あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』。
前回、元プロレスラーの小橋建太さんからご紹介いただいた第33回のゲストは女優・タレントの倉持明日香さん。
AKB48のチームBでキャプテンを務め、卒業後はバラエティーからドラマまで幅広く活躍。元プロ野球選手の父親を持ち、スポーツ番組にも数多く出演、前回(「野球が好きか嫌いかなんて、倉持家では愚問すぎて…」)は自身のベースを形成したその“家族エピソード”から伺った。
さらに、プロレス好きを公言し、自らのキャリアに大きな影響を与えた激アツな“小橋愛”に話の熱が帯びーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)
―最初にそこいっちゃったら、ある意味、もうファンタジーだよね(笑)。
倉持 本当にファンタジーですよ(笑)。だから理想のタイプが高すぎるっていうのが一回、学生時代に悩みになりましたけども…。壁にブチ当たった感が(笑)。
―アニメのタイガーマスクを好きになるようなもので。現実にいない(笑)。
倉持 ほんと毎週『週プロ(週刊プロレス)』載ってるけど、いないんじゃないかって思うぐらい、雲の上の存在だったので…。それで、AKBに入ってからもプロレス好きっていうのを言うつもりは全くなかったんですね。ただ毎回、公演の時にお題があるんですけど、ある時のお題が「最近、一番嬉しかったことは?」だったんです。
もう、それは小橋さんの復帰しかなかったんですよ! 私の中では一大ニュースで。プロレス好きっていうのを言ってたか言ってないかってのも考えられなかった研究生の時で。それがいいとか悪いとかって考えにも達さなかったんです。
で、「私が最高に嬉しかったのは、大好きなプロレスラーの小橋建太さんが復帰したことがすごく嬉しくて!」って言った時に劇場がザワついたんですね。ファンの方って、なんでも受け入れてくれるので、普段はイエーイって喜んでくれたりとか。それが全くなく…。
―妙な戸惑いとリアクションに困る微妙な空気が?
倉持 なんか、シ~ンでもない、ザワザワ感。ザワザワザワザワっていう。「あ、これは言っちゃいけないこと言っちゃった」と。本当にその後の公演であんまり笑ってなかったくらい、そのまま終わって「今日はスタッフさんに怒られる…どうしよう」って思いながら。
―アイドルとプロレスで、なんか地雷踏んじゃったかなと。
倉持 AKBって、それ言っちゃいけないのかなってずっと考えながら。そしたら終わった後にスタッフさんが「もっちー、プロレス好きなの?」って。「俺、大好きなんだよ! 小橋知ってんの?」みたいになって。
―のってきた!(笑) まさにターニングポイントですね。
倉持 はい。で、終わってすぐ手紙を書いて下さるファンの方もいらっしゃって。「プロレス好きなのは嬉しかったです」とか。あれ? 思ってたのと違うって(笑)。その後も手紙が一気に増えたんですよ。劇場のこの250人の中にプロレスファンなんているわけないって公演やってたけど、結構な割合いで好きな方が多かったんですよね。
「倉持のアピールポイントは何?」って
―アニメだろうがアイドルオタクだろうが、バッティングしないところでプロレス好きは多いですからね。
倉持 そうなんですよ。こんなにプロレスファンいっぱいいるじゃんって、それがすごく嬉しくて。こういう、自分が育てるみたいな目線で成長していく過程を追いかけるとかに関しては、プロレスもAKBも似たところがあるのかなと思いながら。
―団体内でも切磋琢磨しながら高め合い、ライバルでもあり孤独でもあり、みたいな?
倉持 そう、仲間でもあり、戦ってるっていうところがあって。でも一番嬉しかったのは、握手会とかで直接「プロレス好きって聞いたんだけど、小橋建太のファンで」っていう方がたくさんいらっしゃって。「AKB全然わかんないんだけど、小橋建太好きって言ってたから」って来てくれたりとか。
「あ、嬉しいです!」って小橋さんの話をただただするだけの握手会っていう(笑)。だけど、こんなに仲間がいたんだっていうのが嬉しくて。私の中でひとつ、開けた瞬間でしたね。自分の好きなことを言っていいんだって。
―それがまた誰とも違う自分の個性であり強みにもなって。自信を持つきっかけに?
