関西で絶大な人気を誇る『吉本新喜劇』。座員は80代の超ベテランから20代の若手までさまざま。
それをうまく取りまとめるのが彼女の新しい仕事だ。
誰からも愛されるキャラはどのようにつくられるのか!? 実社会でも役立つそのテクニックを聞いてみた~!!
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【ヨイショ術 その1】できないことは「教えてください!!」
―“最年少座長”として半年。周りは先輩が多いと思うんですが、どうやっていい関係を築いてるんですか?
酒井 そうですね。座長になる前は「やりにくいこともあるやろな」と思ってたんですけど、実際なってみたら私が何もできなさすぎて逆に先輩から「好きなこと言えよ」と気遣ってくれることが多いです。「教えてください」の姿勢がいいんですかね。「すみません。そのやり方気づかなかったです。ありがとうございます」っていう感じで、82歳の長老・桑原(和男)師匠とかも「ここで、乳出したらええんやな」とか、協力的にやってくれます。
【ヨイショ術 その2】意見するときは頭を地面より下に
―でも、やっぱり先輩に意見しないといけない場面もありますよね?
酒井 どうしても言わなあかんときはホンマに床じゃなく地下に頭があるくらいの低姿勢で「このボケ最高なんですけど、ちょっと時間がなくてすみません」って言ったら、それで「フン!」って怒る人はいないですね。
―先輩のボケを編集でカットするときの話ですね。
酒井 新喜劇のテレビ放送は45分にまとめなくてはいけないんです。全員が集合してカット候補を伝えるんですけど、その前に個別で先輩のところに行って先手を打つんですよ。「ちょっと、ここ」と前振りを入れておく。その後みんなの前では、初めて発表するかのように伝える。先輩への根回し力というか特別な配慮を見せることも大事ですね。
先輩へのダメ出しは!?
【ヨイショ術 その3】仕事への愛を伝える
―時には、先輩にダメ出しもしないといけないのでは!?
酒井 セリフの言い方を変えてほしいなと思うときは「この言い方も師匠さすがですね~。めちゃくちゃいいですね~。最高ですね~。でも、こっちの言い方も一回だけしてもらっていいですか」とめちゃくちゃへりくだります。
―それちょっといや味すぎません?(笑)
酒井 でも、考えてやっていただいたことを、「ありがとうございます。最高です。素晴らしいです」と思う気持ちは本当で、今、新喜劇があるのは師匠や先輩方のおかげだと思ってます。その仕事への愛情を本気で伝えて、こんなのはどうでしょうというカードを出すようにしています。
【ヨイショ術 その4】後輩へのアドバイスも持ち上げてから!!
―ちなみに後輩に注意するときはどうしてるんですか?
酒井 後輩にも同じで、「これあかん、あれあかん」じゃなくて「これ考えたん? すごいやん!」とひと言入れてから変えてもらったりしてます。
―褒めて伸ばす感じですね。
酒井 はい。私が褒められて小躍りするタイプなので(笑)。新喜劇ってまじめな芝居をしてくれる脇役的な後輩がいるから、私たちボケが引き立つので「ありがとう! 助かってます!!」みたいな感謝を伝えることがやっぱり大事やと思うんですよね。
◆後編⇒日本一、先輩から好かれる「吉本新喜劇」初の女座長に学ぶ“愛されヨイショ術”とは?
●酒井 藍(さかい・あい) 1986年9月10日生まれ、奈良県出身。2017年7月、30歳のときに吉本新喜劇の座長に就任。新喜劇史上初めてのレギュラー女座長として注目を集めた。元警察官で、人のことを気遣う姿勢はそこから学んだと語る。 「吉本新喜劇全国ツアー2018」が3月21日(水・祝)広島・上野学園ホールを皮切りに開始予定! また、本人主演の映画『女子高生探偵 あいちゃん』は3月17日(土)より全国順次ロードショー予定!
●インタビューマン山下(聞き手) 1968年10月29日生まれ、香川県出身。お笑い芸人を引退後、フリーのインタビュアーに。芸人の気持ちがわかる身として、酒井藍の魅力を引き出す!!
(撮影/石川耕三)