数々の苦難を乗り越えてきた村西とおる監督が、読者のビジネス悩みをズバリ斬る!

隆盛を極めたAV黄金時代の体験から負債総額50億円からの大復活までーーそして素人女性から芸能人まで口説き落とすことに成功してきた村西とおる監督のノウハウがあますことなく披露されているのが『禁断の説得術 応酬話法――「ノー」と言わせないテクニック』だ。

監督が壮絶な闘病体験を語った前回に続き、今回はいよいよ読者から寄せられた様々なお悩みに村西流の応酬話法でお答えいただく。まずはビジネス編から!

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―初めのお悩みは…仕事で部下との関係に悩むUさん(41歳)からです。

Q)部下からナメられているのか、ちゃんと動いてくれない。人を動かす時に有効な言葉や気をつけることはありますか?

村西 まず、人は思うように動いてくれないということを受け入れることです。

女性の部下の場合は、男性よりも“厳しい言葉”に対する限界値が低いから、欠点を挙げつらって厳しくしてはいけません。必ず女性の場合は褒(ほ)めること。褒めながら軌道修正して、直らないものは仕方がないとの諦観を持つことです。

男の部下には、まず2割褒めて8割叱る。自分の利害を優先するのではなく真心をもって「キミのために言っているんだ」と言えば、いずれ伝わるし、言葉の選び方も違ってくるはず。この時、大事なのはいかに部下と共にミッションをこなすか。そのため「この言葉を言ったら部下にどう思われるか?」は考えなくて結構です。

気をつけなければならないのは女性との接し方です。女性にとって誉め言葉は花にとっての水のようなものです。いたずらに叱るということは水を奪って花をしおれさせてしまう危険があるからです。

―お次の相談者は、ある製品を売る営業のSさん(43歳)です。

Q)自分の仕事が世の中に役立ったという実感がほしいんですが、自分が作ったものが買った人の役に立つかどうかわからない場合、どのように自分を納得させるのでしょう?

村西 この世に存在する仕事で、世の中の役に立たない仕事は何ひとつありません。申し訳ないけど、この方は仕事というものに対しての認識がなさすぎる。世の中のお役に立たないことなんかには報酬は発生しないのです。

営業とは想像する仕事。意味や価値を見出す、需要を想像していくのが営業マンの仕事です。世の中に貢献していない仕事なんてありません。それはあなたさまがそう思っているだけ。世の中に役立っていないで成立している仕事があるなら逆に教えてほしい。

―次は転職活動で自信を失いかけているというYさん(32歳)です。

Q)話ベタのせいか転職活動で失敗し続け自信を失っています…。

村西 3千本ものAVを撮ってきた私でも、様々な場で講演経験のある私でさえも、講演の前にはその日に話すことを2、30回も予行演習します。

この方は口下手という前に、おそらく準備も努力もしていないでしょ。そういう方はまずは1千回くらい、話をする練習を心掛けてください。1千回、練習しても納得がいかなければ、もう1千回、練習を重ねてください。それでも駄目なら、さらにもう1千回…あなたさまの人生を左右することに、それぐらいの努力を重ねてもバチが当たることは決してありません。

人を変えることなんてできません

サクサクいきます。次は上司に振り回されて困ってるIさん(32歳)です。

Q)気分屋の上司に振り回されています。それでものすごく業務が滞っています。

村西 親を選べないと同じね。なかなか難しいけど諦めてください。出会いはある意味で親を選べなかったと同じく宿命だから、腐らず受け入れ、己を磨くこと。今はいい経験で修行の場だと耐えることです。あなたさまが自分自身を容易に変えられないように、人を変えることなんてできません。変えられない人間関係もあるのです。

心を前向きにあまり追い込まず、自分に逃げ道を作ってあげてください。風雪に耐えて伸び続ける若竹のような強靭なしなやかさをあなたさまの心に構えてほしいのです。

―さらに、大した悩みじゃないけど意外とストレスフルなNさん(27歳・営業)のお悩みです。

Q)上司からの飲み会の誘いにカドを立てない断り方はありますでしょうか。逆に後輩からウザがられないお酒の席の誘い方も知りたいです。

村西 女性が男性から誘われた場合、「飼ってるインコが具合悪いから」とか「メンスになっちゃった」とか適当な理由を言えばいいんです。

ただね、私自身のことでいうと、仕事仲間と一緒に飲み食いをして仕事が上手くいくなんてことはありません。そんな飲み食いの場所からは何も生まれないと思っています。例えば、5回に1回は行くとかそういう程度でよろしいのではないでしょうか?

後輩への誘い方、これも後輩だって行きたい人と一緒に行けばいい話で、そういうポジションを大切にしてあげればいい。後輩との関係に自分自身の拠り所を求めないことが重要です。

―最後はなかなかややこしい、追加仕事でかかった請求の仕方について悩むTさん(32歳・営業)から。

Q)当初の予定になかった制作や修正作業が発生した時、追加の修正費用を請求しなければなりません。クライアントのクレームをかわし、角を立てない請求方法や説得の仕方を教えてください。

村西 よくあることですね。次の仕事につながるのだから、赤字覚悟でも「お詫びのしるしです」と高価なマスクメロンでも持って行きつつ「実はこの作業にはこのくらいの作業費用がかかります」と説明するしかありません。言葉だけでは限界がありますので、真心を物で表現すれば、大概は納得してくれるものです。

そして理路整然と「今回、これだけの請求をさせていただきますが、私の落ち度です」と。普通ここまではやらないというような情熱を見せることによって、相手は理解してくれるに違いありません。

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いかがでしたでしょうか。なんと前向きになれるお言葉の数々! 次回は恋愛、夫婦関係、そして性に関するお悩みまで監督がお答え致します。お楽しみに!

(取材・文/河合桃子)

●村西とおる1948年、福島県出身。高校卒業後、上京し、水商売、英会話教材や百科事典セールスなどを手掛ける。ゲームリース業で成功を収めた後、裏本制作販売に転じ、北大神田書店グループ会長に就任。84年にわいせつ図画販売目的所持で逮捕され、保釈後、AV監督となる。88年にダイヤモンド映像を設立し、多くの人気作を生み出したものの、衛星放送事業への投資失敗により92年に50億円の負債を抱えて倒産。その後、タオル販売、蕎麦店経営、アダルトグッズ販売などを経て借金を完済、現在に至る

■『禁断の説得術 応酬話法――「ノー」と言わせないテクニック』(祥伝社新書 864円)AV界の帝王・村西とおるが英語の百科事典のセールスマン時代に習得、全国1位の営業成績を上げるに至ったテクニック・応酬話法。ダイヤモンド映像時代には素人女性から有名人までを口説きAV出演を成功させた。会社の倒産で負債総額50億円の過酷な取り立てもこの話法でピンチを脱出した。この秘伝とも言うべき禁断の説得術を、ふんだんな具体例(時に抱腹、時に涙)とともに開陳!