男女問わず素敵な女性として憧れられる木の実さん 男女問わず素敵な女性として憧れられる木の実さん

あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』

前回、野球解説者の江本孟紀さんからご紹介いただいた第25回のゲストは女優・歌手の木の実ナナさん。

長年、舞台やミュージカルで活躍、ロングランとなった故・細川俊之との2人芝居『ショーガール』でも知られるが、前回はその下町育ちのルーツとともに、あの大ヒットドラマ『たけしくん、ハイ!』の舞台裏を明かしてもらった。

ビートたけしさんの自伝的ドラマで子役として主人公を演じ人気を博した小磯勝弥さんとはいまだにプライベートでも親子同様のつきあいだというがーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)

―ほんと、実の親子以上というか…体調を気遣って漢方薬をさりげなく届けてくれるなんて素敵な話ですね。…ちなみに、その足のっていうのは以前、沖縄の公演で怪我されたのと関係あるんですか?

木の実 ううん。もう今までのいろんなもので。

―なんか江本さんもお医者さんを木の実さんに紹介されたようなお話をされてましたが。

木の実 それはね、右肩で…舞台で『阿国(おくに)』っていう作品をやった時に右手でね、旗を持って最後駆けるんですよ。「行くぜー! 江戸へー!」って。それでだんだん肩が痛くなって動かなくなっちゃって。で、誰に相談しようかなと。

―『阿国』は以前、ゲストで出ていただいた芳本美代子さんの初舞台で。あれで開眼して女優を続けられたと仰ってました。

木の実 そうそう、美代子ちゃんも出てたの。それから何十年も続くんですけど、肩が痛いからって休めないし…困ったな、肩の悪い人、肩の悪い人って思ったら、野球のピッチャーだ!と。それで私、スポーツ苦手なんですけど、誰か知ってる人いないかな、野球、野球…ひとりいましたよ~! で、江本さん(笑)。

―そういう発想だったんですね(笑)。江本さんは肩を消耗して壊す前に引退されてる気もしますが(苦笑)。そもそも雑誌で対談されたのが知り合うきっかけだとか。

木の実 対談もあるんですけど、森光子さんが何かの時に「ナナちゃんね、スポーツをお好きじゃないわよね」って。で、「だけど、野球の選手でね、ナナちゃんの歌をとっても上手に歌う方がいるのよ」って言うから「えーっ、私の歌って覚えにくいですよ、どなた?」「江本孟紀さん」って。私は野球知らないから全然違う人と勘違いしてたんですけど。

―森光子さんがきっかけで? つまり江本さんが森さんの前で木の実さんの歌を披露したことがあったという…。

木の実 たぶん打ち上げとかそういうので。…で、オススメされて、まぁ世代も一緒だし、私のショーに出ていただく交渉をしてもらって。60年代ポップスのね、『ショーガール』で歌ってたような曲を男と女で。そしたら、いやーって言いながら江本さんが全然断らずにすーっとおやりになったんで「あらー、いるんだ、こういう方」って。

―木の実さんの舞台に江本さんがゲストで一緒に歌われたと!?

木の実 そうそう、写真もうちにありますよ。

―そこ大事なとこなのに全然紹介された際に触れてませんでしたよ(苦笑)。

木の実 男だから絶対照れとかね、恥ずかしくて言わないんじゃないんですか。もう忘れてるかもね、そういうのは(笑)。

「お酒飲めないのは男として認めないのよ(笑)」

―いや、でも江本さんが木の実さんとショーで歌の共演をされていたとは。

木の実 それで、私が肩の具合悪い時に「あ、そうだー!」って電話したら、医者はふたり知ってて自分は両方通ってる…人相悪いけど腕がいいのと、人相いいけど腕はちょっとなのと、どっち取る?って。その言い方されてもね(笑)。

―そりゃ腕のいいほうじゃないんですか?(笑)

木の実 腕がいいほうにいきますでしょ(笑)。

―でも江本さんからすると、周りに素敵な男性もいっぱいいるだろうし、イケメンが好みかなと思ったんでしょうかね。

木の実 そうそう、思われてた。江本さんのこともオッケーって言ったの、私。カッコよかったから(笑)。ただ、こういうタイプいいないいなー、旅行に行ってもいいかなーって、いいところまでなったら、お酒が飲めないって(憮然)。

―えー、そこですかぁ。江本さん、そうなんですよね…。

木の実 そこです。ごめん、お酒飲めないのは男として認めないのよ(笑)。だって目の前でお水とか飲まれたらねぇ…。

―飲めるか飲めないかで男と女の関係が…(苦笑)。ちなみに『ショーガール』をずっと一緒に共演された細川俊之さんは?

