「僕はもともと日本の俳優に否定的」と語る参議院議員の青山繁晴氏が、何気なく飛行機で見て「別格だ」と感じた日本人の女優とは? 「僕はもともと日本の俳優に否定的」と語る参議院議員の青山繁晴氏が、何気なく飛行機で見て「別格だ」と感じた日本人の女優とは?

『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。

今回のゲストは、作家にして参議院議員の青山繁晴(あおやま・しげはる)さん。実は大の映画好きということで、お話を伺いました!

* * *

青山 どうして僕が映画好きってご存知なのですか?

──連載を始める際に、「映画について語ってもらうとおもしろいだろうな」と思う方をリサーチしまして、青山さんにたどり着いたんです!

青山 もともと本職は物書きです。お金集めのパーティーをしないから自分で稼ぐしかなくて、平日も週末も関係なく、毎晩原稿を書いていますが、実は映画を見ながらじゃないと書けないんです。

──ええーっ!?

青山 家に仕事用の狭い部屋がふた部屋あって、ひと部屋に大きめのテレビ、もうひと部屋にデスクトップのパソコン、それぞれ違う映画を流しているんです。

──音も流しているんですか?

青山 前は音も流していたんですけど、今はラジオの音楽番組のDJをやっているんで、それ用にいろいろな曲を聞かなきゃいけなくて。映画は映像だけ流していますよ。

──つまり、映画2本と同時に音楽まで......?

青山 議員になってから毎週2時間の音楽番組のDJを始めたんです。だから、毎日クラシックからハードロックまで聞いています。原稿も同時進行が多くて、飽きっぽいから2部屋に4台パソコンを置いて、それぞれ別の原稿を書くんです。映画を眺めながら。

──えっ!? パソコンを動かすんじゃなく、自分が動くんですか?

青山 そう、自分が動くんです。

──はああ......すごい。映画はレンタルですか? それともストリーミングで?

青山 スカパーのスターチャンネルやFOXチャンネル、WOWOWなどをザッピングしながらですね。

──書きながら見るのは、知っている映画のほうがいいんですか?

青山 いえ、知っている映画だとおもしろくないから、知らない映画を探します。見つかるとしばらく止まって見ます。音は出てなくとも、その映画がおもしろいかつまんないかはわかりますよ。音を消して映画を見ているとね、表情とか背景とか逆に情報が入ってきます。

──なるほど。子供の頃に見た映画で、記憶に残っている作品はありますか?

青山 中1か中2の頃、リバイバルで見た『愛の調べ』(1947年公開)ですね。うちは家族で映画館に行く習慣がありましたが、その当時はつまんない映画だと思いました(笑)。

──だけど、覚えてると。

青山 ルービンシュタインのピアノが素晴らしかった。ドイツ・ロマン派の作曲家、ロベルト・シューマンの生涯を描いた作品です。もともとは奥様のクララのほうが有名なピアニストだったんですけど、親の反対を押し切って結婚します。

それからシューマンは偉大な曲をいっぱい作るけど、彼は精神を病んでしまう。それ自体は悲惨なんだけど、愛に貫かれた生涯ですね。原題は『Song of Love』です。

──今、音楽番組のDJをやられていますが、そこにつながる感じがありますね。ほかに思いつく映画は?

青山 うーん、たくさんありすぎるけど......。例えば、『NANA』(2005年公開)とかね。

──あのマンガ原作の!?

青山 そうです。マンガ原作ということを知らずに飛行機内で見ました。

──なるほど! 僕も『NANA』って機内で見た記憶があります。海外に行くときって暇ですもんね。

青山 いや、海外に行くときも僕は原稿を書いてるんだけど(笑)。

──失礼しました......。

青山 失礼じゃないです。ワシントンDC行きの便で自宅と同じように音を消して見ていたんです。原稿を書きながら。宮崎あおいという人を初めて知って、「こんな女優が日本にいるのか」とびっくり。帰りの便で音を流して今度は原稿を書かずに見ました。

──宮崎さん、あの作品で認められましたもんね。

青山 僕はもともと日本の俳優に否定的で、「何をやってもその人になっちゃうな」と思っているんです。トム・クルーズの演技がうまいかは別にして、彼は作品によって役の印象が実は変わるじゃないですか。

邦画はもともと好きなんですけど、見ていられない作品も多くて......。宮崎さんの表情もセリフも別格の豊かさでした。

──確か続編は宮崎さんじゃないんですよね。

青山 はい。宮崎さんは好きになったけど、僕も別に宮崎さんを追っかけて作品を見るわけでもない。しかし、役に応じて別人になりきれるという意味で、日本では例外的な俳優でしょう。『NANA』は曲もよかったですね。

★後編⇒角田陽一郎×青山繁晴(参議院議員)「ロレンスに学んだ『人生の広さ、大きさ、恐ろしさ』」

●参議院議員 青山繁晴(あおやま・しげはる)
1952年生まれ、神戸市出身。慶應大学文学部中退、早稲田大学政経学部卒業。共同通信、三菱総研を経て独立系シンクタンク「独立総合研究所」社長。2016年、参院選に出馬し初当選。現在は近畿大学と東京大学で教鞭を執る。近著『ぼくらの哲学2 不安ノ解体』(飛鳥新社)好評発売中

【★『角田陽一郎のMoving Movies』は毎週水曜日配信!★】