愛しき将棋界の番長・香川愛生さん

藤井聡太六段の活躍でにわかに沸く将棋界を筆頭にここ数年、「おじさんたちの趣味」だと思われがちだった将棋・囲碁・麻雀の分野に美人棋士が続々登場。

女流棋士・竹俣 紅囲碁界から期待の新人・木本有香“雀怒(ジャンヌ)ダルク”と力強い愛称で注目される女流プロ雀士・中山百合子に続き、最後に紹介するのは女流将棋界トップの人気と実力を兼ね備えた香川愛生(まなお、25)、女流三段だ。

* * *

―まずは将棋との出会いから教えてください。

香川 小学校3年の時、休み時間に男の子たちに混ぜてもらったのが最初です。ルールも知らないから負けちゃって。それがとても悔しくて心に火が着きました(笑)。すぐ近所の将棋好きが集まる会に行くようになって、夏休みは将棋会館にも通うようになりました。

―プロになろうとしたのは?

香川 小学校6年の時、「女流アマ名人」というアマチュアの女流の全国大会で優勝したんです。他の大会でも成績がよかったのでプロを目指すようになり、中学校2年で育成会に入会して。それから1年半、女性同士で戦って女流2級でプロになりました。

―では、プロの女流棋士として覚悟を決めたのは?

香川 大学を受験してからですね。プロ入りした直後…高校生の時は本当に勝てなかったんです。で、将棋を勉強し直そうと思い、奨励会に入るんですけど思うようにいかず、休場してそのまま女流棋士を引退しようとも思って。でも将棋の強豪校、立命館大学に入学して大学の対抗戦で優勝を目指し、ひたむきに戦う将棋部のメンバーたちの姿を見て、自分もやるぞと強く思ったんです。

―順風満帆に思っていたのですが、一時期はそこまで考えていたとは意外です。

香川 アマチュア時代はともかく、プロになってからは傷だらけです。魂を込めて何時間も戦いますから。それで負けたら…。大学2年で女流王将のタイトルを初獲得し、2年間保持。女流三段にもなれたんですけどタイトルを失った時のことは今でも鮮明に覚えていますし、夢にも出てきます。

―そこまで!

香川 致命的な悪手を指してしまったんですけど、その瞬間、全身から血の気が引いて、生きた心地のしない、死ぬ時ってこんな気持ちなのかなってくらい絶望的な気持ちになりましたから。でも傷を痛がってばかりじゃ何も生まれないですし、戦うことでしかどうにもなりませんから。

―香川さんが思う将棋の魅力は?

香川 将棋は運の要素がほとんどないので、実力で勝てるところですね。頑張った分がそのまま出るだけに喜びが大きいというか。あとは81マスの盤の上で様々な局面があって、いろんな思いを張り巡らせることができる。そんな知的好奇心を誘ってくれるところが魅力かなと思います。

―なるほど。少し話題を変えますが、その愛らしいルックスから将棋界のまゆゆ(渡辺麻友)と呼ばれることもあるそうですね。

香川 あははは。もうそんな風に呼んでもらえないですよ(笑)。今はすっかり番長ですね。

スカートが思ったより短くて…

―ば、番長…!?

香川 小学生の時に将棋の先輩が、負けず嫌いで攻める気満々の私をそう呼んでたんですけど、それをコラムに書いたら、ニコニコ生放送のあだ名アンケートでつけられちゃって。芸人さんじゃないし、そう呼ばれると恥ずかしいけど、でも実は血がたぎります(笑)。

―ファンの方は香川さんをわかってますね(笑)。それと、是非伺いたかったのですが、ネットで調べたら香川さんには「スカートまくり上げ戦法」というのがあるとか。以前、NHK杯で対局した時、ミニスカートをはいて相手を翻弄したそうですね。

香川 NHK杯に出られる女流は年にひとりで、出場が決まった時、お祝いに知人から洋服をプレゼントされたんです。で、せっかくなのでと着ていったら、スカートが思ったより短くて(苦笑)。結局、将棋に負けてしまったし、悪目立ちもしちゃったんで、あの時のことは反省してますね。

―これ、聞いたらまずかったですか?

香川 いえ、誰も取材で聞いてくれないし、ちゃんとお話ししたかったんで。是非書いてください(笑)。

―わかりました(笑)。ちなみに、趣味なんてあります?

香川 今は映画を観ることですね。視野が広がるし、今年は年間100本と決めてて、3月は映画館で17本観ました。

―100本とはすごい熱の入れようですね!

香川 100本もいけば、映画を観たって実感が湧くので。私、何をやるにも、最初に決めないと気が済まないんですよ。職業病かもしれません(笑)。

―先の先まで読むと。

香川 そう。だから洋服を買いに行くのとか苦手で。先を読んで、どれが最善の1着か考えすぎちゃうんです。まぁ映画にしても買い物にしても、もっと気楽に楽しめばいいんですけどね(笑)。

ワトソンみたいな人がいいですね

―普段からプロの女流棋士なんですね。あと、週プレ的に好きな男性のタイプも教えていただければと…。

香川 それ、聞かれると思って考えてきました(笑)。私、シャーロックホームズが好きなので、ワトソンみたいな人がいいですね。

―ワトソン? 支えてくれる人?

香川 はい。私、自分の世界にすぐ入り込んでしまうんです。そんな自分に愛想を尽かさず面倒をみてくれる、包容力ある人ですね。

―香川さんは振り飛車党(飛車を序盤から大きく動かす戦術をよく使う棋士)ですが、やはり男性も振り回すタイプ?

香川 あははは。男性に限らず、振り回すより、普段からひとりで暴れまわるタイプです。勝手にあっちいったりこっちいったり。ただ、オタク気質なので、異性にときめいたり、推したいと思うこともないわけではないけど、なかなか恋愛しようとはならないです(笑)。

―それはもったいない(笑)。では最後に今後の目標は?

香川 今、将棋ブームで沸いているので、将棋人口を今以上に増やすためにも、プロとしてできることはなんでも応えられたらいいなと思っています。

―最近はTVやイベントでも幅広く活躍しています。先日もニコ生でカラオケを歌いながら詰将棋を解く離れ業を披露したり、アニメキャラのコスプレを披露したり。そういうことも?

香川 そうですね。私、将棋界の「なんでも屋」なので(笑)。少しでも将棋界に貢献できるならなんでもやります。あとはプロ棋士である以上、なんといってもタイトルですね。命がけで取り返したいです。これからも、もっともっと攻めていきますから!

(取材・文/大野智己 木田祐介 撮影/武田敏将)

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●香川愛生(かがわ・まなお)1993年4月16日生まれ 東京都出身 日本将棋連盟 所属の女流棋士 ○2008年プロ入り(女流2級)、2013年度、14年度 女流王将のタイトルを保持。現在、女流三段。棋風は振り飛車。その美貌から“将棋界のまゆゆ”とも呼ばれる。