女優・谷村美月さん(右)と彼女のファースト写真集『花美月』を撮影した写真家・関めぐみさん(左)
2008年1月に発売された、女優・谷村美月のファースト写真集『花美月』(集英社刊)。

当時から数々の映画やドラマに出演し、同世代のなかでも"演技派女優"として群を抜く存在だった谷村。そんな彼女の17歳の姿を詰め込んだ1冊がデジタル復刊され、10月15日(月)より配信スタートする。

この写真集のデジタル化を記念して、撮影を担当した写真家・関めぐみさんとの対談が実現。撮影の思い出話に花を咲かせた前編に続き、後編では写真集発売からこの10年、これからの10年について女性同士のさらに深い話までを聞いてきた。

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――女性カメラマンである安心感もあり、距離の近さを感じられる『花美月』。お二人は、この写真集をきっかけに出会ったんですか?

関 谷村さんが出演する映画『檸檬のころ』(2007年公開)のスチールを担当してたんですけど、それが初対面でしたよね?

谷村 そうでした! ちょうど最近、あの映画を観たんですよ。あれが出会いだったんですね......すごい。

関 初対面といっても、撮影の空き時間で15分くらい。他の出演者さんたちもいたので、直接お話する感じでもなかったと思うけど。

谷村 私の中では、すごい印象的だったんだと思います。今でも覚えてますから。それがご縁で写真集もお願いしたんじゃないんですか?

 いや、写真集はたまたまです。たぶん谷村さんが活躍してたから何度もお会いするというのもあると思うんですけど、すごい数の作品に出てましたもんね。

谷村 今はひとつひとつの作品の間に時間ができるんですけど、当時は空く時期が全くなくて、あれよあれよと仕事が詰まっていて......すごかったなぁ。あの頃に戻りたいとは思わないです(笑)。

 どうしてですか? 忙し過ぎたから?

谷村 はい、考えるだけでしんどくなるんですよ。あの勢いのなかにいた自分が信じられないし、良くも悪くもいい加減にできたんだと思います。そうでないとあれだけの仕事量はこなせなかったので、いい加減さも大事だったんだなと今はひしひし感じています。

 仕事だけじゃなくて、学校もありましたもんね。

谷村 そうなんですよ。大阪の学校へ行きながらのお仕事だったので、信じられない(笑)。ダンスの部活もやっていたので、そういう学校での活動が原動力になってたとは思うんですけど。

――2008年だけでも『神様のパズル』や『おろち』など、映画やドラマに立て続けに出演。学校もあるなか、気持ちの切り替えが大変だったんじゃないですか?

谷村 最初は全然切り替えてなくて。作品が頭に残ったまま学校へ行って、テストを受けて、高校生のテンションのまま違う現場に入るような生活でした。取材で初めて"切り替え"という言葉を知ったんです。そこから"気持ちって切り替えていいんだ"とわかって(笑)。当時は取材されるときも、"演技派"と言われたりして同世代とは扱われ方がちょっと違うような気もしていて。

 10代は演技の経験がそれほどないから、演技が上手い人って貴重じゃないですか。単純にそういうことだと思いますよ。

谷村 演技が上手い基準は自分ではわからないので、あの頃の状況ってなんだったんだろうって今でも思います。たぶん、学校が青春だと思ってる自分がいるんでしょうね。その青春が抜け落ちてるところが演技にも影響してるだろうし、今の自分を作ってると思います。

 大変だったんですね。そんな貴重な10代のお時間を撮影のためにいただき、ありがとうございました!

――あれから10年。今、改めて谷村さんを撮るとしたら、どう撮りたいですか?

 どうしましょうね。一緒にお酒を飲みながら、相談したいですね(笑)。

谷村 そうですね! 撮影の打ち上げしましたよね? みんなが飲んでるのに、自分だけまだお酒が飲めなくて。そのときのシーンを覚えてます! 透明のガラスに入ったお酒がすごいキレイで、あれはなんていうお酒ですか? 関さんが飲んでる姿をはっきり覚えてるので、よっぽどおいしそうに見えたんだと思います。

関 えー、なんだろう。カクテル飲む状況でもないし、沖縄だから泡盛じゃないですかね(笑)。10代のコを撮影するとき、いつも思うんです。乾杯したくてもまだ飲めないから「早くこっちこいよー」って(笑)。

――お酒が飲めるようになってるってうれしいですね。では、これからの10年、谷村さんに期待することは?

