『キン肉マン』大好き漫画家のおぎぬまXが2021年のキン肉マンを振り返る! 『キン肉マン』大好き漫画家のおぎぬまXが2021年のキン肉マンを振り返る!

どうも、おぎぬまXですっ。

2021年もあっという間でしたね。私にとっての今年1年は、あらためて『キン肉マン』の魅力をどうやって読者の皆さんに伝えるか、考え抜いた年でもありました。

というのも、『キン肉マン』休載時の月イチ連載という形で『おぎぬまXのキン肉マンレビュー』というコラムを今年7月から始めてまして、コミックスの1巻からその魅力を語らせていただいております。

その一環で、今回「2021年の『キン肉マン』」を語らせていただければと思います。おぎぬまXの独断と偏見にまみれた『キン肉マン』レポートをどうぞっ!

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■かつての最強チームが"超神"と激突!! 元強敵が新たな強敵に立ち向かう激闘の一年

今年の『キン肉マン』はカピラリアの欠片(ピース)をめぐり、超人と超神の闘いが本格的に始まりましたね。まず語らなければならないのは、知性チームの復活でしょう。

満を持して再登場した知性チームの面々は、もともとジャンプ時代の『キン肉マン』のラスボス的存在である、キン肉マン スーパー・フェニックスに仕えている選りすぐりの猛者(もさ)たちです。そのため、各々が反則級の強さと能力を持っているんですね!

マンモスマンは超人強度7800万パワーという、『キン肉マン』でもトップクラスのパワーファイターですし、プリズマンは一撃必殺の飛び道具〈レインボー・シャワー〉の使い手で、サタンクロスは2体の超人が合体していて、いつでも分離できるので、実質2対1の構図でシングルマッチを行なうことができるという、もはや凶悪なんて言葉が生ぬるく感じる超人ばかりなのです。

そんな知性チームが、超神を相手に久しぶりのリングイン。興奮しないワケがありません! しかも、すでにトップバッターを務めたプリズマンがまさかの超神バイコーンを破っており、「他のみんなもこのまま超神相手に勝つことができるのか!?」という期待がありました。

ということで、2021年の『キン肉マン』はサタンクロスVS超神ザ・ナチュラルの試合から始まりました。

2021年初の『キン肉マン』はサタンクロス(JC74巻) 2021年初の『キン肉マン』はサタンクロス(JC74巻)

前述した通り、このサタンクロスという超人は、サムソンティーチャーという本体に寄生虫が憑(つ)いている2体1対の超人。異形な造形に多彩な技の数々はインパクト抜群で、王位争奪編で残虐チームの勝利を願った読者は、人気超人であるザ・ニンジャとアシュラマンをもってしてもサタンクロスには勝てなかったのもトラウマだったのではないでしょうか。

そんなサタンクロスが、今度は強力な助っ人として駆けつけてくれました。読者にとってこれほど心強い援軍があるでしょうか。しかし『キン肉マン』というマンガにおいて、長年の時を経て再登場することは必ずしも良いことばかりではありません。それは『キン肉マン』という格闘マンガは、勝敗に関してめちゃくちゃシビアなマンガだからです。

しかも、もはや神々と闘うまでに話が発展した『キン肉マン』に易々と白星をくれる敵など登場しません。「旧キャラの復活は素直に嬉しい! ......しかし、当時の思い出のまま強敵としてのイメージを崩して欲しくない!」という複雑な思いにかられるのは僕だけではないはずです。

そして、サタンクロスは四本の手足を駆使したケンタウルス殺法に西洋忍術、ふたりがかりの大技・トライアングル・ドリーマー、最後はサタンクロスではなくサムソンティーチャーとしての新必殺技まで繰り出しましたが、そのすべてがザ・ナチュラルには通用せず、ボロボロに敗北しました。かつてザ・ニンジャやアシュラマンといった人気超人をKOに追い込んだ強敵・サタンクロスが、今度は新たなる強敵・〈超神〉の前に無惨にも敗れ去ったのです。

