湘南乃風のRED RICE(右)とHAN-KUN(左)
来年メジャーデビュー20周年を迎える湘南乃風から、RED RICEHAN-KUNが登場! 夏フェスの季節に向けた新EP『2022 ~Time to Shine~』を7月20日にCD・デジタル配信でリリースした彼らに、活動の軌跡を振り返ってもらった。インタビュー前編では二人の出会いからグループ結成、デビューまでを語る。

■20数年ぶりに判明した出会いの真実

――RED RICEさんとHAN-KUNさんは、実は湘南乃風を結成する前から一緒に活動されていたんですよね?

RED RICE もう25年くらいになりますかね。人生の半分以上は一緒にいると思います。

――当時、HAN-KUNさんはまだ10代で。

HAN-KUN 19歳とか、そのくらいっすね。

RED RICE オレが22歳だったかな。

――HAN-KUNさんのYouTubeチャンネルで出会った頃のことを話していましたが、当時は意外にも爽やかなお兄ちゃんだったとか。

RED RICE その印象がよっぽど強かったみたいで、酒の席とかでも未だによく言われるんですよ。

HAN-KUN 知り合いがビーチでやっていたバーベキューだったんすけど、REDがクイックシルバーの緑と黒の海パンを履いていたのをすげえ覚えています。で、その海パンを後に借りパクして。今も実家に置いてあります。

RED RICE いや、違うんだ。あれはVOLCOMなんだよ(笑)。

HAN-KUN あ、そうだっけ? ずっとクイックシルバーだと思ってた(笑)。

――お互いの初対面の印象はどうだったんでしょう?

RED RICE HAN-KUNは年齢が3つ下だし、歌がうまい地元の後輩って感じでした。ほんと少年っぽい、かわいい男の子で。

HAN-KUN それこそREDは海パンが似合う、ガタイのいい人でした。海パンの記憶が違っていたことがわかったばかりですけど、オレが覚えているのは、「RED RICEさんですよね?」って声をかけたら、親指立ててニカッと笑って、そのまま海に飛び込んだんすよ。

RED RICE それ、ヤンキー漫画に出てくるかっこいい先輩じゃん(笑)。

HAN-KUN オレの記憶ではウィンクもしていた(笑)。もちろん、同じミックステープに参加していたから、歌の印象のほうが先でした。「こんな人が近所にいたんだ」って驚いたから、そのとき声をかけたんです。

――おふたりは湘南レゲエシーンの新人が集まったミックステープに参加していたんですよね。

HAN-KUN そうです。REDは今と変わらないレゲエ特有のガラ声でやっていたんすけど、実際に会ったら声のイメージとは違う爽やか男子で、そのギャップがめちゃくちゃ印象に残っているんだと思います。

■「オレら3人は一緒にやるけど、どうする?」

――その後、湘南乃風の前に別のグループを結成されて。

RED RICE オレとHAN-KUNと、女のコともう一人の男で4人組を作りました。

――ミックステープに参加した人たちの中でも、RED RICEさんとHAN-KUNさんが「一緒にやろう」となったのは?

HAN-KUN 音楽を始めた時期も、育った地域も近かったから、「湘南エリアのレゲエ新人枠」って感じで同じイベントに呼んでいただくことが多かったんです。見てきたもの、聴いてきたもの、影響を受けたものも一緒なんで、何度も会ううちに自然と意気投合した感じですね。

グループを組んだのは、先輩たちへの憧れからです。でも、先輩たちには反対されたんですよ。ていうのも、レゲエのグループはソロとして独り立ちしたあと、それぞれ名の知れた人たちがアベンジャーズみたいに合体して作るものだったから、「まだ何もできないのに、お前らには早いだろ」と言われて。で、実際に組んでみたら、結果は先輩が言った通りの自然消滅。

RED RICE 早かったよねえ。

――それからジャマイカに?

RED RICE ですね。先にSHOCK EYEがいて、オレらのあとに若旦那が来たのかな。

――湘南乃風の結成のきっかけは、本場のレゲエを体感しに行ったジャマイカだったというのは有名なエピソードです。

HAN-KUN 若旦那がいちばん長くて半年くらいいたから、日本と行ったり来たりする中で若旦那を軸にメンバーが集まっていった感じでした。ジャマイカは小さな国で、日本から来る各地のレゲエシーンの人とすぐ知り合いになるんすよ。そこで「日本に帰ったら面倒見てよ」って話していたことが、このメンバーでのワンボックスツアーにつながっていくんです。

当時はまだ、「それぞれソロでやろう」って話もあったんですけど、ツアーで出したミックステープのタイトルが「湘南の風」で、あるイベントのときに、それがグループ名と間違えて発表されたんです。

――自分たちで名乗ったわけではなく、勘違いから始まったんですね。

HAN-KUN そうなんすよ。そこからですね、グループとしてやっていくことになるのは。

――本格的な結成に向けた話し合いとかあったんでしょうか?

