「若い頃に見た『バック・トゥ・ザ・フューチャー』には衝撃を受けました」と語る福本伸行氏

『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。

今週は公開中の『カイジ ファイナルゲーム』で脚本を務めるマンガ家・福本伸行さんをお招きします!

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──人生を変えた映画は?

福本 若い頃に見た『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)には衝撃を受けましたね。「これはすげえ」「やられた」って。映画館で見終わったら立ち上がれなくなりました。

──おいくつの頃ですか?

福本 映画館の封切りで見たから、27歳くらいかな。当時はすでにマンガを描いてましたね。あの作品はすべてが素晴らしくて、続けてもう1回見ちゃいました。

──今回、9年ぶりの『カイジ』の新作が1月10日に公開されました。前作同様に脚本を担当されていますが、マンガとはやはり違いますか?

福本 違いますね。マンガは最後まで自分で描くことができるけど、脚本はあくまで設計図。トリックや人間関係は描きましたが、未来の日本やギャンブルする場所の細かい描写までは書いてないんです。そのへんの世界観は監督がつくるので。演技にしても、微妙なニュアンスは役者や監督に任せるしかない。

──逆に、マンガでは監督であると。

福本 そうですね。監督でもあるし、役者でもあるし、すべてですよね。細かい世界観はもちろんのこと、映画でいう役者、つまりキャラクターの演技まで自分で描くことができる。「うちの子飼いのタレントを出しますよ」って気持ちなんです(笑)。

──今作では新たに4つのゲームが登場しますが、ゲームとストーリーはどちらを先に考えるんですか?

福本 「ゲームを考えてから主人公の顛末(てんまつ)を考える」と思われがちですが、実際はその逆で、主人公の顛末のほうが大事なんです。つまり、どういうひらめき、工夫でそのゲームに勝ったのか。「こういうルールのゲームですよ」っていうのは、後づけでいくらでも変えられるので。

──『バック・トゥ・ザ・フューチャー』なら、どう未来に帰るかが大事であって、落雷とか止まった時計台などの要素は後づけ、みたいな。

福本 いや......後づけではなく、未来に戻るという命題のために、同時に考えていると思います、そういうアイデアは。とても大切で、あと例えば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では写真が変化していくことで、ピンチであることが視覚的にわかるじゃないですか。もしその工夫がなかったら、「やばい、もうすぐ時間だ」ってセリフで説明するしかないですからね。

──確かに。

福本 しかも、ラストシーンで「未来に戻ったらちゃんと両親が恋愛していて、ビフが庭で芝刈りをしていた」ってわかることで、あのパーティで力関係が一変していたと種明かしをする。そういう、ここ一番の勇気で人生が変わりうる、という教訓的な面も見せていますから。

──そっか、最後にネタばらしと教訓があるんだ。

福本 見ている人が一番快感を覚えるのって、主人公が「どう考えても無理でしょ」っていう苦しい状況に追い込まれ、そこをなんらかの発想・アイデアで突破したときなんじゃないかな? そのアイデアは単純であればあるだけいいし、「そういうことだったんだ!」という驚きもあるとなおよい。今作でもそこは意識しましたね。

★後編⇒角田陽一郎×福本伸行(マンガ家)「『蒲田行進曲』と『カイジ』は似ている!?」

●福本伸行(ふくもと・のぶゆき)
1958年生まれ、神奈川県出身。主な作品に『天 天和通りの快男児』『賭博黙示録カイジ』『アカギ~闇に降り立った天才~』『最強伝説黒沢』

■『カイジ ファイナルゲーム』全国公開中
(c)福本伸行・講談社/2020映画「カイジ ファイナルゲーム」製作委員会 配給:東宝

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