 写真集の撮影が終わってから会ってない間も「谷村さん、どうしてるかな?」と定期的にググったりしていて(笑)。撮った写真をセレクトしたり組んだりしながら、限られた時期に集中してその人のことを考えるので、写真集1冊撮った人には思い入れがありますよね。

谷村 ありがとうございます。仕事を辞めようと思ってた時期もあるので、辞めなくて良かった! こういうお話が聞けたり過去の作品を見たりすると、続けていて良かったなと思います。仕事への原動力が10年前とは違うところにあるんですかね。

――10年っていろいろありますもんね。ではご自身では、10年後の自分ってどうなってると思いますか?

谷村 10年後のことって考えられますか? 芸能のお仕事は先々どうなっていたいとか考えとかないといけないって言われるんですけど、目の前のことしか考えられなくて。いろいろ考えた結果、「ずっとひとりは怖いなぁ」ってところに辿り着くんです(笑)。

――そう言われると、10年先の未来なんて想像つかないですね......。では、こうありたいという願望は?

谷村 ちょっと前までは、"老けることはいいこと"という考えを重視していて。佇まいや居方を映像のなかに残せるように、年齢を重ねる意味でも老けることは悪いことじゃないなと。でも、最近はいろいろ手をかけないヤバイなという考えに変わってしまって(笑)。あれもしないとこれもしないとって、仕事ではなくて日常で忙しい状況が不思議です!

 10年前は仕事が忙し過ぎて、日常に目を向けられなかったから?

谷村 ずっと日常のことも考えてはいたんです。ただ、女優を将来の職業にすると思ってなくて。高校を卒業したらどこか就職して......と思っていたのに、タイミングを逃しちゃってここまできちゃいました(笑)。

 そうだったの!? 

谷村 卒業文集にも将来の夢を女優とは書いてなくて、タレントって書いてました。役者の仕事をしてても、女優と書けない恥ずかしさがどこかにあって。同じ学校にも子役のコがいたんですけど、その子はちゃんと女優さんって書いてました。

 その子は今も女優さん?

谷村 女優は......やってないです。

 そうなんだー。それだけ残る人が少ない世界だし、続いてるってやっぱりすごいことですよね。小学校2年生からだと、もうキャリア20年? ベテラン!

谷村 いや、言わないでくださいよ。余計にしんどくなります(笑)。

 私もカメラマンとして長いなって思うけど、貫禄がつかないの(笑)。

――そんないつまでも謙虚なおふたり。では最後に、読者にひと言お願いします!

 最近は開いてなかったんですけど、タイムカプセルを開けたみたいな感じでいいですね。フィルムの質感が気に入ってる写真集なんですけど、デジタルでもいい感じに出てるなぁと思います。既に持っている方も紙と見比べる楽しみ方もあるんじゃないかな。

谷村 今の私はこのインタビュー記事を読んでいただければわかるでしょうし、当時の私を知らない方は写真集でわかっていただけるかと思います。私のなかではずっと大事にしていた作品というか、なぜか気にかかる作品。過去の役のイメージを抱いてる方もいらっしゃると思うので、改めて見ていただけるとうれしいです。


●谷村美月 

1990年6月18日生まれ 大阪府出身
◯NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』や映画『プリンシパル』など多数出演。10月17日放送の刑事ドラマ『相棒season17』(テレビ朝日系)初回拡大スペシャルに出演! 2019年2月公演の舞台『天下一の軽口男 笑いの神さん米沢彦八』(大阪松竹座)にも出演予定。
公式ホームページ【http://www.horiagency.co.jp/talent/tanimura/


●関めぐみ

写真家。ワシントンD.C生まれ。広告や雑誌の撮影など幅広く活躍中。
書籍「8月の写真館」「jaipur」など。タレント写真集は谷村美月の他には大島優子(AKB48)、加護亜依、入江甚儀などを撮影。


■谷村美月写真集「花美月」デジタル版