「朝4時に『出演、お願いします!』って連絡が来たら断るのが普通だと思います。でも、私はテレビやラジオが大好きだし、制作会社に勤務していたこともあるので、『はい、喜んで!』と出演しています」と語る三上洋さん 「朝4時に『出演、お願いします!』って連絡が来たら断るのが普通だと思います。でも、私はテレビやラジオが大好きだし、制作会社に勤務していたこともあるので、『はい、喜んで!』と出演しています」と語る三上洋さん

大企業や行政へのサイバー攻撃からマイナンバーカードのトラブルまで。IT界隈のトピックスがあれば、連日メディアに登場。そんな、三上洋さんの新刊『深掘り! IT時事ニュース――読み方・基本が面白いほどよくわかる本』はイラストが多く、最新のIT用語からそのシステム概要までわかりやすく解説しているのが特徴。

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――ただ、これが三上さんにとって"28年ぶりの単著"というのも驚きです。

三上 文章を書くのが面倒くさいんですよ(笑)。当初は担当編集さんから「半年で仕上げましょう!」と言われたのに、完成まで4年もかかるという......

IT関連の話は4年前と現在では、ガラッとその内容が変化していることも多く、始めに作っていた部分はほぼ書き直しになりました。

これでも私、高校時代からライターをやってたんですよ。当時からラジオや無線、映像機器が趣味なので、専門誌で記事を書いてました。

でも、大学卒業後にテレビの制作会社に就職したんです。文章を書くよりテレビやラジオといった放送メディアが好きだし、ずっと憧れでしたから。

――憧れだったテレビマンの仕事は?

三上 朝の3時に退勤して、3時5分には出社のタイムカードを押す生活です(笑)。"ADは蹴って育てる!"という時代でしたから、それもキツすぎて2年で辞めてしまいました。

それから、30歳ぐらいまでずっと無職。31歳になって高校時代の仲間に誘われ、フリーライターとして働くようになりました。

――ライターとしてはどういった仕事を?

三上 ちょうどインターネットが普及し始めた時期で、「インターネットで◯◯△△するのは危険!」「◯◯のファイルは△△を使うと入手できるが、使うと危険!」と、インターネットの"危ない部分"を紹介するような記事を作っていました。

――この仕事で現在の三上さんスタイルが確立されたのですね。

三上 そんなんじゃないんです。注意喚起という体でインターネット上のグレーな部分を紹介する雑誌のライターでしたから。それこそアダルト要素も強く「モザイク除去ソフト完全ガイド」みたいなのもやってたので、今だとアウトでしょうね。ただ、この時期にWindows95の導入に関するマニアックな単著も出版しました。

――ほかにはどんな仕事をしていたのですか?

三上 実は、編集部が丸ごと潰れちゃったんですよ。その雑誌はソフトバンクから出版されていたんですけど、編集長が孫正義さんに呼び出され、戻ってきたら「作業、やめていいよ。雑誌なくなるから」と。

――1990年代後半といえばパソコン関連雑誌の黄金期だったのでは?

三上 インターネットが一般的にも認知され、そのグレーな部分も知られるようになったのが90年代後半なんです。ソフトバンクも会社としてより大きくなるためには、こういったグレーでアダルトな要素の強い雑誌は不要だったんでしょうね。

ちなみに、この当時の私が作っていた記事が発掘されたら大炎上すると思いますよ(笑)。現在では超大手な会社も、当時は牧歌的な雰囲気だったんですよね。

――また無職となってしまった三上さんは、どんな生活を?

三上 すぐに雑誌時代の同僚から新しい仕事を紹介されました。そこでは「これからはウイルス対策が必須!」といった感じで、コンピューターウイルスの危険性、その対策を記事にしていました。

ただ、その雑誌もすぐ廃刊し、その後に読売新聞オンラインで『サイバー護身術』というネットセキュリティに関する連載を担当したんです。それで気づいたら"ネットセキュリティに強い三上洋"ってなっちゃった。これまでアングラなことばっかやってたのにね(笑)。

――三上さんがメディアに出るようになったきっかけは?

三上 セキュリティの連載を始め、肩書を「ITジャーナリスト」にしてからですね。それまで、ITジャーナリストは津田大介さんが使ってたんですが、ある時期からそれがなくなり、「空いてるじゃん!」と私もITジャーナリストと名乗るようになりました。

それよりも私の場合は、SNSに自分の電話番号を表示していますから、頼みやすいんでしょうね(笑)。

メディアに出るようになった当初は「◯◯さんが捕まらないので、その控えでお願いします!」という代打でした。そんな電話が朝の4時にかかってくるし、普通ならキレてもいい話ですけど。

制作会社でADの経験があるから電話してきたADさんの切羽詰まった状況も十分に知っています。何よりテレビが大好きなので断る理由がないんですよね。

――三上さんがメディア出演で必ず行なうことはありますか?

三上 とにかく、番組内で物事を簡単に説明でき、パネル制作にも使えるようにディレクターさんにメモを送ります。例えば、マイナンバーカードのトラブルなら、その経緯から問題点、そして解決策をまとめたメモなどですね。

テレビやラジオの生放送番組のほとんどは、IT専門のディレクターがいません。なので、どんな人間が読んでも即理解できるメモにしています。

実は、このメモを重宝してくれるディレクターさんたちから「三上さん、これ本にすればいいじゃん!」と言われたのが、本書出版のきっかけでもあります。

――現在、日本では地震や台風など自然災害が頻発中。こういった状況で最新のIT技術はどう役立つと思いますか?

三上 2011年の東日本大震災では、当時ブームだったライブ動画配信「Ustream」が大きな力になりました。実はこのとき、ある中学生がテレビの生放送を勝手にスマホでライブ中継し、テレビがない人に情報を伝えていました。

当然違法なのですがUstreamの運営側が緊急事態であることから黙認し、その後に各テレビ局に根回しをして「公式のテレビ・ネット同時配信」を実現させたのです。

人命に関わる緊急事態であれば、ネットとメディアは柔軟に対応できることを証明したといえます。このフットワークの軽さと柔軟性が、災害大国の日本で重要なことだと思います。

――最後に今後、チャレンジしたい仕事などは?

三上 実は私、コンサートに行くほど乃木坂46のファンでして、それに関するコメント取材も、お待ちしています(笑)。ノーギャラで構いません!

■三上 洋(みかみ・よう) 
1965年生まれ、東京都出身。ITジャーナリスト。早朝からラジオ、テレビ、さらにはネットまで帯番組を横断してIT関連の事件や生成AIからマイナンバーカードまで解説している。高校生のときからライターとしてラジオや無線などの専門誌で記事を制作し、大学卒業後にそのまま出版業界に就職するかと思いきや、テレビ制作会社に勤務することに

■『深掘り! IT時事ニュース――読み方・基本が面白いほどよくわかる本』 技術評論社 1870円(税込) 
近年、急成長する生成AIの技術とその問題点。SNSが炎上する仕組み、各種サイバー犯罪の最新手口。わかっているつもりで使っているIT用語などなど。テレビの解説者としておなじみの三上洋さんが、イラスト多めにわかりやすく解説。パソコン専門書籍の老舗である技術評論社から出版された28年ぶりとなる単独著書が登場! IT時事のニュースの読み方を知りたい人、IT時事のニュースについていけないと感じている人にオススメの一冊

『深掘り! IT時事ニュース――読み方・基本が面白いほどよくわかる本』 技術評論社 1870円(税込) 『深掘り! IT時事ニュース――読み方・基本が面白いほどよくわかる本』 技術評論社 1870円(税込)

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直井裕太

直井裕太なおい・ゆうた

ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。

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