倉持 それまでは自分の個性なんて、何って言われてもわからなくて。周りはやっぱり人と違う部分をキャッチフレーズにしてる人が多かったんですよね。例えば、チャームポイントは目が大きいところですとか。
私はそれがずっとなくて、高校3年生・17歳、18歳の倉持明日香です、しか言ったことなくて。その当時、「倉持のアピールポイントは何?」って言われた時に「わかんないです」って。
―今どき2世タレントもいっぱいいるけど、お父さんが元プロ野球選手で野球解説者だっていうのも、あえて表には出さずに。
倉持 それも隠してたんですよ、最初。私は野球やってなかったし、言ってもなぁぐらいの感覚で。特にAKB入った時には、全く世間にもバレてなかったので。
だから個性ってなんだろうって考えた時に、自分がずっと好きだったものが意外と個性だったりするんだなって。その時、知ったというか。気付かされたのはありましたね。
―今となれば、育った環境もだいぶ異色だったわけですが(笑)。でも逆に言うと、そこまでスゴい自信とかもなく、よく漠然とした気持ちだけで芸能界に飛び込もうと…。
倉持 ほんと、よく飛び込みましたよね。でも悔しさしかなかったです。羨ましさ、悔しさ…。元々、本当に目指したのはSPEEDさんがきっかけで「私もこのTVの中の人になりたい」って。歌って踊りたいって言ってたのがきっかけなんですけど。
AKB48に入ったのも、劇場公演を1回見た時に、私は歌とダンスを習いたくてお金払って行ってたんですけど、このコたちはステージの上でマイク持って、照明当たって、可愛い衣装着て、お客さんがサイリウム振って…なんでこんなキラキラした中に自分と同じ年みたいなコたちがいっぱいいるんだろうと思って。
悔しいと思ったんですよ、それ見て。羨ましい20、悔しい80ぐらいの気持ちがあって、「私、受けます」ってオーディションでAKB48に入ったので。だから、自分に何があるんだろうとか考える以前に、本当にきっかけは悔しさ。歌とダンスが好きっていうだけでこの世界に入って…。
「不自由はしてないけど、贅沢はしてなかった」
―そもそもはSPEEDだったんだ。某フリー百科事典には「父のようにTVに出る人になりたい」と進路を決定したってなってましたが。書き換えないと(笑)。
倉持 違います、違います!(笑) お父さんみたいになりたいんじゃなくて、いつか「倉持明の娘さん」っていうのを超えたいなっていうのは思いますけどね。
―ある意味、もう超えてる部分はあるのでは?
倉持 いや、でもやっぱり一緒にロッテのQVC行った時にサイン頼まれたり、写真頼まれるのは父なんですよ。しょうがないんですけど、それがまだまだだなと思って。
―まぁそれは微妙な(笑)。自分にとってホームの場所でそうならなかったら、お父さんも寂しいだろうし…。
倉持 でも、そこで私のサインが欲しいってまでなったら、父も喜んでくれるかなというのがあって。「どうせやるなら最後までやれ」って言われて、この仕事始めたので。
―なるほど。確かにそこまでいけば大きな親孝行でしょうね。
倉持 元々、芸能界に知り合いとかいたのもあって、あまり父は好きじゃなかったみたいなんですね。本当は普通に高校まで行って、大学行っても行かなくてもいいけど、普通のサラリーマンの人と結婚して、普通に子供産んで主婦になって、平凡に暮らしてほしいっていうのが夢だったんですよ。
―娘をプロスポーツ選手にすることを断念してからは?(笑)
倉持 そうなんです(笑)。誰からも注目されることなく普通に生きて、夕方に仕事終わったら、旦那さんが夜に家いるような普通の家庭であってほしいっていうのが一番望んでたところで。
―やっぱりプロ野球という厳しい世界で生きてきて、そういう苦労もよくわかってるだろうし…。実は最初に僕がお父さんにお会いした時、副業もされていてね。その名刺もいただいて、こういうこともやって家族を養ってるんだみたいな、セカンドキャリアの大変さを感じたのが印象深くて。
倉持 そうなんですよ。だから本当に解説者やれてるのは恵まれてたんですけど、いつ仕事なくなるかわからないし。
元プロ野球選手の娘さんだもんね、みたいな感じで言われることも多いじゃないですか。でも、そんな恵まれてますって生活をずっとしてきたわけではないし。不自由はしてないけど、贅沢はしてなかったので、普通の家庭と同じですっていう。そういう価値観で育ててくれたのかもしれないし、それはよかったですけどね。
だから今、父が一番スーパーに買い物行ってるので「お母さん、レタス高かったから違うの買ってきたよ~」とか。一番シビアなのも父なので(笑)。
