漫画家・コージィ城倉氏(左)とちばあきおプロダクション社長・千葉一郎氏 漫画家・コージィ城倉氏(左)とちばあきおプロダクション社長・千葉一郎氏

昭和を代表する漫画『キャプテン』の主人公・谷口タカオが高校の弱小野球部で甲子園を目指すその後を描いた『プレイボール』。その続編を『グラゼニ』原作でも知られる漫画家コージィ城倉(じょうくら)が描く!? 

その発表は大反響を呼んだが、そこに至った経緯と気になる作品の展望を、ちばあきお氏の長男である千葉一郎氏と語ってもらった!

■「実は大変なことやるんだ!?」って……

―奇跡の復活です! 昭和53年(1978年)に連載終了した『プレイボール』の続編がまさか今、読めるとは! そもそもの経緯って…。

千葉 『キャプテン』や『プレイボール』って、昔からの読者が今なおファンでいてくださるんですけど、それを今の若い人たちに知ってもらう機会がつくれないか、ここ数年考えていたんです。このまま父の作品が過去の作品として埋もれていくのは寂しい。できれば、時代に沿った新しい形で訴えられたらって。

そこで『グランドジャンプ』でコージィ先生に声をかけてくださって、新作を描き下ろしていただく話になって。

コージィ 最初は確かスピンオフのオファーだったと思うんですよ。10年後に谷口君が監督をやるのはどうかみたいな。でもそれってありがちといえばありがちだし、期待外れなものになりかねない。

たとえ新規の読者を開拓するにしても、こういう続編モノって昔ながらのファンを納得させないと成立しないですから。『プレイボール』って、谷口君が高3になり新たに丸井とイガラシが入ってきて、これからというときに終わっちゃう。みんなの期待を裏切らないのはやっぱり続編なんじゃないかと。

千葉 私自身も描いていただくのはスピンオフだと思ってたんで、続編と伺ったときは正直驚きました。と同時に、どんなものになるか想像つかなくて。でも実際に先生とお会いしたら“ちばイズムとは”って話を熱く語ってくれたんです(笑)。それを聞いて、これは間違いなくいい作品になると確信して。

コージィ 僕は日本で一番、ちばてつや&あきお兄弟を理解してる漫画家だって自負がありますから(笑)。ただ最初は軽いノリで考えてたんです。それが情報解禁をした途端、ものすごい反響があって。「あ、俺、実は大変なことやるんだ!?」って(苦笑)。

神経が1本、飛んじゃってるからやれた(笑)

千葉 ウチにもある大御所の漫画家さんから「本当に?」って連絡がきたんです。ネットを見たらたくさんの読者がコメントをしてるし、これはすごいことになるなって。

コージィ 告知用にあきお先生の絵で谷口たちを描いて、その横に「何も足さない、何も引かない」って書き添えたんだけど、それがインパクトを与えたみたい。まさかあの絵でそのまんまをやるなんてみんな思ってなかったみたいで。スピンオフならあそこまで反響はなかったなと。

千葉 あの絵を見た瞬間、私自身も胸が熱くなりましたから。母にもすぐ見せたんですけど、本当にお願いしてよかったなって。

コージィ でもこれは天に唾(つば)する行為でもあるんですよ。オリジナルを汚す可能性があるし、自分自身のリスクも高いですから。たとえ絶賛されても、それは自分のアイデンティティを変えて描いてるわけで、作家として喜んでいいのか(苦笑)。きっと物事を深く考えちゃうタイプならできなかったって。

僕はアホで神経が1本、飛んじゃってるからやれた(笑)。プレッシャーもすごいだろうと思われてるけど、実は意外とノンプレッシャーで描かせてもらってるんですよ。

★続編⇒『グラゼニ』原作者が名作『プレイボール』続編に挑戦! “何も足さない、何も引かない”真意とは…

(取材・文/大野智己 撮影/五十嵐和博)

■グランドジャンプにて連載中! 『プレイボール2』のあらすじ キャプテン・谷口の最終学年となる春、墨谷高校野球部に墨谷二中の後輩イガラシや江田川中の井口など有望な新人が入部。前年に編入してきた丸井も含め、態勢は整った! だが甲子園常連校の谷原高に練習試合で大敗、チームを立て直すために谷口は……。

●コージィ城倉(COZY JOHKURA) 1963年生まれ、長野県出身。89年にデビュー、代表作に『愛米(ラブコメ)』『おれはキャプテン』『チェイサー』ほか。森高夕次名義で原作者としても『グラゼニ』『江川と西本』など多くの連載を抱える人気作家に

●千葉一郎(CHIBA ICHIRO) ちばあきおの長男として現在は作品の企画・管理をするプロダクションの社長を母親から引き継ぐ。兄はちばてつや、弟は七三太朗という漫画一家である父親の遺伝子を継ぐ