芸能活動も30年、女優として幅広く活動する“みっちょん”こと芳本美代子さん 芸能活動も30年、女優として幅広く活動する“みっちょん”こと芳本美代子さん

あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』

前回、歌手の松崎しげるさんからご紹介いただいた第18回ゲストは、女優・タレントの芳本美代子さん。

80年代のアイドル全盛期に歌手デビュー。90年代からは女優としても活躍し、ついに30年を過ぎたその芸能活動を振り返ってもらった前回。さらに、演技に演出までと新たな意欲を見せる“みっちょん”の今とはーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)

―その舞台『阿国-OKUNI-』がきっかけで90年代はすっかり役者のほうにシフトされて。実は、僕が大好きな作品が岩井俊二監督の『FRIED DRAGON FISH』なんですが。

芳本 わっ、ありがとうございます。

―お会いするのに、改めて観たくなって。昨日の夜、また観直したんですけど。やっぱり岩井さんの中でも特別にいいですよね。みっちょん演じるプーも、ベスパに乗ってピンクのメット被ってスタイリッシュで。カワイさとサバサバしたキャラクターがものすごいマッチしていて。

芳本 あれ、カワイい役でしたよねー。岩井さんとは、何かの番組でディレクターやられていて、サザンオールスターズの『海』っていう曲を私がカバーしてるんですけど、PVを作っていただいたんですよ、その番組で。で、それがもう本当にすごい大好きで。

そこから、お互いその映像を覚えていてキャッチしていたのかな。で、次に会ったのが「ドラゴンフィッシュ」なんです。お会いした時に、岩井さんが顔を見た瞬間、「あー!」って言って。見せていただいたのが絵コンテ。もうそれが、私なんですよ。

その時、マッシュルームでパーマをクリクリンってソバージュ風にかけて。ファッションとかもダボッとしたジーンズにベルト絞って、セーラーっぽい感じのシャツ着て行ってたんですけど、「そのままでいいです」って言われて。

―完全に当てて書いてるじゃんという感じで?

芳本 そう、それで次に撮る時には、もう漫画のような絵コンテがあって、それがやっぱり私なんですよ。嬉しかったですねー。

―自分でも思い出深い作品であり、その時代の大切なパッケージのような…?

芳本 うーん、なんていうか…その時の自分が、そのまま見れますね。皆さんにもそうやって言っていただいて、「岩井監督はどうだった?」とかいろいろ聞かれるんですけど。単純にその撮ってもらった映像が自分でももう大好きというか。

「演技じゃないんだよね、やっぱり」

―そう言えるのが最高の幸せでは…。共演の浅野忠信さんもまだそんな無名で初主演くらいな。当時は僕も浅野くんと言ってるくらい若いんですけど、この感情を出さない殺し屋って役がまたいいんですよねー。

芳本 いいですよねぇ。すごくシャープで静かな。黙っていても全然語れるっていう。その前に『青春デンデケデケデケ』(92年)とか出てて。でも岩井さんに認められて、その時、すごい言ってましたもん、岩井さんが。

―僕も『バタアシ金魚』(90年)の映画版に出ていた時から気になってはいたんですけど。「ドラゴンフィッシュ」が最初、TVドラマの深夜枠で93年に放映されて。96年に同じ岩井監督の『PiCNiC』と劇場で同時上映となり、それも主演してるんですよね。

芳本 で、charaさんと浅野さんが共演してるんですよね。ちょうど「ドラゴンフィッシュ」の曲がcharaさんだったんですよ。

―エンディングの主題歌ですよね。それもすごくイイんですよ。昨日も何遍も繰り返し映像を巻き戻して浸ってました(笑)。…で、その『PiCNiC』の共演を機にふたりが私生活でも結婚する流れになって。

芳本 そうそう。だから、意外と「ドラゴンフィッシュ」の中にいろんな繋がりがあるんですよね。

―繋がりといえば、岩井さんが実は僕の地元の高校(仙台一高)の先輩なんですよ(笑)。3歳くらい上だから被ってはいないんですけど、何度かインタビューではお会いして。朴訥(ぼくとつ)で寡黙(かもく)というか、静かな方ですよね。

芳本 そうですね。あんまりなんか言われる方じゃないんですよね。筋を変えないで、ずっと淡々とやっていかれる感じなので、いいのかな、いいのかなって思いながら挑んでましたけど。

でも「今、顔がいいから、あのシーンをもう1度撮ろう」って言われたショットとかもあって。確かにその前に撮った時よりもすごいよかったんですよ。その時の演技している違いとかじゃなくて、ちょっと疲れていて、ちょっと眠くってという感じとか。

