先行する他社との違いや注目の機能とは? 先行する他社との違いや注目の機能とは?

6月11日にAppleは同社初となる生成AI「Apple Intelligence」を新OSの発表イベントで世界初公開! 生成AIで先行するGoogleやマイクロソフトとの違い、Apple Intelligenceの優れている部分やiPhoneでの利用のされ方など、AppleのAI戦略を徹底解説です!

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■Appleの生成AIの特徴とは?

6月11日、Appleは同社端末の新OSを発表する開発者イベント「WWDC 24」で、独自開発となる生成AI「Apple Intelligence(以下、アップルインテリジェンス)」を発表。Googleやサムスンなどが先行して生成AIを端末に実装する中、今秋からiPhoneやiPadシリーズにも実装されるアップルインテリジェンス。

Appleならではの便利機能、そしてどういった用途で使うのが正解なのかをITジャーナリストの法林岳之さんに解説してもらいます!

――アップルインテリジェンスとは、どのような生成AIなのでしょうか?

法林 まず、Appleが強調しているのは、〝プライバシー重視〟であること。一般的な生成AIはユーザーが頻繁に検索した内容、そして閲覧した画像や動画などのデータがクラウドに送信され、そのデータを活用して各種生成を行ないます。

一方、アップルインテリジェンスはデータをクラウドに送信することなく、iPhoneやiPadシリーズの端末内で完結させるオンデバイスの生成AIとなっているのが特徴です。

――アップルインテリジェンスの気になる機能とは?

法林 まずはテキストの生成機能です。例えば、ビジネスで送信するメールを、カジュアルな文体で書いてもそれを校正して仕上げてくれます。また、長い文章の要約、文章から表の生成、その逆にも対応します。

そして、画像や動画の生成も行なえます。これもテキストで【クルマ レース】といった簡単な指示で生成することが可能。メッセージで利用できるイラスト、写真や動画をショート動画のストーリーとして生成するなど、テキスト入力から簡単にできる仕様となっています。

ただ、これらの日本語対応は2025年以降のスケジュールであることが発表されました。これまでのApple製品の日本語化対応におけるスケジュール感を考えると、25年のWWDCが開催される6月から新型iPhoneが発売される9月になる可能性があります。

――そんな中、SNSでは敬虔なApple信者さんと思われる方々以外は冷めた反応が多め。これにはどういった理由が考えられますか?

法林 大手スマホメーカーやマイクロソフトの生成AI機能の〝後追い〟を感じるのが、最大の理由でしょう。

特にAndroidやWindowsユーザーは、誰でも簡単に扱える生成AI環境がすでに整っており、それらはOpenAIのChatGPTシリーズを利用するよりもずっとハードルが低いのです。なので、SNSでは「その機能、もう使ってますけど」という内容の投稿が多くなりました。

それこそ、Googleのスマホ、Pixelシリーズは約3年前から画像編集、音声の文字起こし、翻訳やテキスト要約など、スマホ内で生成AI機能をストレスなく利用できる環境になっていますし、ほかのメーカーもそれに追随している状況なのです。

――では、法林さん的にアップルインテリジェンスで気になった機能とは?

法林 例えば、航空券の予約完了メールが届いたとします。普通なら、フライトの発着時間をカレンダーアプリにコピペしてスケジュール管理を行なうでしょう。

アップルインテリジェンスの場合は、こういった作業を自分で行なう必要がなく、AIがメールの内容を判断してカレンダーにスケジュールを組んでくれます。それこそ、飛行機の発着時間からそれに見合ったホテルやレストランも提案してくれる。

ライバルメーカーはこういった機能の開発をまだ進めておらず、アップルインテリジェンスならではの日常で便利な機能といえるでしょう。ただし、これはAppleが提供するアプリを利用した場合の機能なのです。

――それは、どういったことなのでしょうか?

法林 Apple製品は、iPhoneやiPad、パソコンであるMacシリーズやApple Watchなどのウエアラブル端末、そしてApple製のアプリなど同社製品間の連携は完璧です。

しかし、そこに他社製品やアプリが加わると、格段に使い勝手が落ちます。そもそも現在、iPhoneユーザーであっても、GoogleカレンダーやGmailを利用する人のほうが多いですよね。

――でも、それは他社の製品やアプリがアップルインテリジェンスに対応すれば問題ないのでは?

法林 しかし、アップルインテリジェンスは〝プライバシー重視〟という仕様です。例えば、Gmailはクラウド上でメールを送受信しているので、現状でのApple側の判断だとオンデバイスであるアップルインテリジェンスに組み込むことは〝不可〟となります。

これだと企業がアップルインテリジェンスを活用して、なんらかのサービスや社内システムを構築するのも難しくなってしまうのです。

――その一方で、これまでのAppleの音声AIであるSiriと、ChatGPTシリーズとの連携も発表されました。これは、どういった仕組みになるのでしょうか?

法林 例えば、Siriに【大谷選手の得点圏打率を表にして】と指示して、それをSiriが実行できない場合、ChatGPTを使って解決するというシステムです。

この場合、ユーザーがプライバシーに関わる情報の送信を承認した上で、ChatGPTが起動するシステムになっています。つまり、端末内で処理するオンデバイスでなく、外部に作業を委託するシステムになっているのです。私としてはこのシステムに関しては、Appleの判断が正しいと思っています。

――その理由とは?