木の実 飲めます。でも一緒に飲んだことはないですけどね。

―えっ、それも意外ですね。

木の実 それはね、もう公演が全部終わった一番最後の打ち上げの日だけみんなで。あとは何も。…ふたりの約束なんですよ、新鮮でいたいからって。

―ロングランで15年、20年くらいやられましたよね。演じる役柄の男女が馴れ合いで惰性にならないようにと?

木の実 そうそう。私もね、小っちゃい頃から舞台立って、やっぱり周りにプライベートが出る方とかいらしたんですよ。それがすごく嫌だったの。役になりきってなくて、そういうのはお客様に失礼だなってっていうのが、すごく子供心にもあって。

自分が主役をやるようになった時、こういうことはしたくない、こういうのはイヤって。

―プロとして公私のオンとオフであり、節度は守らないと、と。

木の実 スタッフに対してもそうですよ。素晴らしい方たちだったし、こっちがきちんとしないと失礼になるって思ってたんで…だから細川さんともね。

あの舞台は本当に最初、パルコ劇場っていうところで楽屋が屋根裏部屋から始まって…お客さんがそんなに入らなかったんですけど、口コミでそっと増えて。終わりになるかなと思ってたら、たった60分ぐらいの演目でこれだけ伸びたってことは、もっと長く観ていただいたら、今度は踊りもお芝居も増やそうって…。そしたらあんなに続いて、結局、お客様が作ってくださったんですよね。日本では育たないと言われていたミュージカルを。

―そういう思い入れもあるところで…。

木の実 だから細川さんと全部終わるまでやめようって。もう、あとはご挨拶だけで。舞台のドラマと同じようにその時初めて会ったって感じ、新鮮な気持ちでいつもね…。

「亡くなった時もね、私、とても悪い女で…」

―舞台に徹するために、そんなピュアというかストイックなやりとりがあったとは。

木の実 そうなんです。まぁ想像する人は勝手にいろんなことをね、ふたりはデキてるとか言われてたけど、そんなことは言わせておけばいい。舞台だけをきちんとやっていれば、お客さんが喜んでくれれば、拍手がいただければっていうのがありましたから。

ただ、お話をしない分、舞台上で手をつないだりとかしてね、「あれ、今日は手が冷たい」「あ、ちょっと脈拍早いな、大丈夫かな」とかわかって、サポートする面が出るんですよ。細川さんも私に同じようにありましたしね。

―それもまた深い関係ですよね。触れあっただけで体調を察するなんて。

木の実 逆に普段ベタベタしているよりわかるんです。そういう意味でいろんなことを毎回毎回学んでいったってことはありますね。

―では細川さんが亡くなられて、後で思い返してプライベートでもお酒を飲みかわす機会があってもよかったなと考えたりは?

木の実 ないですね。会わない時が多かったから、その音楽を聴いたりとかした時に「あ、細川さん元気してる?」って感じ。亡くなった時もね、私、とても悪い女で、五木ひろしさんの舞台で『居酒屋』歌ってたんですけど。五木さんのほうが心配して「舞台で言いましょうか?」って。

でも「プライベートのことは言わないで。今、五木さんと一緒にやってるんだからそれはなしよ」って。私の気持ちの中に感謝だけあればいいと。それもね、江戸っ子の冷め方というか。ずるずるいかないっていうのはありましたね。

―そんなやりとりもあって、素敵な方は周りにいくらでもいたでしょうけど。そこで、結婚されずにずっと独身を通されてることがやっぱり気になるところです…。

木の実 んー、これは言ってもわかってもらえないかもしれないんですけどね…。デビューする時にプロダクションの社長から、芸名も決まってこれからスタートっていうんでね、「いいか、もうおまえは普通の人じゃないんだぞ。家族であっても親戚であっても、何があっても男の人の隣にいるってことは絶対なし。プライベートはなし。外に一歩出たら木の実ナナという人間になる」っていうのを約束されて。

今みたいなスキャンダル起こしたら、もう叱られるどころか牢獄行かされますくらいの(笑)。だから、本当ある意味、変なところに就職しちゃったなと思いましたもん。

―それをずっと戒(いまし)めに木の実ナナという人生を全うしてきた?