では僕は、過去にトラウマを植え付けられたほどの強敵・サタンクロスの目を覆いたくなるような大敗を見て、どう思ったのかというと......僕はサタンクロスに対して不思議なほどの愛着が湧きました。

サタンクロスはたしかに負けてしまいましたが、愛弟子・アシュラマンとの関係性や、反則級の能力を持ちながらイチレスラーとしての矜持(きょうじ)を持っていたりと、王位争奪編では見られなかった新たな一面が掘り下げられたからです。

『キン肉マン』の世界は勝敗が本当にシビアです。だからこそ、各試合には凄まじいほどの緊張感や感動があるのです!! サタンクロス......いや、サムソンティーチャー!! また再登場できる機会があれば、今度こそ勝ってくれ〜〜っっ!!(泣)

愛弟子アシュラマンと邂逅できたものの......(JC74巻) 愛弟子アシュラマンと邂逅できたものの......(JC74巻)

推しの超人の試合は、まるで自分が客席にいるような錯覚すら覚える

「かつての強敵が再登場するには、新たな強敵に挑まなければならない」、このルールは『キン肉マン』の世界では例外はなく、サタンクロスが無惨にも敗れ去った試合の次は、ファンの間でもいまだに最強の超人筆頭に数えられるマンモスマンの闘いが始まりました。

圧倒的安定感を持つマンモスマン(JC75巻) 圧倒的安定感を持つマンモスマン(JC75巻)

マンモスマンの大ファンであり、「『キン肉マン』超人総選挙2021」にも迷わずマンモスマンに投票している僕は、久しぶりにマンモスマンのファイトが見れるだけでテンションが爆上がりしてしまい、どうにかなりそうでした。

実際、この時の僕は、毎週試合の展開にハラハラしっぱなしで、週プレを発売日の月曜日に買っても、最初の1ページだけ読むと一旦寝かせて、水曜日くらいにおそるおそるページを開いてたりしてました。もう本当に客席で試合を応援しているようなテンションで一喜一憂してましたね。

対戦相手のコーカサスマンは小細工を弄(ろう)さない武人のようなレスラーで、作中トップクラスの怪力を誇るマンモスマンに正面から組み合って圧倒するほどの実力者。お互いの得物である「牙」と「角」のぶつけ合いもコーカサスマンに軍杯が上がり、かつての強敵・マンモスマンがマットに沈む姿は、最強神話の崩壊を感じさせ胸が苦しくなりました。

そして、お互いの超人としてのモチーフ、これがまたニクいですねっ。本来は踏み潰されるはずの「虫」が「象」を圧倒するという皮肉。マンモスマンの大ファンである僕は、現実を受け入れられず悪い夢でも見てるような気分でした。

しかし、試合を見守るウォーズマンの声援や、過去に死闘を繰り広げたロビンマスクに対する思いでKO寸前のマンモスマンが復活。己の殻を破って、まさかの空中殺法で反撃に転ずるシーンは、僕にとって"今年一"の名シーンでした!!!!!!!

王位争奪編でのロビンマスクVSマンモスマンの試合に心からシビれた読者は多いかと思いますが、やっぱり普段は強すぎて実力を出し切ることすらできないマンモスマンが、本気になれる強敵に対峙して、心ゆくまで真剣勝負を楽しむ......という構図は、最高ですね!!!!!

それにしてもマンモスマンが勝ってよかった!!!!! できれば、あと1戦......いや2戦はして欲しいですね!!!!! できれば、一度はロビンとタッグを組んで欲しいですね......ああ、マンモスマン最高!!!!

仲間の大切さに気付くマンモスマン(JC75巻) 仲間の大切さに気付くマンモスマン(JC75巻)

豪華すぎるタッグマッチ 大人になったからこそ好きになるキャラクターたち

命令口調のフェニックスにいら立ちが募ったビッグボディがキレた。全サラリーマンが共感(JC75巻) 命令口調のフェニックスにいら立ちが募ったビッグボディがキレた。全サラリーマンが共感(JC75巻)

......スミマセン、ちょっと、推しの超人であるマンモスマンの試合の感想で取り乱してしまいました。超神VS知性チームのトリを飾るのは、かつてのラスボス的存在、キン肉マン スーパー・フェニックス。そして、亡きオメガマンの代わりをキン肉マン ビッグボディが務め、ふたりがタッグを組むことに。いや、豪華すぎるでしょっっ!!

