皆さんはTikTokやYouTubeショートといった「ショート動画」をどれくらい知っているだろうか? 曲に合わせて踊るやつ、どこかの映像を切り抜いたもの。おじさん世代はそれぐらいの認知度かもしれない。だが現在、ショート動画の注目度はうなぎのぼり。名だたる企業や自治体がプロモーションツールとして活用するケースが増えている。
そんなショート動画を理解するため、TikTokは600万、YouTubeは1200万という驚異的なフォロワー数をかかえる「マツダ家の日常」のメインキャラクターであり、現在はTikTokコンサルティング会社「M2DK」のフロントマンとしても活躍するインフルエンサーの関ミナティ氏に話を聞いた。
■最初はキャンプ場でやった関暁夫のモノマネから
――まず見た目のインパクトがすごいですが、いつからこんな感じなんですか?
関 最初はただの金髪だったんですよ。そもそも顔出しをしたくなかったんですけど、ショート動画をやるうえでキャラも覚えてもらわなきゃってことで仕方なく......。でも素顔は嫌なのでサングラスだけはかけようと。
――金髪から現在のスタイルになったのは?
関 当時、YouTubeといえばヒカキンさんみたいな人がTikTokにはいなくて、そこを狙っていこうかなと。この髪の青とピンクってTikTokのアイコンの色なんですよ。
――そういうことなんですね。関さんはどんな子供時代を過ごしてきたんですか?
関 普通に友達とも遊んでいましたけど、1番好きなのは、部屋でひとり、フィギュアで遊ぶことで、高校卒業までやってました。GIジョー、トランスフォーマー、戦隊モノ、スパイダーマン、ペプシマン、色んなものを持ってましたね。
――友達を招いてそのコレクションを見せたり。
関 絶対に見せませんでした。その年でフィギュアで遊んでるって思われるのが恥ずかしすぎて。バレないところに隠して、外では普通に野球をやってましたね。
――フィギュアのどこがそんなに楽しかったんですか?
関 鑑賞するというより、オリジナルのストーリーを作って、動かして遊ぶみたいな。変なポーズをさせたいので、関節が動くものを好んで集めていました(笑)。
――ストーリーはどうやって考えるんですか?
関 よく映画を見てましたね。いいなと思ったシーンを思い浮かべながらフィギュアを動かして。こんな角度の画が欲しいなとか、そこに新たなフィギュアを加えて、違ったストーリーにしたり。色んな要素をかけ合わせると無限に楽しめるんですよ。それが今やってることに繋がる部分もあると思います。
――TikTokを始めたのはどういうきっかけなんですか?
関 友達と3人でキャンプをしてたんですけど、酔った勢いで僕が関(暁夫)さんのモノマネをしたら、めちゃめちゃウケたんですよ。ひとりが「これは絶対TikTokに投稿すべきや!」って言い出して。でも正直これは身内だし、深夜ノリだからって。
――まあそうですよね。
関 でもそいつが「絶対に出したい!」って言い出して。普段はそんなこと言わないんですけど、あまりに言うから、やろうかって。
投稿するんだったら、やっぱりバズらせたいなと。でも関さんのモノマネだけじゃダメだろうなって。その時、グルメがすごいトレンドになってたんですよ。こんなカツ丼がありますとか、ものすごい美味しいラーメンを紹介とか。
どれも面白いんですけど、自分が興奮する時とそうでない時があるのに気づいて。考えたんですけど、次の日に行ける店が出てくると興奮するんですよ。
――近所にあるってことですかね。
関 沖縄の店とか、すごく美味しそうなんですけど、テンションがあがらないんです。でも渋谷だとあがる。この感覚はみんな一緒だろう思って。次の日に行ける店だったら、全国民テンションが上がるなと。そう思って選んだのがコンビニでした。
コンビニの美味しそうな商品を関さんのモノマネで都市伝説風に紹介するっていうのをやればいけるかもと考えたんですよ。
――あの有名な「ロスチャイルドファミリーマート」ですね。
関 1本目ですぐに100万再生を超えて、2本目もめちゃめちゃバズって。これはすごいことが起きてるなって。そして、これは世間が気づいてないなと思ったんですよ。TikTokって、すごい需要があるのに、本気でやってる人がいなかった。それで3人とも仕事を辞めて、これ1本に絞ろうって決めました。
――でもTikTok自体は当初、ほとんど収益が得られなかったし、生活できないですよね。
関 でもこれだけ反響があるから、全部の力を注いでやり切ったら、絶対何かしら生まれるだろうって感じたんです。Amazonを作ったジェフ・ベゾスさんや、ホリエモンさんとかが、インターネットが出てきた時に、こんなすごいのに何でみんなやらないんだろうと思ったと聞いたことがあって。ショート動画も完全にその状態になってると思ったんです。
――これでいけそうだなと思ったのはどれぐらい経ってからですか?
関 でも3、4、5本目とやっていって、全く疲弊せず、めっちゃ楽しみながらやれたんで、いけるなって思いました。その流れでラップ動画がバズって、キャラも浸透して、そこからは自動運転で進んでいくみたいな。
――人気になって、ようやくお金を稼げるように。
関 でもその時はずっと案件を断っていたんですよ。そっちに行かない方が良さそうだなって感覚があって。広告って単純に再生数が減っちゃうんです。広告を断ったことによって、ずっとすごい再生数が出続けて。結果として、この人たち何でこんなにバズってんのって状態になりました。
――同業者からも注目を集めていくという。
関 その理由をライブ配信で話したんですよ。質問も受け付けて、そこでアドバイスしたところが結果を出したり。そうやってるうちに、これって仕事になるんじゃないかと始まったのが、今やってるショート動画のマーケティングとかコンサルとか運用代行なんです。
――でも、そういう大事なノウハウって秘密にしたくないですか?
