格安パック旅行を 主戦場にする旅行代理店は、 かなりの無理ゲー?

資金繰りに行き詰まり経営破綻した旅行会社「てるみくらぶ」の問題。

『週刊プレイボーイ』の対談コラム「帰ってきた! なんかヘンだよね」で、“ホリエモン”こと堀江貴文氏と元「2ちゃんねる」管理人のひろゆき氏が、日本の旅行代理店業界が抱える“ヘンな構造”について指摘する。

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ホリ 格安ツアーを販売していた旅行会社「てるみくらぶ」が、東京地裁に破産申請をしたね。

ひろ ええ。「少なくとも3年前から粉飾決算を繰り返していたんじゃないか」とみられていて、そうなると完全に犯罪行為ですよね。実は僕、「総合旅行業務取扱管理者」っていう資格を持ってるんですよ。

ホリ え、なんのために?

ひろ 「旅行代理店をつくれば海外旅行のチケットが安く手に入る」という噂を真に受けて(笑)。んで、無事に合格したものの、海外旅行を扱う代理店をつくるには7千万円の営業保証金を納付しないといけないらしくて…。

ホリ なんだそりゃ(笑)。

ひろ んで、資格を取ってわかったんですけど、パック旅行を格安で販売するのって、かなりの無理ゲーなんですよ。「てるみくらぶ」は経営がへただったということもあるんですが、それとは別に日本の旅行代理店業界が抱えるヘンな構造をなんとかしたほうがいいと思います。

ホリ ヘンな構造ってどういうこと?

ひろ 日本のパック旅行って、当日のキャンセル料はほとんどの会社が50%なんです(旅行開始後またはキャンセルの連絡がなかった場合は100%)。でも、実際には旅行代理店が現地のホテルや航空券を予約したり前払いしたりしているので、当日キャンセルになると損失を旅行代理店が丸かぶりしないといけない場合が多い。

ホリ なら「当日のキャンセル料を100%取ればいい」って思う人が多そうだけど?

ひろ それが難しいんですよね。まず、旅行代理店と顧客の間には「約款」という契約条項が存在しています。約款というのは定型化された契約項目のことで、これは、いちいち細かな契約まで交渉したり確認するとすごい時間がかかるので、効率化を図るための仕組みなんですよね。

新しい約款を作って観光庁長官に認可してもらわないといけない

ホリ 保険とかのパンフレットに書いてある小さい注釈とかも約款だよね。

ひろ はい。で、ほとんどの旅行代理店は自分たちで作った約款ではなく「標準旅行業約款」というものでお客さんと契約しています。そして、その約款にはキャンセル料の料率が決められていて、もし「キャンセル料を変えたい」と思ったら、新しい約款を作って観光庁長官に認可してもらわないといけないんです。

ホリ なら、自分たちで約款を作って認めてもらえばいいじゃん。

ひろ いや、約款を作るだけではまだ足りないんです。ほとんどの旅行代理店は旅行業協会に所属しているんですが、もし倒産みたいなことがあると旅行業協会がお客さんに弁済してくれるという制度があります。

★後編⇒「てるみくらぶ」だけじゃない! 格安パックを主戦場にする旅行代理店の“時限爆弾”とは…

(構成/杉原光徳 加藤純平 イラスト/西アズナブル)

●堀江貴文(ほりえ・たかふみ)1972年10月29日生まれ、福岡県出身。旧ライブドア社長。SNS株式会社オーナー兼従業員。『やっぱりヘンだよね』(集英社)が好評発売中

●西村博之(にしむら・ひろゆき)1976年11月16日生まれ、神奈川県出身。元『2ちゃんねる』管理人。著書に『ソーシャルメディア絶対安全マニュアル』(インプレスジャパン)ほか