特にここ最近のビッグボディは、王位争奪編の汚名を返上するかのような活躍っぷりで、このシリーズから読み始めた人は、ビッグボディがこのマンガの主人公だと勘違いしてしまうんじゃないでしょうか。

この試合で一番語りたいことはフェニックスとビッグボディの「成長」、それに尽きますね。フェニックスは王位争奪編の時と比べると、あふれる知性を「善」に向かって使っており、今では知性の神や超人の間に挟まれながら、己の使命を遂行する苦労人といった感じがして、ものすごく好感が持てます。

一方、ビッグボディは王位争奪編の時は早々とフェニックスにやられて退場してしまうので、ある意味では人気キャラクターでしたが、新シリーズで再登場してからは、惨めに敗退してしまったことに対する後悔や、強力チームとの絆が描かれ、名実共に人気キャラクターに返り咲きました。

こういう、時を経たからこそ感じられる情緒や、大人になったからこそ共感できる人間味も、長期連載をしている『キン肉マン』ならではの魅力のひとつだと僕は思います。

特にフェニックスが自分の指示通りに動かないビッグボディを叱咤(しった)したら、ビッグボディに自分を部下ではなくタッグパートナーとして認識を改めるようにと、思いもよらぬ反論をされるシーンがありましたが、あそこはもうプロレスマンガというより、一流のビジネス書のようでしたね。大人になったからこそシビれる名シーンでした!

対戦相手のイデアマン&ザ・ノトーリアスはタッグ技の〈リアルツインDDT〉がめちゃくちゃ迫力があってカッコよかったです。ザ・ノトーリアスが〈ノトーリアス双頭斬刀刑〉で単身でフェニックスビッグボディを圧倒するのも最高でしたね。僕は、タッグマッチでひとりが対戦相手ふたりを圧倒する構図が好きで好きで堪らないんです。

最後はフェニックス&ビッグボディのそれぞれの必殺技を組み合わせたタッグ技〈ゴッドブレス・リベンジャー〉で決着がつきましたが、「この試合だけで、一体どれだけ新しい技を発明したの??」とゆでたまご両先生の発想と作画の苦労を本気で心配してしまうほどに豪華すぎる試合でした。

しばらくの間、ビッグボディはお休みになるかと思うのですが、かつてラーメンマンが主役の『闘将!!拉麵男』というスピンオフがあったように、『闘将!!強力男』なんてスピンオフが始まったら、興奮して鼻血が出てしまいますねっ。

マイティーハーキュリーズが繰り出したリアルツインDDTも見もの マイティーハーキュリーズが繰り出したリアルツインDDTも見もの

奇妙なオールスター リアル・ディールズ(真の男たち)に選ばれた8名

超神VS知性チームの激闘が終わると、闘いの舞台は〈バベルの塔〉に移り、そこで超神に挑む8名の超人が選抜されました。

ここで選ばれたリアル・ディールズたちは、本当に面白いメンバーになりましたね。

ロビンマスクの復活はやっぱり最高ですし、個人的に嬉しかったのはネプチューンマンの参戦でしょうか。お馴染みの顔ぶれの中に、なかなか出番がなかった超人たちが絶妙なバランスで混じっていて、同窓会のようであり、なぜか新鮮な空気が漂う奇妙なオールスター感があります。しかも、全員が「打倒・超神」という目的は同じでも、その先にある目標はどうやら違うようで、リアル・ディールズ内にもわずかながらの緊張感があるのです。これは、たまりません。

さて、リアル・ディールズVS超神のトップバッターを飾ったのは選抜メンバーの中でも、とりわけ実力が不安視されるジェロニモ。

しかも、対戦相手のジ・エクスキューショナーは、ジェロニモの2倍は身長がありそうな大巨人で、初登場のインパクトがすごいこともあって、正直ちょっとジェロニモが勝てるというイメージが湧きませんでした。デビュー戦が悪魔六騎士の代表格のサンシャインで、次のシングル戦の相手がジ・オメガマン......。本当にどうしてジェロニモは、毎回こんな化物のような強さの相手と試合をさせられるんでしょうか(泣)。