「駆け落ちみたいなのしちゃうかも(笑)」
―主夫として(笑)。でもそういう両親に個性も育まれた感じで。真っ直ぐ素直にというか。しかも、娘はまだちゃんと自宅にいるしね(笑)。
倉持 そこはある意味、父と母に感謝してますね。ただ、兄ふたりも結婚するまで家は出なかったですから。ひとり暮らしも一切せずに。で、私も花嫁いくまで家から見送ってあげたいって母に言われて。今、もう父と母と私しかいないですし…。
―なんか昭和のホームドラマができそうな(笑)。まぁそれだけ家族の絆が強い倉持家だと寂しがって大変かも。
倉持 そう、寂しがっちゃうかなっていうのと。私いないと、家がすごい静かになるので、なんか一気に老けちゃうんじゃないかなって。
朝起こすの面倒くさいとか、ご飯も一人分多く作るの大変だよとかあるかもしれないけど、それもお父さん楽しんでるのよって母に言われて。例えば、駅まで迎えにくるのも、いいよ来なくてって言っても来てくれたりとか。家族のために何かしてあげたい人なんですね、父が。家族のために何かして生きていたい人らしいので、それを私がとらなくてもいいんじゃないかなと。
―なんて、いい娘なんですか! 親だったら今、泣けてますよ。本当に。
倉持 いやいや、私は家にいるだけなんで(照)。
―でも、ある意味、反動が怖いパターンだね。ファンタジーだった自分の“リアル小橋”がそのうち現れたら…。
倉持 駆け落ちみたいなのしちゃうかもしれないですね(笑)。そう、確かにお父さんに会わせるのが怖いんですけど…。でも小橋さんみたいな人だったら完璧OKなんですよ。
私がプロレスの過去の名試合とか家で観てるんですけど、最近はお父さんも一緒に「お~」とか言って、ふたりでずっと観てて。小橋さんの試合とか、ウルウルしながら「カッコいい、ヤバい…」とか言いながら。そしたら父も「あ~、カッコいいな、小橋な~」って言ってくれて。
―いやいや、それはリアルじゃないし(苦笑)。…でもほんといろんなことがイイ感じに繋がってますね。プロレス好きをカミングアウトして、それがAKBでも活きて、そして今ではプロ野球の始球式までいくつも経験するほどに。
倉持 そうなんです。やらせてもらってますよね。今、5球団ぐらいなんですけど。
―最近“神スイング”の稲村亜美ちゃんも席巻してるけど、元祖は明日香ちゃんくらいな。全球団制覇したい!って意気込みもあるでしょ?
倉持 したいぐらいですね。でもまさかそんな思ってなかったので。父が一番びっくりしてました。「俺の次にマウンド上がるの、おまえだと思わなかった」って(笑)。お兄ちゃんふたり、小ちゃい時から高校までずっと野球やってきてるのに。
「お父さん、キャッチボール明日やろうよ」
―ほんとスゴいよね。息子が叶えてあげられなかった夢をまさか…しかも娘の始球式でバッテリーを組むという晴れ舞台まで実現させてあげるなんて。
倉持 毎回、始球式の前からずっと練習するんですけど。それがすごい嬉しそうですね。「お父さん、キャッチボール明日やろうよ」って言うと、「おぅ」って言って、もうグローブがリビングのテーブルに置いてあるんです、寝る前に。「お父さん、もう用意してるんだ」「どんだけ楽しみにしてるんだろうね~」ってお母さんと言って(笑)。
―また、そのままホームドラマになっちゃいます。泣けるエピソードだなぁ。
倉持 で、家の近くでキャッチボールずっとして。私は普通に帽子被って、ド素っぴんで後ろ髪結んで、Tシャツにジーンズで。
そこを通るお母様方とかいるんですけど、女だと思ってなくて、近く来ると「あ、娘さんよ」みたいな感じで、結構ザワつきながら通っていくんですけど(笑)。それで父とふたりでキャッチボールするのもなんか楽しかったですね。
―なんかイイ画が思い浮かぶなぁ。ほんと、父親冥利に尽きるでしょうね。
倉持 私もまさかハタチ超えて、25超えて、父とキャッチボールすると思わなかったです。楽しかったですね。
●続編⇒語っていいとも! 第33回ゲスト・倉持明日香「小橋さんより私はいい人を見つけて結婚します」
●倉持明日香 1989年9月11日生まれ、神奈川県出身。AKB48の元メンバー。父親は元プロ野球選手の倉持明。2007年にAKB48の研究生として合格。翌年、チームメンバーへと昇格する。在籍時はキャプテンを務めるなど信頼も厚かった。プロレス好きを公言し、プロレスファンからも厚い支持を受けるようになると、大ファンである小橋健太の引退試合で花束贈呈を務めるなど交流が生まれた。2015年8月、AKB48を卒業。現在は女優、タレントとして幅広く活躍。
(撮影/塔下智士)