OpenAIは5月13日、新モデルAI「GPT-4o」を公開。有料サブスクに入らなくても回数制限付きで利用することができる OpenAIは5月13日、新モデルAI「GPT-4o」を公開。有料サブスクに入らなくても回数制限付きで利用することができる
あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「GPT-4o」について。

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ひろゆきさんの名言でもっとも笑ったのは「人口の半分は偏差値50以下」だった。ほんとうに身も蓋(ふた)もない(笑)。人類全体が進化しても、正規分布に従う限り、人口の半分が定義上は「バカ」だ。いっぽうで天才は確率論で生じ、一定数が生まれる。たとえば東京大学理科三類に受かるような人だろう。私はこれまで理三出身者と3人しか出会ったことがない。ものすごく頭が良い。でも「わ! 私の10倍は頭が良いね」とわかるわけではない。対話していて、滑舌が10倍速いわけではない。

そもそも、私がその頭の良さ10倍分を判別できるか不明だ。本来は100倍頭が良くても、1.1倍くらいの頭の良さだとしか感じられないかもしれない。つまり、相手の知性を理解できるか。哲学的難題だ。

先日、OpenAI社がChatGPTの最新サービスを公開した。名前は「GPT-4o(フォーオー)」。世間の予想ではまったく新しい「GPT-5」を発表するのではないか、と思われていた。ただ、このGPT-4o(oはオムニ=「すべての」の意味)もかなりすごくて私は興奮している。

GPT-4に比べて反応が圧倒的に速い。スマホアプリで音声を介した会話がスムーズ。しかもフランクな反応で、笑ってしまうほどだ。あくまでイメージだが、問題が起きたとき、以前のGPT-4であれば問題解決案を教えてくれた。GPT-4oは、問題が再発しないための予防策までも教えてくれる。ネットの反応を見ると、4oは「ちょっとしか違わない」とするものもある。しかし、冒頭の知能認識の問題を振り返って考えれば、「ちょっと違う」と認識できるということは相当に進化したはずだ。

当連載でも以前に予想した通り、英会話教室や通訳は相当なダメージを受けるだろう。専門知識がある英会話教師はほとんどいないが、ChatGPTは気軽に専門的な会話を楽しませてくれる。発音のアドバイスもくれる。さらに英語だけでなく、「日本語で話すからスペイン語に変換して」といった多言語間での通訳も楽々とこなす。現時点では使用回数の制約があるものの、なくなれば旅行者にも相当なインパクトだろう。

また、日本語話者で他言語を話せない優秀な社員も活躍の場が広がるに違いない。ぜひ新作GPT-4oをテストしてもらいたい。数億円クラスの商談ならおそらく今後も通訳を使うだろうが、フランクな意思疎通はGPTに代替されるはずだ。

ところで、端的な質問をしてみた。「週刊プレイボーイで連載しています。この雑誌が爆売れするための方法を一言でお願いします」。たぶん編集長は「余計なお世話だろ」と怒るはずだ。すみません。あくまで参考までに結果を紹介する。「話題性抜群の独占スクープを連発!」(GPT-4o)、「革新的なデジタル展開」(GPT-4)、「読者の興味を引く斬新なコンテンツ」(GPT-3.5)。私は爆笑した。わあ、週プレじゃないけど『集英社オンライン』の施策はGPT-4oの提案通りじゃないか。

以前、これからの起業は一人で行ない、他はChatGPTに任せるべきと論じる人がいた。極論だと思った。しかし間違っていたのは私だった。必要なのはAIに業務を任せる勇気だ。ワープロが出た当時も、「直筆じゃないと真の文学じゃない」と真面目に語る文豪がいたらしいからね。

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坂口孝則

坂口孝則Takanori SAKAGUCHI

調達・購買コンサルタント。電機メーカー、自動車メーカー勤務を経て、製造業を中心としたコンサルティングを行なう。あらゆる分野で顕在化する「買い負け」という新たな経済問題を現場目線で描いた最新刊『買い負ける日本』(幻冬舎新書)が発売中!

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