湘南乃風のRED RICE(右)とHAN-KUN(左)
来年メジャーデビュー20周年を迎える湘南乃風から、RED RICEHAN-KUNが登場! 夏フェスの季節に向けた新EP『2022 ~Time to Shine~』を7月20日にCD・デジタル配信でリリースした彼らに、活動の軌跡を振り返ってもらった。インタビュー前編に続き、後編ではそれぞれのソロ活動や、ファンとの向き合い方についても語る。

■「もう自分に言い訳はしたくない」

――お二人は湘南乃風の結成前から数えて、人生の半分以上を一緒に過ごしてきました。お互いに「変わったな」と思うところはありますか?

RED RICE HAN-KUNは変わんねえなって思います。基本的にやりたいことが明確にあって、そのうえでオレらのやりたいことに乗ってくれている。それでも昔よりは今のほうが湘南乃風の間口を広げたいっていう気持ちでいてくれている気がします。

最初の頃は「ああいうテレビ番組には出たくない」とかあったけど、今はオレらに寄り添ってくれるようになったというか。許容範囲が年齢とともに広がった感じで、大枠では変わらない美学をずっと持っている人だと思っています。

――今ではソロで歌番組とかに出るようにもなって。

RED RICE そうそう。歌うだけならまだしも、バラエティ的なものにも出るなんて昔だったら考えられなかった。

――HAN-KUNさんから見たRED RICEさんは?

HAN-KUN 見た目のシルエットとかファッションは変わったなと思いますけど、REDも根本は変わらない気がします。あ、でも、歌のスタイルは変わったかもしれない。なんつうか、「もしかして、本当はもっと歌いたかったのかな?」って感じますね。

REDはラップ的な歌唱を突き詰めるタイプだと思っていたんですけど、最近の曲とか聞くと、実は歌いたかった感じがすげえ伝わってきて。やりたかった歌のスタイルを隠さずに出すようにしているのかなと。

――実際、RED RICEさんとしては「もっと歌いたい」という気持ちがある?

RED RICE そうですね。自分は湘南乃風って、ずっと前を向いて走り続けるグループだと思っていたんですよ。でも、この数年で自分に子どもができて、コロナ禍にもなって、人生を考える時間ができた。しかも、それは20周年を目前に控えたタイミングでもあった。それで「後悔したくねえな」って思うようになったんです。

オレはソロ活動から頑なに逃げてきたんです。ほかのメンバーはソロでも評価されているけど、オレはソロだったらプロになれていないと思っていて、「自分には湘南乃風しかない」って言い訳してきた。自分の中で流れているメロディを隠して、「どうせあんまり良くないだろうし」って逃げてきた。でも、それじゃあ後悔する気がしてきて。

とにかく、自分が逃げている姿を子どもに見せたくない。湘南乃風のメンバーとしても良くない。中途半端なままで終わるよりは、たとえ自信がなくても人に晒して、ダメな評価を受けたら受けたで次を考えればいい。やりたいことは全部やってみようとなったんです。

――そのひとつが今年5月に配信でリリースしたソロEP『REDHUNDRED』ですね。

RED RICE ええ。ちょっとずつできる範囲でトライしているところです。

■新EPは自分たちなりの原点回帰

――湘南乃風15周年を記念したドキュメンタリー映画の中で、RED RICEさんは自身の役割を「メンバーのお母さん」と定義されていましたよね。

RED RICE 湘南乃風という家を守って、「おかえりなさい」が言える存在でありたい。そういうふうに思っていました。でも、それだけじゃあ後悔するなって今では思っているんです。

HAN-KUN でも、お母さんもさ、子どもたちが巣立ったら女に戻るって言うじゃない?

RED RICE あらためて化粧をし直すみたいな。

HAN-KUN 別に何かあるわけじゃないけど、お母さんだって子どもたちが巣立ったら、化粧して夜の街に出かけるんだよ。そういうことでしょ。

RED RICE そういうことかもしれないね。

HAN-KUN オレはすげえいいと思うよ。

RED RICE 悔いを抱えたまま20周年のステージに立ちたくないって気持ちが大きいですね。その先は本当に見えていないから、これがオレなりの20周年に向けた準備のひとつではあります。

――やっぱり、それぞれ20周年に向けた思いがある?

HAN-KUN 10周年の頃には、メンバーそれぞれ我が強くて、良くも悪くも前に出て目立とうとしていたんですよ。自分が真ん中だろうって意識をみんな持っていて、そのぶつかり合いがケミストリーになっていた。そう解釈しながら前に進んできたんですけど、最近は湘南乃風っていう箱があって、その箱の中でやれることを提案して物事がまわっていく感じになっていたんですよね。

そこに対して、ちょっとつまんねえな、収まっているんじゃねえのかって思ったりもしたんですけど、20周年を前に、この『2022 ~Time to Shine~』で原点回帰したつもりなんです。オレたちの認識としては、それこそ(デビューEPの)『REAL RIDERS』の頃に戻って、もう一度、湘南の風を吹かせにいこうぜって。それはチームとしてみんなが思っていることですね。

■「その思いは背負いきれねえな......」

――湘南乃風は等身大のリアルな自分を歌詞にすることで支持を広げてきたグループだと思います。しかし、キャリアが20年にもなると、「さすがにあの頃の気持ちで歌うのは難しい」と感じることはないのでしょうか?