木の実 だって、好きな人と恋できたって、ちょっとお話とかしてると「こらー! 何してる!」って、どっかから声が聞こえてくるくらい厳しかったですよ。それに慣れちゃったって言ったら変だけど、それはもう、みんなに夢を与えるのがお仕事になっちゃったんだから。ある意味、結婚したらやめる時しかない。

でも結婚って憧れてはいたんですけど、母親を見ててそれも大変だなって…。うちの母も素晴らしい踊り子さんだったんですけど、私が生まれるっていうんで、やめて主婦に徹して。全部が娘のためにって人だったんですね。それだけ思ってもらった母親を泣かせたくない…で、母も結婚しなとは言わなかったし。

私にふたつはできないと思ってたんですね、結婚と仕事とどっちかしかない。それはやめられませんよ、芸能界はもう。

「だって健さんには惚れましたから」

―それこそ時代もあるでしょうけど。巡り会ってしまったら、その人との人生に賭けようとか、そうなって不思議はない出会いもあったと思いますが。

木の実 …そうねえ。でも、みんなその場限りですからね。皆さんやっぱりプロだから、恋仲みたいな雰囲気でいっても、終わった後は「お疲れ様でした」っていう。

だから、それもね、二兎を追う者は一兎を得ずで、やっぱりひとつですよね。で、そうやって自分を磨くほうが大事で。いつでもファンの方がいてくださって「ナナさん、可愛いですね、脚が奇麗ですね」って言っていただくと、脚もっと磨かなきゃって思ったり。だから、私たちに年齢はないんですよ。

そんなの旦那さんびっくりしちゃうでしょ、結婚して、そんな嫁さんもらったら困っちゃうじゃないですか(笑)。だから、いい感じで結婚までいかない…私、男友達すごく多いの。そういうのにあんまりねちっこくないのよ。

―では、そういうスタンスでプロとして徹してこられた中で、男を見る目も当然持ってらっしゃるでしょうけど。木の実さんの考える素敵な男性像とは?

木の実 それはね、私はまずは和服が似合って、タキシードが似合って、ジーパンが似合う人。

―それ全部じゃないですか(笑)。もう見た目から完璧すぎな…。

木の実 でも自分の中ではそうなんです。うちの父親が3つともできたんですよ。

―お父さんがそもそも理想だったんですか。根本にはファザコン的というか?

木の実 でも高倉健さんもいますよ。だって健さんには惚れましたから。

―そこで健さんを出してこられても、大抵の人間は太刀打ちできないです(苦笑)。

木の実 まぁ、いいお友達だけで済みましたけど。健さんはそれはもう3つが似合う、唯一の芸能界の人。他の人に着物着てもらっても「うわー、見なきゃよかった」って感じになっちゃう。

―それこそ、まず見た目なんですね。そこでキマってるかどうかで中身も。

木の実 女なんてそうですよ。まず見た目で「あ、似合わないのダメ」って。で、健さんはお話した時にね、普段、本当は明るい方なのが、着物になるとそういう人、今までいなかったな…「あ、私、こういう人が好きだ」っていう。やっぱり、その人の人生でどういうことが起きて、過ごしてきたかわかるし。それで自分が勉強になる人じゃないとイヤなの。

―また醸(かも)し出すものも? リスペクトがあって惚れると。

木の実 こういうこと教えてもらっちゃったな、もう好き好き好きって感じですからね。まるで夢見る夢子ですよ(笑)。ほんと馬鹿みたい、自分で呆れけえっちゃう…って。江戸弁が出ちゃった、あはははは。

●この続きは次週、7月3日(日)12時に配信予定!

●木の実ナナ 1946年7月11日、東京都生まれ。中学生の時に参加した新人オーディションで優勝。1962年、デビュー。67年には『ミニ・ミニ・ロック』という曲 をヒットさせて人気を集めた。その後、本場のショー・ビジネスを学ぶため、70年に渡米。帰国後、73年に劇団四季のミュージカルに応募し『アプローズ』 に出演。このヒットがきっかけで舞台女優として高い評価を得る。74年から始まった細川俊之との2人芝居『ショーガール』は16作品、公演数547回、観 客動員数は60万人を超す大ヒットとなる。85年にはTVドラマ『たけしくん、ハイ!』で自身初となる母親役に挑戦。現在も舞台、ドラマ等で活躍

(撮影/小澤太一)