ネット通販の急激な拡大や人手不足などで疲弊する宅配業界。
『週刊プレイボーイ』の対談コラム「帰ってきた! なんかヘンだよね」で、“ホリエモン”こと堀江貴文氏と元「2ちゃんねる」管理人のひろゆき氏が、宅配業界の問題点と今後について議論する!
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ひろ テレビやネットで話題になっていますけど、宅配業界は人手不足や過重労働など、かなり厳しい環境みたいですね。
ホリ 業界大手のヤマト運輸は、神奈川県の支店の元ドライバーらに残業代の一部を払ってなかったり、時間外労働があったりして、昨年、是正勧告を受けていたよね。しかも、今年3月には全国約7万6千人のドライバーらを対象に未払いの残業代があれば支払うと発表した。その総額は数百億円になるともいわれている。
そんなこともあってか、ヤマトは個人向けの小口の宅配料金を値上げするらしい。もちろん、大口の法人の顧客であるアマゾンとも交渉に入っているみたいだけど。
ひろ 宅配業者のコストは確かに上がっていますよね。車を道路に止めていて違反が確認されると違反切符を切られますし、街中の至る所に配達ステーションのような施設を造る必要がありますから。
しかも、ネット通販の影響で配達数が伸びているのに、最近は不在も多いから、再配達も増えているでしょうしね。
ホリ だから、ヤマト運輸などの宅配便の仕事が大変なのを知っている人たちは、運賃の値上げは「しょうがない」っていう意見になっているみたいだね。一方でアマゾンが出てくる前は今の運賃で問題なくできたんだから、個人向けの小口を対象に値上げをするのはおかしいという意見もあるみたい。
ひろ 「値上げをすると叩かれる状況」ってちょっと大変ですよね。例えば、スゴく人気があるのに価格が安いから儲からないお店ってけっこうありますよね。んで、そういうお店は従業員が足りなくて、同じ人が長時間ずっと働いていたりします。
ホリ 値上げすると、お客さんが来なくなるんじゃないかって心配なんだろうね。
市場原理を理解しようとしない否定的な意見も多い
ひろ ちなみに香港にある安くておいしいレストランがミシュランの星を獲(と)ったんですけど、その後に値上げしまくって、2年後には高級店になっていました。香港では「そんなもんだよね」って感じですけど、日本で同じことをするのは難しそうな……。
ホリ 日本はデフレが長く続いたことも影響しているんだろうね。「需要が高まったら値上げをする」という至極当たり前の市場原理を実行するのが難しい雰囲気になっている。
ひろ とはいえ、今回のヤマト運輸みたいに背に腹は代えられなくなって、値上げに踏み切る会社も出てきてますよね。今後はそういう企業が増えていくんでしょうね。
ホリ まあ、そうなるのが普通なんだけど、世の中には市場原理を理解しようとしない否定的な意見も多くてさあ、ジャーナリストとかでも「大口のアマゾンのせいで小口にしわ寄せがくるのは問題」「儲かっているアマゾンから先にお金を取らないのはおかしい」みたいなコメントをしている人もいるらしいよ。
ひろ うーん……企業同士の契約なので、外野が文句を言うのもどうかな?と。それに宅配業者はアマゾンと「月に○回以上の配送を約束する」みたいな個数保証の契約をしていると思うんですよ。
もし、宅配業者が安定収入のためにそういう契約をしたのであれば、アマゾンが悪いのではなく宅配業者の責任なわけで……。
ホリ そう。ヤマト運輸の契約が甘かったということも考えられる。
★後編⇒宅配業界の疲弊をホリエモン×ひろゆきが考える「アマゾンが次にやってくる対策は…」
(構成/杉原光徳 加藤純平 イラスト/西アズナブル)
●堀江貴文(ほりえ・たかふみ) 1972年10月29日生まれ、福岡県出身。旧ライブドア社長。SNS株式会社オーナー兼従業員。『やっぱりヘンだよね』(集英社)が好評発売中
●西村博之(にしむら・ひろゆき) 1976年11月16日生まれ、神奈川県出身。元『2ちゃんねる』管理人。近著は『ソーシャルメディア絶対安全マニュアル』(インプレスジャパン)