やっぱり、作品の流れの中のそういうものにすごくこだわりを持ってやっているんだなっていうのをすごく感じましたね。

―演技論や演出法というより、ふっとした瞬間の気づきのようなものなんですかね。

芳本 だから演技は全然文句言われないんですけど、何回もやらされるんです(笑)。なんか「演技じゃないんだよね、やっぱり」っていうところで、映像でそういう風に導かれるっていうか、観る人を導いていくっていう。(作品で)ジャストな顔を選んでいらっしゃるのを後から観て「やっぱりそうなんだな」って。

―じゃあ、その場でいちいち注文をつけてとか指導することもなく。

芳本 はい。で、漫画の絵コンテみたいなものがあるからイメージはできるじゃないですか。後は、大丈夫ですかねって聞くにも聞けず(笑)。そういうオーラな方なので。まぁOKが出れば大丈夫なんだろうって思うし。

監督の中のOKっていうのがハッキリしているのをすごく思えたんで、そこから後は全然何も心配なくやれましたけど。

「痛い思いした分は活かしていきたい」

―やはりその出会いもいい巡り合わせだったんでしょうね。そういうものを経て、女優としてずっと続けられて、最近では自分で舞台の演出も手がけるとか。

芳本 はい。なんか役者って、もしかしたら誰でもなれるんじゃないかっていう風に思えたりもするんですよ。でも仕事にするのは、やっぱり容易じゃないんですよね。

自分は好きでやっているとか、まぁアイドル時代もそうですけど、好きな仕事っていう意識を本当に持ち始めたのが、ここ最近なので。今度はじゃあ、作り手に回って、なんかこう…後輩だったり、その人のいい部分を引き出してあげられたらっていう。

そういう風にやってると、今度は自分も客観視できるんですよ。今までは自分で体当たりしていたのが、誰かの目を通して自分を見れる、そういう目になれるようになったんですね。

―今またそういう視野で活かされてるわけですね。自分の若い時の失敗や甘えとか、いろんなことも踏まえて…。

芳本 そうですね。もう本当に30年、よく続けてこれたなぁって自分でも思いますし。でも考えると、もうここでしか生きていけないんですよね。他ではどう順応していけばいいかわからないっていう…。

まぁ違う仕事しても、ここで経験した分を役立てるなら、たぶん飄々(ひょうひょう)と、年齢いったところで失敗しても、初めてのことなんだからってやってけるようにも思いますけど。チャレンジ精神はものすごく今尚あるので。

そういった意味では、そのコツコツとやってきたことが、まぁいい経験として、すごい自分の身になったり肉になってるんだろうなって。

―当然、プライベートでもいろいろ経験されて。酸いも甘いも、いろんな痛みとかツラいものが肥やしになって…。

芳本 そうそう。もちろん金山(一彦)さんと別れたりとかいろんなことも含め、痛手は痛手なんですけど。他人っていうか、思っているほど、みんな同じ考えじゃないんだなって…。

だけど、それも自分が自分として生きてきて、やっぱり相手もそれがあるはずだしって。意外と、なんていうのかな…そんなに大したことじゃないっていうか(笑)。っていう風に思えるようになりましたね。

―どっちが悪いとか、お互い自分本位になっても虚しいですしね。

芳本 そりゃいろんな大変なことはありますよ。娘もいるし。でもそれはそれで、自分の経験値として人生に活きているんだなってすごい感じられるので。なんか…痛い思いした分はいい形で活かしていきたいって思いますね。

「最終的には好きか嫌いかなんですよね」

―離婚された当時ですか、「なんとも思わなくなっちゃったんで」って発言も取り沙汰されて印象的でしたが。

芳本 そうですね。でもそれが本当に正直なところであって。まぁお互いがね、たぶん興味がなくなったっていうところに最終的には至っちゃった。だから、いろんなしがらみももちろんありますけど、最終的には好きか嫌いかなんですよね。

―気持ちに正直に。離れちゃったらどうしようもないし。

芳本 そこで我慢しなきゃっていう自分じゃなかったことは、本当にお互い様なので(笑)。そこに対しては本当に嘘もないし。でもいろんなものが見えますよね。

―そこで、普通…って言ったらおかしいですけど、例えば専業主婦とか、ただの母親だったら、家庭がすべてみたいなところもあるでしょうが。自分の場合、女優っていう仕事、やれるものがあったことも救いだったのでは?

芳本 だからやっぱり、30年やってきたっていうのはそういうことなんじゃないかなって、すごい思いますけどね。助けてもらい、また世間とかいろんな風に周りから言われるのも含めて、私を育ててもらっているんだなって。

―ちなみに、酒豪という噂もありますが。うちでひとり酒するとか、憂さを晴らしてっていうのもあったんですか?