RED RICE 今の事務所から声がかかったときには、もう一人、GOKI(現GOKIGEN SOUND)っていうメンバーもいたんです。でも、彼は違う道を行くってことで抜けて、本当に「この4人でいこう」となったのは、やっぱりメジャーデビューのときじゃないかな。

HAN-KUN オレの認識はちょっと違うんですよね。どこかのショーに行ったときだったかな。若旦那とワンボックスに乗っているときに言われたんすよ。「HAN-KUNさあ、オレらは3人一緒にやろうと思っているけど、どうする?」って。突然過ぎたからすっげえ覚えてる。「え、今も一緒じゃないの?」って混乱したんですけど、「あ、これ違うわ。もっと先のビジョンがあって、オレの知らないところで3人は話してんだ」とわかった。もう頭の中がぐわーってまわって。

でも、当たり前のように一緒にやってきたから、「やるよ」っていう答えしかオレはなかったんです。むしろ、「何でわざわざ聞くんだろう」と思ったくらい。つまり、オレはオレのいないところで3人が何を話し合っていたのか知らないんです。

■湘南乃風のキーパーソンは世田谷出身

RED RICE それも若旦那がきっかけだよ。今の事務所の人間から彼が名刺を渡されて、このメンバーでのデビューってことを考え始めたんだと思う。

HAN-KUN いや、正確に言うと、最初に名刺をもらったのはオレなの。あの頃の若旦那やSHOCKは今とは真逆で、メジャーなんて興味ないみたいなスタンスだったから、オレが話しかけられて。たしか沖縄だったと思うけど、すげえうさんくさい人から名刺をもらって、オレもオレで「ああそうすか」って感じでポケットにしまい込んでいた。

RED RICE そのうさんくさい人は今も事務所にいるけどね(笑)。

HAN-KUN そのあと若旦那に会ったとき、たまたま名刺がポケットに入ったままになっていたから、「そういえば、こんなんもらったんだけど」って見せたら持っていったんだよね。で、1週間後くらいに、「デビューの話をつけてきた」って言うから死ぬほどびっくりした。「メジャーいかないんじゃなかったの!?」って。

RED RICE ミックステープも若旦那が言い出しっぺだったよね。うちらは若旦那が下準備して、みんなを説得していくっていう順番で事あるごとにやってきたんです。デビューのときも、オレとかはすぐ「やるやる」ってなるから(笑)、まずオレとSHOCKを味方につけて、それからHAN-KUNに、ってことだったんだと思います。

HAN-KUN それこそ若旦那がいなかったらデビューしていないよね。今頃、地元のレゲエバーで若手を評論しているうざい先輩になっていたと思う。

RED RICE 「まずオレを通せよ」って言うやつね。

HAN-KUN でも、いざステージに上がると歌えない(笑)。そうなっていた可能性はあったよね、オレら。

――若旦那さんが湘南乃風のキーパーソンなんですね。

HAN-KUN 若旦那は湘南出身じゃないのもよかったかもしれないすね。オレらとは違った視点を持っていたというか。

RED RICE そうだよね。地元じゃないところに乗り込んで、そこでメンバー集めてデビューしたわけだから。

HAN-KUN しかも、そのグループ名が「湘南乃風」だよ。若旦那は世田谷の人なのに(笑)。

RED RICE なかなかできることじゃないよね(笑)。

■グループ名が音楽性を図らずも広げてくれた

――あらためて当時の映像、それこそ初期の代表曲でもある「Real Riders」のPVを見ると、みんな"悪そうな兄ちゃん"っていう見た目なんですよね。

RED RICE 特に服装なんてやんちゃな感じで。若旦那はパンチパーマでしたし。

HAN-KUN 図らずもグループとしてのキャラクターができあがっていたんだろうね。オレらは別にヤンキーってわけではなくて、オレらなりに自分がやりたいことをまっすぐやっていただけなんですけど、外から見ると、かなり異物感があったと思う。

――グループ内でもいい意味で統一感がないですよね。湘南の若者のイメージでまとめていたわけでもない。

HAN-KUN 若旦那が群抜いてキャラ設定ができちゃっていましたけどね。でも、彼はあれを意図的にやっていたから、やっぱり最初から策士だったんだと思います。自分からパンチパーマにしないもん。

――当時の湘南に、こういう"ヤンキースタイル"みたいなグループってあったんですか?

RED RICE 全然いなかったですよ。グループ名にしても、まず漢字が珍しい。「風林火山」みたいな熟語ならあったけど、オレらは文章だから。オレらとしても違和感はあったんです。でも、いろいろアイデアを出しても、どうやっても「湘南の風」のインパクトを超えられない。で、せめて全部漢字にしようって、「湘南乃風」にしたんです。

HAN-KUN オレらから漂っていた"ヤンキー色"みたいなものと、この名前とが結果的に親和性があったのかなと今では思います。バイクとかにステッカー貼るような文化にいる人たちだと思われたっていう。

――デビュー後はレゲエに軸足は置きながらも、J-POPへと徐々に音楽性を広げていきました。もし、横文字のグループ名だったら、「純恋歌」や「睡蓮花」といったヒット曲は生まれていなかったかもしれませんね。

RED RICE そういう意味では、オレらの音楽性を広げてくれた名前だったのかな。

HAN-KUN 実際、この名前だから、間口が広い曲も違和感なく受け入れてもらえているんでしょうし。

RED RICE 最初から意図していたわけじゃないんですけどね。新EPでも「風乃時代」や「夢物語」といった「和」なタイトルの曲がありますが、こういう方向に行く流れは、「湘南乃風」っていうグループ名にしたときにできていったのだと思います。

★インタビュー後編に続く

●湘南乃風(しょうなんのかぜ)
RED RICE、若旦那、SHOCK EYE、HAN-KUNの4名からなる日本のレゲエグループ。2001年結成。2003年にメジャーデビューを果たし、来年にはメジャーデビュー20周年を迎える。
〇新EP『2022 ~Time to Shine~』を7月20日にCD・デジタル配信でリリース。その他最新情報は、公式サイトや公式SNSでチェック。
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