『巨人の星』の星飛雄馬、『機動戦士ガンダム』アムロ・レイ、『ドラゴンボール』のヤムチャ、『聖闘士星矢』のペガサス星矢等々…。
数々の代表作で誰もが知るキャラクターを演じ、その声を聞いてピンとこない者はいないであろう声優・古谷徹さん。
そんな、声優界のレジェンドである古谷さんがデビュー50周年を迎えた今年、奇しくも『週刊プレイボーイ』も創刊50週年を迎えた。
そこで、運命を感じずにはいられない、その歳月の歩みを共に振り返るべくロングインタビューを敢行!
昨日配信した第2回「『きまぐれオレンジロード』の春日恭介役が一番好きで…」に続き、いよいよ後編。今回は「ナレーションに対する思い」や「今後の目標」、そして「モテ期について」までを語ってもらった。
―アニメと映画、ナレーションによる違いは意識していますか?
古谷 それは全然違いますよね。ナレーションは扱うテーマによって微妙に変えていますけど、あくまでも情報を明確に伝えるというのが大前提。それにプラスして自分の声を活かしたニュアンスをのせるのが一番大事だと思っています。僕の場合は、報道番組であっても「男の色気」を感じさせたい。そこが他のナレーターやアナウンサーと違う部分。
ずーっとこの人の声を聞いていたいと視聴者に思わせたい。それには、万人がそう思う音というものがあるじゃないですか。“川のせせらぎ”だとか“波の音”とか“ゆらぎ”のリズム。それがナレーションに取り入れられたらいいなあと。
―すごい境地に達していますね! では、アニメの場合はいかがですか?
古谷 アニメの場合はキャラクターを活かすのが全て。それにはキャラクターの気持ちがまず伝わること。喋っている言葉の内容ではなく、気持ちが先行していいと思うんですよ。だからセリフの部分では歯切れが悪くてもいいだろうし、そのキャラクターに合っているなら語尾がはっきりしなくてもいいと思っています。
―CSではクルマ専門チャンネル『カーグラフィックTV』のナレーションもされていますね。
古谷 クルマは好きですね。それこそ高校卒業で普通免許を取って、父のクルマを借りて運転も。大学生の頃は横浜ナンバーの「ハコスカ」(スカイラインC10型モデル)に乗っていました。当時はガソリンスタンドのバイトもやっていて。夜勤だったから、お客さんが少なくて自分のクルマばっかりイジってました(笑)。最近はゴルフに行くことが多いので、長距離でも自分のクルマで運転していきます。
―『カーグラフィックTV』での古谷さんは、車種に合わせてナレーションを変えているのが印象的です!
古谷 それをわかってくれるのは嬉しいなぁ。スポーツカーはきびきび喋りますし、ラグジュアリーカーに関しては優しくソフトに。フェラーリだと少しエロく喋ったり(笑)。やっぱりレギュラーで長くやらせていただいているので、いろいろなトライができるじゃないですか。それが外れるかもしれないけれど、何かこだわってやっていかないとつまらないので。
―特に気になるクルマはありますか?
古谷 まぁスポーツカーは全部好きですけど、ランボルギーニのウラカンとか。あと、ブガッティが新しいスポーツカーを出すんですけど、それも気になりますね。ただ、数千万円もするんで、最初から「どうせ買えないし」とか思っちゃいますけどね(笑)。
フェラーリだと少しエロくしゃべったり(笑)
―今後のお話ですが、51年目以降で目標にされていることは?
古谷 今、ちょうど50周年で毎週のように「日本全国無料サイン会」というのをやっているんですよ。47都道府県全て行くので、なかなか大変ですね(笑)。でも、ファンの皆さんのおかけで50年間ずっとやってこられたので、感謝以外の何ものでもないですし。ファンの皆さんに直接「ありがとう!」と伝えたくて。で、それが来年のゴールデンウイークくらいまでかかるかな。ほぼ毎週土日に回るので、体を壊さないようにやり遂げないと。
それから「コナン」の安室透と「ワンピース」のサボをやりきるのが目標です。あとは、まだ自分の夢でなし得てないNHKの大河ドラマの語りも。ライバルである池田秀一さんが昨年すでにやってしまいましたから、先を越されましたね。洋画の吹替もユン・ピョウくらいしか持ち役がないので、いつかは『24-TWENTY FOUR-』のようなカッコいい刑事モノとか、大人の主人公をやってみたいと思っています。
―やりたい役が多くてビックリしました(笑)。生涯現役ですね!
古谷 いやいや、レギュラーがなくなったら辞めますよ(笑)。なんせ5歳から働いているので、できれば早く引退したいなぁと。アニメだけで50年ですしね。あと、ちょっと「スローライフ願望」みたいなものもあって、好きな趣味だけやって生活できればそれに越したことはないと思っていますけど、なかなか許してもらえない。
ただ、今やっている役やNHKのドキュメンタリー番組『クローズアップ現代+』のナレーションも好きなんですよね。全てやりたかった作品ばかりなので、それをやれていることはとても幸せ。本当は引退なんて言っていられないです(笑)。
今、モテ期がきてます!!