芳本 あ、酒豪だったんですよ。すごい飲めるんですけど、でも今、車で移動することが多くて。あと、体力的に次の日がもたなくなって…若い時はガンガンいけて、次の日、全然頑張れていたから(笑)。で、基本、家で飲むっていうよりも、外でみんなと楽しいお酒を…人と飲むっていうのが好きなんですよね。

―あ、同じだ。僕も家でひとりでは全然飲まないんですよ。

芳本 家でひとりで飲んだら、なんか…ジュクジュクしちゃう。それ、あんまり楽しくないんです。喉乾いたからビール1杯、ちょっとご飯前に飲んだら、ふわっとイイ気持ちだなっていうくらいで。後は、深くなっていくと違う考えがいろいろと(笑)。

―よくないお酒になっちゃいますから(笑)。楽しくないですよね、結局。

芳本 そうするとやっぱり、イイお友達だったり、お酒飲んで楽しい面子とワーッて騒いで発散するほうが。向こうで喧嘩していようが、よっぽど楽しいっていうか。

―では、愚痴っぽい酒でもないんですね。

芳本 うん。どっちかっていうと、弾けるほうなので。止められることもなく、オープンがさらにオープンになるっていう(笑)。

次回ゲストは元旦那さん同士が仲良しの…

松崎さんも「毎日一升くらい飲めるよ」と言ってましたが。「俺の健康法は暴飲暴食」とか(笑)。ふたり飲みが実現したら、どんだけテンション高くなるか(笑)。

芳本 どうなんでしょう、楽しいかな(笑)。でも、すごい気を遣ってくれる方ですから。

―西田敏行さんとよく飲んで、ふたりで泣きまくってるという話もされてました(笑)。

芳本 そう、なんかすごい仲良くて。飲んでますって言われてましたね。

―でもそれこそ、みっちょんも友達が多そうですよね。

芳本 いや。私、本当に友達少ないんですよ。そんな私が繋げられるかなっていう(笑)。

―結構、皆さん、実はあんまり友達いなくてって言いがちなんですけど(苦笑)。

芳本 (笑)。マルシアがいいかな…なんか、ポイントポイントで会う人なんですよ。何かが共通してるってことも全然なく、元旦那さん同士が仲良くて、そこから知り合ったんですけど。なんか不思議と切っても切れないっていうか。

でも、ハートの部分ではものすごく合って。別にお互い何を言ってというわけじゃないし、番組で久しぶりに会ったり、一緒になるのが癒やされるっていうか。要所要所で。

―じゃあ、それこそお酒飲んだりっていう仲でもなく?

芳本 うん。でもなんか、人生を苦しくしないようにする作業っていうか、もう笑って過ごそうって感じが合うのかな。踊って過ごそうじゃないけど、たぶん私にもラテンの血があるんだと思います(笑)。マルシアのほうが意外ともうちょっとウェットな感じかも。

―ブラジル系でありながら、逆にマルシアさんのほうが日本人的にウェットな(笑)。

芳本 そう。だからたまに心配になるのもあるんですけど、でも思いの外、ポジティブに考える人なので。会うと、お互い無理することなくというか。

―いい距離感なんですね。いや、でも第14回のゲストでその元旦那の大鶴義丹さんにも語っていただいてまして。またこれも縁が…。

芳本 あ、本当ですか。義丹さんもね、(夫婦同士で)一緒に番組とかもご一緒して。その個人個人を人として知っていると、どっちも悪くないって思えるんですけど…やっぱね、どっちも悪くない人が向き合うと、どっちも悪いになるっていうねー。怖い怖い(笑)。

―ははは。では、マルシアさんともそこらへんを語れればと(笑)。本日はみっちょんと呼ばせていただいて、楽しい時間をありがとうございました!

第19回は3月13日(日)配信予定! ゲストは歌手・タレントのマルシアさんです。

●芳本美代子 1969年3月18日生まれ、山口県出身。1983年第五回福岡音楽祭・新人登竜門ビッグコンテストに応募。テレビ放送を見たテイチクレコードのスタッフからスカウトされ、山口から福岡に通う形で歌のレッスンを始める。1984年3月に芸映プロダクションがマネジメントを担当することになり、同年8月に上京。翌年1985年に『白いバスケット・シューズ』でデビューを果たす。その年の各音楽祭では新人賞を獲得。1990年には、舞台『阿国』で第28回ゴールデン・アロー賞・演劇新人賞を受賞。これを機に、歌手活動からドラマや舞台に活動の場を移し活躍中。現在、ブロードウェイミュージカル『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』の舞台稽古中で、4月からの公演を控えている。

(撮影/堀田力丸)