法林 システム的に〝ChatGPT〟の部分は、ほかの生成AIに切り替えることも可能です。例えば、中国ではChatGPTだけでなくGoogleの生成AIも法的に利用不可。こういった地域では、ChatGPTに代わりアリババやバイドゥといった中国企業の生成AIに接続することもできます。

これはAppleのビジネス的にメリットが大きい。なので、汎用性の高いSiriとの連携は、生成AIの分野で出遅れているAppleだからこそ、今後はより重要になるシステムといえるでしょう。

――では、今年の新型iPhoneと同時に登場予定のiOS18の注目機能は?

法林 新しいメッセージアプリです。これは電話番号を使ってメッセージの送受信を行なうSMSになりますが、実はAppleのメッセージアプリはかなり古いシステムだったのです。

iOS18からは世界標準規格のRCSを採用し、これにより字数制限なし、グループチャット、画像添付など、iPhone間だけでなくAndroidとも行なえるようになります。

iPhoneユーザーの多い日本で新しいメッセージアプリの利用者が拡大すれば、行政や企業もLINEから切り替えることも考えられます。LINEは近年不祥事が多く、セキュリティ面で不安が大きい。

一方、RCSはセキュリティが強く、LINEのように公式アカウントの開設、音声通話やビデオ通話にも対応しています。そして、RCSは生成AIとの相性が良く、今後はApple独自のサービスにも期待できます。

――ただ、アップルインテリジェンスがいつ日本語に対応するのかは未定......。これが残念すぎです!

■日常で活用できる! Apple Intelligenceの注目機能

●文章表作成などでAIが大活躍!

Appleのメール、メモ、ワープロアプリのPages内の文章を要約、書き直し、校正を行なえるAI機能を実装。書き直しや校正は、編集する候補をAIが提示し、自分のスタイルに合った文章に仕上げることが可能。

文章から表を生成、その逆も行なえる。一般的なユーザーが最も利用頻度の高い機能だが、Appleならではの問題点も!?

●画像や動画からストーリーを自動生成!

例えば、【犬の散歩】とテキスト入力すれば、端末内のそれに関連する画像と動画でショート動画のストーリーを自動生成し、動画内のBGMも選曲してくれる。また、写真や動画の検索もテキスト入力で行なえ、【女性の水着写真】と入力すれば関連する画像や動画を自動で選別してくれる。

●メッセージの注目AI機能「Genmoji」

写真や文章からオリジナル絵文字をAIが生成する新機能「Genmoji」。指定した画像や動画から絵文字を生成するだけでなく、例えば【野球のユニフォーム 猫】とテキストを入力することでもオリジナルの絵文字を生成することが可能だ。

生成した絵文字は、世界標準規格のRCSが採用され、多機能化するiOS18の新メッセージアプリで利用することができる。

●イラストもAIで生成できます!

写真は、Apple Pencilを使用してiPadにサクッと描いたイラストを、AIがかっちり清書を行なった状態。メモやメッセージで使用する画像も簡単かつ、数秒で仕上げることができる。対応するApple製品のユーザーなら、誰でも安心安全に扱えるのも、端末のみで動作するオンデバイスの生成AIであるApple Intelligenceの特徴となっている。

●Apple Intelligenceが対応するiPhoneは15 Proシリーズだけ!

Mac、iPad Proシリーズが搭載するチップセットである「M」シリーズは、2020年に登場したM1チップセットからApple Intelligenceに対応。

一方、iPhoneシリーズは、2023年登場の最新のモバイルチップセット「A17 Pro」を搭載する15 Proシリーズだけが対応。Apple Intelligenceを快適かつ、プライバシー重視で安全に動作させるには、パワフルなチップセットとメモリ容量が超重要です!

●SiriとChatGPTはどんな関係なの?

iOS18からSiriとChatGPTとの連携が可能に! Siriでは賄えない生成作業はChatGPTが担当することになる。メニューから【ChatGPT】を選択すれば、ChatGPTにその作業を丸投げすることが可能。実は、この連携こそAppleの生成AIの重要ポイントだったりするんです!

●Siriの"トーク力"が大幅パワーアップ!

Siriに指示を出す場合は、滑舌をしっかりしないと微妙な反応が多め。そして、Siriのしゃべる日本語もクセが強め。今回のアップデートでは、そんなSiriの話者としての能力を大強化。そして、Siriから各種アプリへの連携も強化され、よりApple製品のユーザーにとって便利な環境が構築される。

●RCSに対応した新メッセージ機能

(左)RCSの採用でグループチャットにも対応。(中)送信する文章に各種エフェクトを入れることもできるように! (右)キャリアの通信やWi-Fiがつながらない場所でも、衛星回線を利用したメッセージの送受信が可能。ただし、現時点では衛星通信機能は日本非対応。これは残念すぎ!

●通話の録音、さらに要約もOK!

実は、これまでiPhoneシリーズでの通話録音は、プライバシーを重視した観点から不可。今回のアップデートでは通話録音が可能になり、それを自動でテキスト化、さらに文書の要約も行なえる神仕様として登場。ただし、こちらも日本語対応の時期は未定となっている。

●アイコンのデザインを刷新!

アイコンに新デザインが導入されて、ホーム画面のカスタマイズ性もアップ。アイコンやウィジェットは、これまでのように自動で詰めて表示するのではなく、好きな場所に配置することも可能になる。このようなデザイン面も、AndroidユーザーがAppleの後追いを感じている部分だ。

直井裕太

直井裕太なおい・ゆうた

ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。

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