―そんな声優人生を謳歌(おうか)してきた古谷さんですが、自分の声の魅力や特異性に気付いたのは?
古谷 いつ頃だろう? でも僕は全然自分でいい声だと思っていなかったんですよ。だって星飛雄馬なんて、ダミ声というか“ど根性声”なので。アムロもどっちかというと美声ではないですし。
特徴的なのは声というより、喋り方だと思っています。声の魅力を意識しだしたのは『美少女戦士セーラームーン』のタキシード仮面くらいからですかね。ちょっとスマートなキャラクターじゃないですか。キャラクターに合わせて声を出したら、共演者の声優から「いい声だわ」と言われました(笑)。
―正直、タキシード仮面って、今までに演じられたキャラクターのイメージから離れていますが、最初にオファーを受けた時の印象は?
古谷 びっくりしましたよ! 「何これ、マジシャン?」と思って。すると「実は5人の女のコたちが戦士に変身して妖魔という悪い奴らをやっつけるんですけど、ピンチになった時に出てきて、彼女たちを助けるんです」と説明されました。で、「なんというキャラなの?」と聞いたら「タキシード仮面です…」「そのままじゃん!」みたいな(笑)。
そうそう、あれはオーディションがなかったんですよ。セーラー戦士の5人の女のコたちが新人声優たちだったので、スタジオがシマらないから、古谷さんみたいなベテランに入っていただいて、ビシっとシメてくださいと言われたんです。でも実際、アフレコ始まったらみんな美女声優なので僕は鼻の下を伸ばしてた(笑)。シメるどころか全然自分が緩んでたなあ…。毎週楽しかったです。
―タキシード仮面はモテキャラでしたが、古谷自身さんがモテていた時代は?
古谷 今じゃないですか? どっちかというと星飛雄馬より花形、アムロよりシャア、星矢より氷河みたいな。いつの時代もライバルがいて、主人公はモテないんですよ! 主人公がモテるのは小学生にだけ。やっぱりライバルのほうがスマートでカッコいいわけです。クールだったりもするし。だから女のコはそっちにいっちゃうんですよ。
未だにシャア専用グッズはたくさんありますけど、アムロ専用グッズはほとんどないですからね。切ないけど、そっちの方が人気なんですよ。だからやっとタキシード仮面くらいからそういうキャラができるようになってきたんですけどね。
でも、やはり今ですよ今! モテ期がきてますよ! 今年、「名探偵コナン20周年」で映画が大ヒットしたじゃないですか。おかげで映画が公開されてから2ヵ月ぐらいの間に、僕のツイッターのフォロアーが2万人増えましたからね。ビックリしました。それで僕のことを知ってガンダムを見始めるという方もいらっしゃったり。サボも映画デビューでしたし、両キャラクターが好きだという人も多いので「モテ期、きたー!」と(笑)。
少なくてもあと10年位は頑張らなきゃ
―じゃあ、これからウハウハですね! そんな古谷さんの理想の女性像は?
古谷 石田ゆり子さんかな。実際は存じ上げませんけど、日本美人みたいなイメージで。アニメキャラだとやっぱり鮎川まどかですかね。ガンダムでいうとチェーンかな。
―めっちゃ面食いじゃないですか(笑)。では、最後になりましたがファンへのメッセージをお願いします。
古谷 おかげさまでアニメデビュー50週年を迎えることができました。本当に僕は役や作品、それと時代に恵まれ、強運だったと思っています。大ヒット作品である『名探偵コナン』や『ワンピース』で魅力的な役をいただいているのもそうだと思いますし。これは今まで自分を支えてくださったプロダクションのスタッフや業界関係者、原作者の先生とか、そして何より応援し続けてくれたファンの方々のおかげだと思っていて、心から感謝しています。
それに『週刊プレイボーイ』も50周年ということで。僕が中学1年になる年からある、男のための雑誌、『週刊プレイボーイ』さんには、さんざんお世話になりました。これからも長いこと、ずっと魅力的な週刊誌であり続けほしい。男たちのバイブルであり続けてほしいと思っています。
少なくても、あと10年位は頑張らなきゃいけないと思っていますので、声優としてまたキャリアを積んでいくつもりです。これからも是非、応援してください。
(取材・文/三宅隆 撮影/下城英悟)
■古谷徹(ふるや・とおる) 1953年7月31日生まれ 神奈川県出身 ○1966年に『海賊王子』の主人公キッド役でアニメーションの声優デビュー。以来、『巨人の星』の星飛雄馬、『機動戦士ガンダム』のアムロ・レイ、『ドラゴンボール』のヤムチャ、『聖闘士星矢』の星矢、『名探偵コナン』の安室透、『ONE PIECE』のサボなど国民的キャラクターの声を数々務めた日本を代表する声優。また、『カーグラフィックTV』を初め、『クローズアップ現代+』などナレーションの分野においても活躍。今年、声優デビュー50周年を迎えたことを記念し、全国47都道府県を巡る無条件(無料)の『サイン会ツアー』実施中。その他、最新情報は公式ホームページhttp://www.torushome.com/、公式Twitter【@torushome】でチェック!