『M 村西とおる 狂熱の日々 完全版』が公開中の村西とおる監督(手前)の神髄に角田陽一郎氏が迫る!

バラエティプロデューサー角田陽一郎の『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。

前回に続き、『M 村西とおる 狂熱の日々 完全版』が全国公開中のAV監督、村西とおるさんが"村西ワールド"の神髄を明かします!

■国内初DVD作品のコントのような舞台裏

――現在公開中の映画『M 村西とおる 狂熱の日々 完全版』のお話を伺いたいです。本作は1996年に発売された世界初の片面2層DVD作品『北の国から 愛の旅路』の撮影現場を記録したメイキング映像に、現在の村西監督の映像や著名人のコメントを追加して構成されたドキュメンタリーですよね。

村西 莫大(ばくだい)な借金を抱えちゃって、にっちもさっちもいかなくなってね。起死回生の一発と思って作ったんです。当時はDVDの存在がまだ世間に全然知られていない状況で、「マイケル・ジャクソンのプロモーション映像がDVDになった」というニュースがアメリカから聞こえてくるくらいだった。

だから、「これでAVをつくれば面白い」と考えて。DVDの片面二層って4時間16分収録できるんですけれど、それをフルで使ったんですね。

――超大作ですね。

村西 4時間16分もあるわけだから、女優と男優でまず70人くらい投入しました。スタッフを入れると90人近く。約2週間撮影しましたよ。大所帯で北海道をさまよう、倒(こ)けつ転(まろ)びつの日々でした。

――いろんなアクシデントが起こって人間関係が崩壊したり......。まるで壮大なコントを見ているかのようでした。

村西 ドキュメンタリーの撮影にあたって、30分のテープを120本も回したんです。合わせて60時間。私は「このシーンは撮らないで」とは言わなかった。「夜中でもいいよ」と言った結果、こういう映像が撮れました。

――なるほど。

村西 でも、今これだけAVが普及していても、裏側にカメラが入ることはめったにないでしょ? その点、この作品はAVというカテゴリーを超えて、予定調和のない世界をそのまま見せている。「人間動物園」とでもいうのかな。モノをつくることを目指している方や、人を率いて何かを成そうとしている方にはぜひ見ていただきたい。

――クリエイター志望は絶対に見たほうがいいと思います。

村西 この作品で皆さんに感じてもらえることがあるとするなら、「死人生、死んでしまいたいときには下を見ろ、俺がいる」ということ。「この世界にはもっと地獄みたいな修羅を生きている人がいるぞ。自分のほうがまだまだマシじゃないか」と感じてもらえるとうれしいですね。

――あらためて、映画体験について伺いたいです。最近気になった作品はありますか?

村西 実はね、私はよほどのことがない限り、人の作品は見ないようにしてるんです。「かつて人類が相まみえたことがない映像を撮る」というのが私自身のスタンスなんですが、ほかの人の作品を見てしまうとすぐマネをしてしまいそうだから、極力見ないようにしています。だからこそ、自分の奥底にあるエロスの世界に耳を澄ませて作っていくしかないんです。

――いわゆる「村西節」などは、その奥底にあるモノを掘り起こして生み出したものだと感じます。

村西 その場の感覚を大事にして、ありえないような世界に導きながら、その女性の持っている本性をひと皮ひと皮剥(む)いていって、皆さまにお見せする。そういった「言葉のチカラ」で映像を作っていくんです。例えば、女優さんと会うでしょ? 「なんにも言わなくていい。あなたは『恥ずかしい......』と言うだけでいいよ」と。

――スイッチ入りましたね!

村西 お待たせいたしました、お待たせしすぎたかもしれません。それでは早速始めたいと思います。まずお名前から承りましょう。「恥ずかしい......」。視聴者の皆さん、恥ずかしいそうです。

何百万人がご覧になるかわからないカメラの前で、これからビデオを撮りながらセックスするというのに、ご自分のお名前を言えないのでございます。ですが先ほど、私が承りました、ヨシコさんでございますね。「恥ずかしい......」。ご自分のお名前を言われただけで恥ずかしいそうです。

さあ、お年を伺いましょう。「恥ずかしい......」。ここで実年齢を言うような方でございましたら、実は手だれの者。初出演と言いつつ、AVに出まくっているような女性でございます。ところがヨシコさん、ご自分のお名前さえ言えないんです。どうですか、皆さま。

ついこのあいだまでセーラー服を着ていまして、社会に出たばかりのクリトリスをお持ちなのです。さ、今までの性体験をお聞きしましょう。男性経験の数は? 「恥ずかしい......」。これも先ほど承りました。今年に入ってから47人だそうです。赤穂浪士のような数でございますね。

――なんか寅さんの語りを聞いてるみたいですね(笑)。啖呵(たんか)売りのエロ版といいますか。山田洋次監督をリスペクトされていらっしゃいますし。

村西 自分で世界観を作って、女性には「恥ずかしい......」とだけ言っていただくんです。でも、20~30分やっていくと、不思議なことに女性は本当に恥ずかしくなってくるんですね。

――言葉でさらに相手を裸にするといいますか。

村西 そうやって自分でもうひとつの世界をつくれるから、どんな女性が来てもたじろがないし、細心の配慮で進めていくから、女性自身にも「この人は私のことを考えてくれている」と信頼され、こちらの思いが伝わるんです。それで向こうも真剣になって、予想もしなかった驚くべき展開が生まれる。

また、私がなぜ丁寧に話すかというと、私の後ろのカメラの向こうには何百万人の視聴者がいるからなんです。「私はその視聴者の皆さまの命を受けて撮影しているんです」という思いがある。

女優さんの中には「あなたはただヤリたいばっかりのオヤジなんでしょ」と小ばかにしてくる方もいらっしゃいますが、最終的には違うっていうことが伝わるんです。

――一見、主観的かと思いきや、客観的ですね。

村西 それだけ言葉のチカラは偉大なんです。それをAVに持ち込んだからこそ、「村西節ワールド」というひとつの世界をつくり上げることができたんです。

●村西(むらにし)とおる
1948年生まれ、福島県いわき市出身。前科7犯に加えて借金50億円を抱えるという破天荒な人生で"ハメ撮りの帝王"の異名を取るAV監督。今夏、話題を呼んだNetflixオリジナル作品『全裸監督』のモデルにもなった

■『M 村西とおる 狂熱の日々 完全版』
東京・テアトル新宿、丸の内TOEIほか公開中

【★『角田陽一郎のMoving Movies』は毎週水曜日配信!★】

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