『監査役 野崎修平』では様々な俳優人生初めてを経験したという織田裕二さん 『監査役 野崎修平』では様々な俳優人生初めてを経験したという織田裕二さん

1990年代後半に連載された傑作コミック『監査役 野崎修平』(原作・周 良貨 漫画・能田 茂)の実写ドラマが1月14日(日)よりWOWOWで放送開始となる。

バブル崩壊後の銀行を舞台に改革を叫ぶ主人公・野崎修平を演じるのは、昨年12月に50歳を迎えた俳優・織田裕二

前編記事に続き、デビュー30年を迎えたベテラン俳優が原作者へ赤裸々に語る、漫画原作ドラマの難しさとは――。

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―野崎修平というキャラクター像を自分の中に落とし込む際に、何か意識したことはありますか?

織田 いや正直、原作を読んだ時に野崎があまりにスーパースターだったんでこれは大変だなと思いましたね。考えずに演じたら、気取った人になってしまうと思って。

―最初は支店長ですからね。

織田 そうなんです。なので、もうちょっとこう、人の顔を見ている銀行員にしたほうがいいなって。支店長時代の場面でも、お客さんの顔がすごく見えるんですよ。そこから監査役として本店へ異動するんですが、ともすると数字をにらむことに麻痺して、人の顔が浮かばなくなるかもって、勝手に感じたんです。

―支店と本店では、扱う金額も違いそうです。

織田 なので「この数字の裏には多くの行員、その家族、そして顧客、家族…と多くの人間が関わってる」などと“野崎は肌感でわかってる”空気を出したかったんです。

―なるほど、庶民的な。

織田 本店の人間としては、もっと合理的に冷静な判断を下すことも必要だと思うんですが。ただ野崎は少し違うので、支店目線からスタートしてみようかなと。

―ただ序盤は、その正義感で痛い目に遭う場面もあるわけですが…。

織田 総会屋との場面ですが、監督がおおっきな役者さんを用意してるんですね。まぁ~、迫力がある(笑)。

―それ、役者さんとわかってても怖いですね(笑)。

織田 「力」の象徴というか、わかりやすい。でも野崎には17歳の娘がいる。これ戦うとなると、正直厳しいなと(笑)。

―人質を取られてるようなものですからね。

織田 分の悪さをわかった上で戦う厳しさを強く出さないといけないんですね。愛する妻と17歳の娘がいる人と、独身とでは戦い方が変わってくるんで。限られた時間の中でそこは大事にしたかったところですね。

 野崎は悪い奴がいるからやっつける、みたいに単純じゃないんですよね。最初はおおぞら銀行に憧れていたのに、信じることだけではうまくいかなくなって、だんだん戦い方が変わってきますので…。織田さんにはほんとに深く、理解していただけているなと感じます。

織田 WOWOWでの放送なので、作り手の意識を含めてリアリティが重視されているんですよ。地上波だったら、「深い理由をとばしてヒーローにしちゃいましょう」というふうに、気楽なエンターテインメント作品として作ることもあるんですが。WOWOWのお客さんは、それだけでは満足しないだろうって。

―セットも凝ってると聞いています。

織田 20年前の設定なので、スーツがズドンとしてますね。携帯電話も昔の懐かしい機種だったり、今だったら考えられないですけど、会社のデスクに灰皿が置いてありましたね。ライトバンも出るんですけど、排気ガスがものすごく臭い(笑)。カメラじゃ映んないんですけど。

撮影中、こんなにビールを消費したのは初めて

 引き画を多用したカメラワークも多い。演者がみんな映り込むため、本当に手が抜けなかったと織田さん 引き画を多用したカメラワークも多い。演者がみんな映り込むため、本当に手が抜けなかったと織田さん

■このドラマにはビールが必要!?