HAN-KUN たしかにデビューしたばかりの頃なんて、ほんとに等身大の自分を書いていました。でも、若い頃の歌を今やると、昔のアルバムを開いたときみたいに、その当時の気持ちに戻れるんですよ。歌手として演じられるようになってきたというか。曲単位であの頃の自分たちが憑依する感じがあって、そういう自分を楽しめるようにもなってきました。

実はリアルタイムで歌っていたときのほうが、「本当にこういう歌詞を歌いたかったのかな」って葛藤することがあったんです。その葛藤もリアルな感情ではあるんですけど、今は全部をいい思い出として歌えるし、ステージ上のオレたちにも笑顔が増えたんです。

最初はやんちゃなキャラクターっていうのを自分たちで認識して、それを売りにしていた部分もあったんすけど、年齢を重ねたことで、肩の力を抜く面白さを感じられるようになった気がしていますね。

RED RICE この仕事をしていなかったら、若い頃の気持ちを思い出すなんてことは滅多にないだろうし、やっていて楽しいよね。

HAN-KUN 最近はメンバー同士で昔の歌詞について、「なんだよ、この言葉遣い」とか「こんなこと本当に言っていたよな」とか、酒の席で笑いながら話せるようになった。これをその日に作った歌で言ったらケンカになる(笑)。

――その時々のリアルな感情を伝えるために歌っていた頃に比べ、今はより客観的に「歌」として向き合えるようになった、と。

HAN-KUN 語弊がある言い方かもしれないですけど、ソロでカバーをさせてもらっているときの感覚に近いかもしれないっすね。

――ヤンキー的な"やんちゃなキャラクター"を期待されることに対してはいかがですか?

HAN-KUN ちょっと前にありました(笑)。ファンの人たちは1ミリも悪くないですけど、ステージでレーシングチームをイメージした衣装を着たことがあったんすよ。赤いつなぎをカスタマイズして、それぞれいろんなワッペンつけてやったら、しばらくして、会場に特攻服の人がめちゃくちゃ増えたんです。

オレらはレーシングチームのつもりだったんですけど、遠くから見たお客さんにとっては、「やべえ、ついにやってくれた。オレらもライブで着ていいんだ」となったみたいで。お客さんとしては、「あの頃の自分に戻りたい」って気持ちがあったんだと思うんですよね。

RED RICE 旗が増えたこともあったよね。「○○乃風」みたいな。

HAN-KUN しかも、そこに刺繍でオレらの歌詞を入れたりしてくれて。最高にうれしいことなんすけど、最初の頃は、「オレらはそっち出身の人じゃないから、その思いは背負いきれねえな......」とはなりました。今は全然いいんですけどね。

――そこも歌詞と同じで、年月を経たことで自分たち自身のキャラクターも客観的に見られるようになってきたんでしょうか。

HAN-KUN ヤンキーのコスプレなんだな、オレらはって認識でやっていますね。

■今でもケンカは「なくはない」?

――最後に、20周年に向けた目標をお願いします。

RED RICE わかりやすい例だと、10周年が横浜スタジアムだったから、それを超えたいって気持ちはずっとあります。でも、それが目標かと言われると、ちょっと違うかもしれないんですよね。

HAN-KUN オレは正直、やり続けることが目標かもしれないです。メンバーそれぞれ、20年の中でターニングポイントがあったと思うんすよ。時として「もういいかな」となったこともあったと思う。でも、続けることで、こうやってREDと出会った頃を振り返って、あのとき履いていた水着のブランドがVOLCOMだったことに20数年ぶりに気がつくみたいなことが起こる(笑)。

――インタビュー前編で話したエピソードですね!

HAN-KUN もし、どこかでグループをやめていたら、この答え合わせはできなかったかもしれない。だから、今後もそんな感じだと思うんすよね。一緒にいることで思い出がつながって、時々こうして振り返って答え合わせをしていく。それをずっと続けられたらいいなと思います。

もちろん、横浜スタジアムを超えることも目指すべきだけど、一緒にやり続けていけば、自ずと具体的な結果は出てくるのかなと最近は思っています。いちばん大事なのは、メンバーのつま先が同じ方向を向いていること。それぞれ首が違う方向を向いていても、足の方向が同じだったら、進む道は一緒になるじゃないですか。特にコロナ禍を経てから、その大切さを感じています。

――さすがに解散の危機を感じるくらいの大喧嘩をすることはなくなりましたか?

HAN-KUN なくはない......かな(笑)。それも鮮度を保つために必要ってことで。「これでいいんじゃない?」は良くないと思うし。ケンカしないに越したことはないですけどね(笑)。

――20周年を目前にしても、それだけグループに本気で向き合っていると。

RED RICE オレがソロ活動を始めたこともそうですけど、やり残したこと、やれていなかったことにできる限り挑戦していきたいと思うし、20年続けたやつらにしか見られない景色に向かって、それを最大限に素晴らしいものにする努力をしていきたいんですよね。

先行リリースした「風乃時代」の歌詞にある、〈勝ち続けたわけじゃないけど、立ち続けているわけがある〉っていう、その「わけ」をみんなと分かち合えるステージを作り上げていきたいと思っています。

●湘南乃風(しょうなんのかぜ)
RED RICE、若旦那、SHOCK EYE、HAN-KUNの4名からなる日本のレゲエグループ。2001年結成。2003年にメジャーデビューを果たし、来年にはメジャーデビュー20周年を迎える。
〇新EP『2022 ~Time to Shine~』を7月20日(水)にCD・デジタル配信でリリース。その他最新情報は、公式サイトや公式SNSでチェック。
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