もちろんジェロニモも、プリズマンからカピラリアの欠片を託され、パワーアップしているのですが、さすがに相手が悪すぎるのか、ジ・エクスキューショナーにボコボコにされてしまいます。このジ・エクスキューショナーは強いし、デカイし、相手の弱点を容赦なくつぶす冷静さもあり、本当に恐ろしい超神ですね。ただ、圧倒的な優位に立ちながらも、試合中に対戦相手のポテンシャルを見極めようとしているような言動があります。ちょうど、完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)編のテリーマンVSジャスティスマンの試合を思い出しました。

今回の試合にはジェロニモの独り立ちや、師であるテリーマンを超えるというテーマがあったと予想されます。そして、奇しくもジ・エクスキューショナーの正体は、かつてジェロニモを人間から超人に進化させた神だったのですが、テリーマンがジャスティスマンに超人の未来を見定められたように、ジェロニモも今またジ・エクスキューショナーに超人としての可能性を試されたわけです。

そして、試合終盤のテリーマンを彷彿とさせる猛ラッシュや、新必殺技の〈ニュー・マシンガンズ カウベルスタンピード〉によって、ついにジェロニモは超神相手に逆転勝利をつかみました。

つまり、師であるテリーマンがジャスティスマン相手に試合放棄の流れへ持ち込み、認められたのに対し、弟子のジェロニモは超神を相手に完全勝利して認められたのです。

何気ない対比なのですが、もはやジェロニモが若手超人としての枠では収まらないことを決定付けた、ものすごくいい結末でした!

ついにネプチューンマン、リングイン 頼む! 勝ってくれ!

キン肉マン第365話より(コミックス未掲載) キン肉マン第365話より(コミックス未掲載)

今年最後の試合は、バベルの塔2戦目のネプチューンマンVS超神リヴァイアサンの試合となりました。

まずニヤリとしてしまうのは、復活したロビンマスクとの会話ですね。正義超人代表の座をウォーズマンに譲ったロビンは肩の荷が下りたのか、「打倒・超神」の使命とは別にキン肉マンとの再戦を望んでいたり、まとっているボロ切れもあって世捨て人感が強く、正義超人というよりは、ただただ強さを追求する完璧(パーフェクト)超人の思想に近づいているのかもしれません。そんなロビンに快く同行するネプチューンマン。今後のふたりの動向がめちゃくちゃ気になりますねっ。

そして、初となるネプチューンマンのシングルマッチ。これはアツいですね〜っ! ネプチューンマンは喧嘩(クォーラル)ボンバーや、ダブルレッグスープレックスなど、シンプルなのにド迫力な技がたくさんあって大好きな超人です。ネプチューンマンの必殺技の数々は、その衝撃が本当にマンガを飛び出して、外の世界まで振動が伝わるようなパワーがあるんですよね! 今回も試合序盤、縦長のコマで描かれた喧嘩ボンバーは、迫力がすごくて「うおお〜〜っっ......!!」と思わず声を上げてしまいました。

まだ試合は始まったばかりで、どちらが勝つかは全く予想できませんが、やはり久しぶりに試合を拝めるネプチューンマンにはファン感涙の勝利をもぎ取って欲しいですね!!

ということで、2021年の『キン肉マン』を振り返ってみました。いかがだったでしょうか?

本当は漫画家的な視点など、独自の分析をしてみたかったのですが、気がついたら普通にイチファンとしてめちゃくちゃ熱く語らせていただきました。

超人VS超神の行方がどうなるのか、これからの展開が気になって仕方ありません!

ゆでたまご嶋田先生・中井先生!! 昭和・平成・令和と続いて進化し続ける『キン肉マン』は僕にとっての一生の目標です!! どうかお体にお気をつけて、これからも『キン肉マン』の世界を描き続けてくださいませっ!! 来年の『キン肉マン』も楽しみにしております!!

おぎぬまX

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