―撮影中の思い出はありますか。

織田 ほぼ毎日、帰ってビール飲みたい気持ちでいっぱいでした(笑)。

 どういう気持ちですか(笑)。

織田 戦ったシーンの撮影後って、普通はスッキリして帰れるんですよ。でも銀行の戦いって単純ではないので、なかなか結論にたどり着かないじゃないですか。でもそのモヤモヤを自宅に持ち帰るわけにはいかなくて。しかも野崎ってベロンベロンになって「あの上司が、ばかやろー」ってクダを巻くキャラでもないですし(笑)。

―日常からキャラを意識するんですね(笑)。

織田 ビールを1、2本飲んで軽く寝て。ひとりの時間になったら今日のことを考えて。明日には絶対に持ち越さないっていう生活でした。こんなに撮影中にビールを消費したのは俳優人生で初めてですよ(笑)。

そもそも飲まなくても平気ですし、例えばバーテンダーの役に入っていれば、一杯やってから帰ることもあるんですけど。今回はいつもビールを買っていましたね。いやー…つくづく、サラリーマンの方ってすごいというか。これくらい大変なことを毎日やってらっしゃるんだなって。

―俳優業とは違いますか。

織田 僕の場合はまず自分の意思があって。演技の評価がその後の仕事に直結するという厳しさはありますけど、ある程度は仕事を選べるんですよね。でもサラリーマンの方はそれができないじゃないですか(笑)。

いろんな不満を飲み込みながらも前向きに自分の会社を良くしようっていう、ポジティブなエネルギーを持ち続ける大変さを思い知りましたね。社内の問題で悩んでいるとか、悔しさを味わったことがある人には共感を持ってドラマを観ていただけるんじゃないかなと思います。ビール片手に、でもいいんで(笑)。

 そういえば、確かに漫画にはあまり飲むシーンはないですね。…そしたらドラマの中にたくさん出したらいいんじゃないですか? 新橋で飲むシーンを(笑)。

顔が変になるくらい、ずっと叫んでました(笑)

■この人間ドラマ、若い人にも観てほしい!

―では最後に、ドラマを楽しみにされているファンの方へお願いします。

織田 「監査役」…というと堅そうですが、これは「銀行を舞台にした人間ドラマ」ですので、若者にも観ていただきたいです。こんなに顔面が痛くなる芝居をしたのは初めてだってくらい、野崎は戦います。

―顔面が痛くなったのは、どうして…(笑)。

織田 顔が変になるくらい、毎話あるかもしれないんですけど…ぐぁーって、ずっと叫んでまして(笑)。うるさい!と思わず観ていただけたら(笑)。

 僕はもう視聴者として楽しもうかな、と(笑)。

織田 はっはっは(笑)。

 本当に話を聞いて、めちゃくちゃ面白そうですね。楽しみにしてます!(笑)

織田 お話を伺えて、本当に僕も楽しかったです。もう、先生とは取材とか抜きにして、オフレコでお酒飲みながらいっぱい喋りたい(笑)。

 じゃあ銀行マンらしく、新橋行きましょうか(笑)。

―うわぁ、それ実現したらいいですね(笑)。ありがとうございました!

(取材・文/おげんき[オムカレー]撮影/長谷部英明)

織田裕二(おだ・ゆうじ) 俳優。1967年12月13日生まれ、50歳。1987年に映画デビュー。91年のドラマ『東京ラブストーリー』でブレイク。以降『振り返れば奴がいる』『踊る大捜査線』などドラマや映画に欠かせない存在となる。『世界陸上』などキャスターとしても活躍中。

周 良貨(しゅう・りょうか) 漫画原作者。大学卒業後、都市銀行に入行するも退職し、文筆業をスタート。のちに漫画原作者となる。銀行員だった経験を活かし、経済をテーマにした作品を多く手がける。

■連続ドラマW『監査役 野崎修平』 2018年1月14日(日)よりWOWOWにて毎週日曜22:00~(第1話無料放送)。番組特設サイトをチェック!

(ヘアメイク/中嶋竜司[HAPP’S.] スタイリスト/大迫靖秀 衣装/ラルフ ローレン パープル レーベル[※問い合わせ先 TEL:0120-3274-20])