人生初の新書『日本人失格』を執筆したロンドンブーツ1号2号の田村淳氏

昨年まで週刊プレイボーイ本誌にて「天空のブランコ 田村 淳の脳内両極論」を連載し、歯に衣着せぬ物言いで常に注目を浴び続けるお笑いタレント、ロンドンブーツ1号2号の田村 淳(たむら・あつし)が、人生初の新書『日本人失格』(集英社新書)を執筆、刊行した。

TVの現場で感じていることや日本社会に感じる息苦しさ、若い人たちへのメッセージなど、リミッターを外して“まんま”のメッセージを表現し切れたと自負する芸能界のトリックスターが、執筆の意味と自らの立ち位置について語ってくれた。

「右向け右」の日本社会に物申した田村 淳が考える“日本人合格”の条件には、強烈な批判と皮肉が詰まっていた!

* * *

―2月17日に集英社新書から『日本人失格』が発売されます。初の新書を手がけられて、どうですか。

田村 そうですねえ、満足感はすっごくあります。というのも、これまで僕はツイッターを使ったりして、自分の思っていることなどを発信してきたんですけど、そこはやはり制御ボルトを付けてのメッセージを放っていたんですね。なにせボルトを外しちゃうと、表現がストレート過ぎてしまうのか、確実に炎上しますから(笑)。ややこしいことにもなりますし。

ま、ツイッターとかは文字制限があったりしますから、どうしても誤解が生まれちゃう。それもあって、書く時はそれなりに言葉を選んで慎重になってしまうんです。

―ええ、はい。

田村 だけど、新書を出しませんか、とオファーを受け、取り組み始めると、どんどん言葉が溢れ出てきて――。

―新書も厳密にいえば文字制限もありますが、別にないようなものだと。

田村 そうなんですよ。ツイッターよりは、めっちゃ書ける(笑)。それだから…あれ? 僕は何を言おうとしたのかな…。あ、だからそうそう、新書では制御ボルトを付けずに今、自分が思っていること、考えていること、伝えたいことを目一杯ぶち込めたんです。

誤解されそうな事柄も文字制限がない分、しっかりと言葉を尽くして説明できている。つまり、まんまの田村淳が表現されていると思ってもらえれば。ツイッターはなんか寸止めみたいなところがあるけど、『日本人失格』は勢いよくイッちゃってます(笑)。

―確かに、内容的にはかなり過激というか…。

田村 どうなんだろう。それは読んでくださった人が判断すればいいわけで、僕はあえて過激なものにしようという意識はなかったです。アニキっぽく“こうしろ”みたいな上から目線の感じでは書いてないですし。新書という舞台で思いっきり、オブラートに包まない剥き出しの素の意見を連発しただけなんで。

何より、今までいろいろと事務所から規制されたり、自分自身で規制していた部分を取っ払った主張を活字に乗せて展開できたのはとても新鮮でしたし、すっげえ気持ちよかった。そういう意味で、今の気分を問われれば『満足しています』という答えになりますね。

何をするにしても常に批判の対象になっている

―逆に、制御ボルトを外しての主張の展開に怖さを感じませんでしたか?

田村 怖さというのは、あまりにも書き綴った内容がストレート過ぎて批判的な意見が集中するってこと?

―そうです、そうです。

田村 う~ん、まぁ僕の場合、書籍だけじゃなく、TVのMCにしろ、何をするにしても、常に批判の対象になっているじゃないですか。たぶん、揚げ足を取られやすく、足を引っ張りやすいタレントのひとりだと思うんですよ。なんかこう、背中にヒモみたいなもんがブラ下がっていて、いつも誰かがそのヒモを引っ張って引きずり落とそうと虎視眈々と狙っているような、そんなイメージがある(笑)。

―自分を客観視してるというか、それは実にわかりやすいイメージ。

田村 もしかすると、世の中的に僕って、ズバ抜けた才能がないくせにTVの中で威張っているみたいな受け止められ方をしているのかも。そう思われているから、余計に背中のヒモを引っ張って、引きずり落としたくなっちゃうんじゃないですかね、僕を嫌いな人たちは。芸能界においてそういう位置にいるんだなってことは僕自身、昔からよくわかっているんです。

けど、引っ張られて潰れるようなタレントにはなりたくねえなと思ってて。例えば、僕が不倫をして、それをネタにすんげえ数の人たちが一斉にヒモを引っ張ったとしても、結果的に“あいつ、なんだかんだありながら元の位置に戻ってるぜ”と言われるようなタレントでありたいな、とは思ってますね。

―なるほど、はい。

田村 だから、『日本人失格』を読んでくれた人たちの何人かが、書かれている内容を格好のネタにして、嬉々として背中のヒモを引っ張ろうとするはず(笑)。それはもう、想定内なんですけど、僕の意見に賛同してくれる人たちもたくさんいると思うんですよね。そういう人たちって、なかなか表に出てこないんですよ。逆に、今の時代はネガティブな意見ばかりが偉そうな態度でひとり歩きしている状態ですし。

そんな感情に任せたマイナスの意見に、企業やメディアが振り回されている現状はいかがなものかと思いますけどねぇ。もっと自分たちが提供しているものに自信を持てばいいのに。『日本人失格』も、マイナス意見がいっぱい出てくる話を提供してますが、そういう負の意見よりも賛同の意見のほうが多いだろうと信じてはいます。

◆後編⇒“日本人失格”に誇りを感じているロンブー・田村淳 「人に踊らされた人生ってつまんないじゃないですか。疲れるだけ!」

『日本人失格』集英社新書 720円+税