バラエティプロデューサー・角田陽一郎氏(左)が俳優・高良健吾氏の映画体験をひもとく! バラエティプロデューサー・角田陽一郎氏(左)が俳優・高良健吾氏の映画体験をひもとく!

『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。

先週に引き続き、映画『蛇にピアス』『ソラニン』などの作品で知られ、今月19日に最新作が公開された俳優の高良健吾(こうら・けんご)さんが登場!

* * *

――出演された作品のなかで人生を変えたものはなんでしょう?

高良 『M』(2007年)ですね。それは間違いない。廣木隆一監督に当時言われた言葉がいまだに胸に残っているんです。

――どんな言葉ですか?

高良 「役としてちゃんとその場にいなさい」とか「俺にOKしてほしくて芝居するな」とか「カメラの向こう側を意識してない。俺に褒められたくて芝居しているだけだ」とか。

――言われてへこみませんでした?

高良 でも、確かに監督に「OKしてほしいな」とは思っていました。あと、僕が強烈に覚えているのは「ちゃんと立ててない」という言葉で。

――「ちゃんと立ててない」ですか。

高良 キャッチボールをするシーンでなかなかOKが出ず、何十回もやらされたときにそう言われて。その言葉には自分としてもすごくしっくりきたし、「あ、バレるんだな」と思いましたね。そういうことを当時、監督にしつこく言ってもらいました。

――お芝居って難しいですね。

高良 でも、しょうがないですよ。

――しょうがない、ですか?

高良 今は昔より、役に向き合う上でグレーゾーンが広いというか、曖昧な部分を許せているんです。だから、そういう部分は楽しいと感じます。

でも、熊本から通って仕事をしていた当時は「なんで僕はこの役のことを理解できていないんだろう」とか「セリフが言えないんだろう」ということにすごく囚われまくっていて、落ち込んだりしていたんです。

――でも、すごく難しいですよね。だってそういうのって、悩んでも解決しないことじゃないですか。

高良 しないですね。なので、今は「悩むのは込み込み」と考えています。悩んで当たり前だし、役なんてしょせんは他人。それは考えるのを諦めるってことではなくて、「わからなくて当然だよ」と自分に言い聞かせているというか。

――そんな高良さんに最新作『アンダー・ユア・ベッド』のお話を伺いたいです。この作品は大学時代に名前を呼んでくれた女性を、高良さん演じる主人公・三井が盗聴・盗撮するうちに、彼女が夫から激しいDVを受けていることを知って......というお話で、とにかく予告動画が強烈ですよね。

激しくきしんで、あえぎ声が聞こえるベッドの下の隙間に真顔の高良さんがいるという。ずばり、役としてその場にいられましたか?

高良 ちゃんと立てていたというか、寝れていたかってことですよね(笑)。

――(笑)。演じてみてどうでした?

高良 かなり変わった役柄でしたけど、でも理解はできるというか。それまで存在すら周囲から認めてもらえなかったということが、三井の純粋さをここまでねじ曲げてしまうのはしょうがないことのように思えたし、逆に三井が自分の行動した結果、存在に気付いてもらえて、認めてもらえたことで成長していくのも理解できる。

だからこそ、僕はそんな三井をどう表現するのかということを考えていました。

――今の高良さんだから演じられたんでしょうか?

高良 確かに、10代後半や20代前半の頃にこういう役を演じていた時とは、また違う見方ができましたね。

昔は役に入ったのはいいけど、どうやって入ったのか見失ってしまって落ち込むこともあったんですけど、今は自分が入ってきた入り口は見えているというか。この作品、この役にしかない魅力があるので、楽しんでもらえたらうれしいですね。

●高良健吾(こうら・けんご)
1987年生まれ、熊本県出身。2005年にドラマ『ごくせん』で俳優デビュー。幅広い役柄を演じ分け、数々の賞を受賞している

■『アンダー・ユア・ベッド』7月19日(金)テアトル新宿ほか全国順次ロードショー
配給:KADOKAWA

【★『角田陽一郎のMoving Movies』は毎週水曜日配信!★】