関 いや、ショート動画が盛り上がれば盛り上がるほどいいので。ひとりでも多くの人に成功してほしいって、その時から思ってました。
――ショート動画マーケティングの会社として、トップランナーになっていったのはなぜだと思いますか?
関 めっちゃシンプルで、みんなショート動画がめちゃくちゃ好きなんです。儲かるからとかで始まってない。楽しいことをしてるだけなんです。なので、寝ずに頑張ろうとか、ここで歯を食いしばってとかいう感覚が1ミリもない。歯を食いしばってる時点でエラーが起きてるというか、それは続けられないと思うんですよ。
――楽しくやることが結果につながるという。
関 あと自分たちがどうこうってより、依頼する側の魅力ってめっちゃあるんですよ。それに気付いてなかったりするので、その素材をいい感じに、いかに多くの人に見せれるかってやってるのが僕らって感じです。
■中国ではお金と才能がショート動画に集まっています
関 動画の空気とか、クリエイターさんが目指してるものとか、そこに投稿されてるものとかが、今までの動画プラットフォームとは全く違うんです。何よりも、おすすめに出てくるものがすごい。
――どういうことでしょう。
関 例えば料理とワンちゃんと野球が好きで見てたとするじゃないですか。その3つのカテゴリーがたくさん出てくるかというと、そうではなくて。この3つを見たってことは、アラスカの氷山も好きですよねって出てくる。
――何でそうなるんですか?
関 これとこれに興味を示した人はこういうのも好きだったって、ビッグデータがあるんですよ。それで自分でも気付いてない興味ありそうなものが出てくる。無意識に焼きそばの画面を見ていたら、それがデータとして蓄積されて、焼きそばの作り方とか、おいしい焼きそばの映像が出てきたり。そこがショート動画の1番革命的な部分なんです。
――ショート動画じゃないとそれはできない?
関 アルゴリズムとしては可能なんですけど、ショートのほうが同じ時間でたくさんその人のデータを集められます。それと簡単に投稿できるから、動画の数も多くて、それだけその人の好みにマッチする動画を出せる可能性が高くなります。
――すごい時代が来てたんですね。ショート動画は今後どういった方向に向かっていくんですか?
関 基本的にはほとんどショート動画で見る方向になると思います。なぜかというと、AIによって面白い作品がとんでもない量作れるようになるんですよ。そうなると、自分で検索して、再生して、見続けるかどうか決めるって行為をやらなくなる。
――選びきれないから、ある程度絞ってほしいと。
関 最近はショート動画というプラットフォームに長い動画も出てきます。TikTokでは60分の動画を出せるんですよ。
――何のためにですか?
関 長いものを好む人もいるからです。その人に合わせておすすめされたものだから、めちゃめちゃ面白い内容だし。
――楽しくて、何時間でも見れちゃうってやつですね。
関 TikTokのもとになった中国の抖音(ドウイン)をよく見るんですけど、そこはもうTikTokの2年後、3年後って感じです。長い動画もばんばん出てきますし、レベルがめちゃめちゃ高いんです。そこで成功すると何十億円とか、とんでもない額を稼げちゃうから、才能がむちゃくちゃ集まっています。
今までテレビや映画でスターになって稼ぐみたいな考えを持ってた人が、自分で全部やっちゃえばいいんじゃないって。その流れはTikTokでも間違いなく起こると思いますね。
――たくさんの人が見てるわけですもんね。
関 広告もどんどん集まってきています。ショート動画のすごさって、ターゲティング能力の高さでもあるんです。おすすめの動画を出すように、広告もピンポイントで流すことができる。ブランド広告みたいなものは今と同じように色んなところに出すでしょうけど、ターゲットに届ける広告はショートに流れるんだろうなと。
日本である商品のシェアを1%あげるためにどれだけ予算がかかるか調べたら、ショート動画はテレビよりもはるかに少ない金額でできたんですね。僕らからすると当たり前というか。今、日本のショート動画の広告費ってすごく安いんですけど、効果があることは実証されているので、これから一気に上がると思っています。
――ショート動画って、短い動画って理解しかなかったんですけど、それぞれの人に合ったおすすめを紹介する、ソムリエのようなプラットフォームというか。最後に改めてショート動画の魅力をお聞きしたいのですが。
関 例えばテレビだと、こういう番組をやりますっていうのが決まっていて、それを見るか判断するって感じだと思うんですけど、ショート動画は、あなただけのプレイリストが出来上がっていく感じなんですね。
最初は深く考えず、面白くないと思ったら飛ばして、5分ぐらい見てたら、絶対にひとつは興味のあるものが出てきます。別にいいねとか押さなくても、長い時間見たってデータも反映されるので、気付いたら、最近面白いものばかりって状態に絶対になります。
YouTubeショート、TikTok、Instagramのリールとか、仕組みは基本的に一緒です。あなた専属の執事さんが動画を厳選して持ってきてくれるって感じですね。
――好きなものがとことん見れちゃう。
関 でもこれが良く出来てるのは、好きなものだけ見てても、人って飽きるじゃないですか。なので、ちなみにこんなのどうですかっていうのを、絶妙なタイミングで出してくるんですよ。もう無限に広がっていきます。面白いので、ぜひショート動画を一度は試してほしいですね。
●関ミナティ(せきみなてぃ)