユーザーでも視聴できるのもポイントです。
――それこそ、Apple Oneと値下げされた無印iPadでかなり幸せになれそうですね。Googleのサービスはどうでしょうか?
法林 「Google One」(月250円から)というクラウドストレージをメインとしたサブスクがあり、こちらにAI機能を実装した有料サービスも開始されました。ビジネス系のサービスでも、こういったAI機能が利用できるようになります。ビジネス系のサービスは、ちょっとした作業なら無料版でも十分使えますし、Apple製品ユーザーでも利用できます。
――やはり、両社共に製品もサービスも優秀。ただし、円安に関しては、これまで以上の神対応でお願いします!
ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。